第五十三話:ジオルドの暴走【1】
「閣下、今日は雲一つない晴天でようございました。」
「えぇ、青空の下で頂く食事も格別ですね。」
アルクエイドとアシュリー(変装中)は一緒に国立自然公園に出掛けており、お供にはマリアンヌ等の侍女や執事や騎士等の従者が護衛兼御世話をしていた。今は原っぱにて御弁当を食べていた。アルクエイドとアシュリーの周りを従者たちが四六時中、ガードしており外から見たら2人の姿は見えない状態になっていた
「閣下、こうして御一緒に国立自然公園にお出掛けしたのは久し振りですわね。」
「あの時は邪魔が入って折角のお出掛けが台無しになってしまいましたからね。」
「私は別にそのつもりで申したわけでは・・・・」
「いいえいいえ、アシュリー嬢が悪いわけではありませんよ。それに今はこうして一緒に食事ができるようになったのです。今を楽しみましょう♪」
「はい♪」
アルクエイドとアシュリーが仲良くデートをする一方でサンドラ王国使節団側がというとジオルドが勝手にゴルテア侯爵邸に向かった事がサルドバの耳に入り、すぐさまジオルドに説教をした
「殿下、一体何を考えているのですか!よりによってゴルテア侯爵家に行くなんて!」
「・・・・行って何が悪い、私はアシュリー嬢に会いに来ただけなのに・・・・」
「悪うございます!貴方はご自分の御役目を忘れたのですか!我が国とガルグマク王国の同盟締結に来たのですよ!陛下は貴方に手柄を立てさせるために多くの反対の声を押し切って大使に任命したのです!それを貴方はぶち壊してしまったのです!陛下に何と言って頭を下げるつもりなのですか!」
「そ、そんなもの謝れば許してくれるはずだ。父上は私のしてきた事を庇ってくれたんだから此度も・・・・」
「はあ~。まだそのような甘きお考えでいるのですか。もうチャンスはないのですよ。」
「チャンスがない・・・・どういう事だ!」
サルドバは此度の使節団大使にジオルドを任命した経緯を説明した。ジオルドの国での評判は最悪であり国王の息子である事を鼻にかけ、我儘し放題であった。ジオルドの父である国王は若いからという理由で今まで甘やかしてしまったが此度ばかりは庇いきれないほど家臣・国民たちの不平と不満が爆発しそうになっているのだという。そこで国王はジオルドの手柄を立てさせるためにガルグマク王国との同盟締結の大使としてジオルドを任命したのである。ガルグマク王国との間に同盟が締結すればジオルドの立場も安泰になるという親心から多くの反対の声を無視して強行したのであった。もし失敗したら確実に王籍から除名、王位継承権剥奪、勘当になるとサルドバはありのままをジオルドに伝えたのである
「ち、父上が・・・・何故黙っていたんだ!そうと知っていたら・・・・」
「陛下に固く口止めをされたのです。殿下に大使としての自覚を持ってほしかったという親心でしょう。まあ、殿下の御振舞によって全ては無駄に終わりましたが・・・・」
「だったらお前が直接言えば良かったじゃないか!」
「仮にお伝えして貴方様は大使として仕事を全うできましたか?」
「そ、それは・・・・」
「最早、同盟締結は露と消えました。我等は国に帰らざるを得なくなりました。」
「いやまだ間に合う!私が直々にガルグマク王に対面し同盟締結を申し込むんだ!」
「無駄ですよ。ガルグマク王はこう仰いました。人柱を立ててまで同盟を結ぶ気はないと。」
ジオルドはクリフ・ゴルテア侯爵が言ってきた事を思い出していた。あの時は何が何だか分からずにいたがサルドバの説明でようやく自分の置かれている立場を理解したのである。それと同時に「もっと早く言ってくれても良かったんじゃないか」と誰かを責めたい気持ちも同時にあった
「もう我等の役目は終わったのです、例の御令嬢の事もお忘れください。そもそもその御令嬢が婚約者がいるかどうかも分からずに貴方は・・・・」
「・・・・そうだ、奴のせいだ(小声)」
「はい?」
「奴だ!アシュリー嬢の婚約者だと名乗る男のせいだ!あいつがもっと早くに説明していればこんな事にならなかったんだ!」
自分の事を棚に上げてアルクエイドに責任転嫁するジオルドにサルドバは呆れて物が言えなかった。ジオルドは立ち上がるとサルドバは「御止めせよ、実力行使に出ても構わん」と命じた。他の者たちもこれ以上、騒ぎが大きくなる前にジオルドを必死で引き留めた
「離せ!離さんか!」
「申し訳ございません。」
「何卒、お許しのほどを。」
「御免、ふん!(腹パン)」
「ぐふ!」
ジオルドを気絶させた後、サルドバは一室にジオルドを幽閉する事にした。これ以上、騒ぎを大きくして両国が戦争に発展する事を抑えつけたのである
「これ以上、恥の上塗りは御免だ。おい、一室にお連れせよ。」
「ははっ!」
気絶したジオルドを見送った後、サルドバは一筆認めた。手紙の内容はガルグマク王国との同盟締結が失敗に終わった事、理由はジオルドがガルグマク王国に仕える貴族の令嬢(婚約者付き)に懸想をした事によってガルグマク王国国王から同盟締結が水泡に期した事を報告するのであった
「誰か。」
「ははっ、何で御座いましょう。」
「この手紙をすぐに母国に届けよ。」
「ははっ!」
お供の者に手紙を託した後、サルドバは帰る準備を進める一方でジオルドを連れた側近2人は一室に運ぼうとした瞬間・・・・
「ぐふ!」
「があ!」
「・・・・ふぅ、手間取らせおって。」
ジオルドは気絶した振りをしながら機会を伺い、仕込みのナイフを手に取り、2人の脇腹を刺したのである。側近たちは脇腹を抑えつつ、「うう、何故。」とジオルドを睨み付けた
「決まっている、国に帰っても王子として活動が出来なくなる。そうなる前にせめて奴だけは!」
ジオルドは仕込みのナイフを締まった後、そのまま逃走したのである。側近たちは何とか声を振り絞って助けを呼ぶと、他のお供が気付きジオルドが逃亡した事を知り、すぐさまサルドバに報告した
「何!ジオルド殿下が逃亡しただと!」
「ははっ!側近2名を仕込みナイフで刺し、そのまま逃亡したとの事にございます!」
「血迷われたか!追え、きっとロザリオ侯爵邸に向かったに違いない!」
「ははっ!」
ジオルドはというとアシュリーの婚約者であるアルクエイドに逆恨みという名のもとに復讐を敢行するのであった




