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第五十二話:避難生活

「おはようございます、閣下。」


「おはよう、アシュリー嬢。」


ロザリオ侯爵邸でアルクエイドとアシュリーは共に朝食を取る事となった。ロザリオ侯爵家とゴルテア侯爵家との間で決まり事【サンドラ王国使節団が国を出るまでアシュリーの身柄をロザリオ侯爵邸で預かる】を設けられた。勿論、国王グレゴリーにもこの事は報告しており、了承も得ている。王妃レティーシアからは「結婚前に羽目を外しては駄目よ(笑)」と茶化され、一緒にいたグラン王太子とレミリア公爵令嬢が苦笑いを浮かべながら「まあ、頑張って(ください)」と激励を送られたのである。まあ、そんなこんなで1週間が経った


「屋敷の生活には慣れましたか?」


「はい、おかげ様で。」


「おはようございます、旦那様、アシュリー様。」


「「おはよう(ございます)、マリアンヌ嬢。」」


マリアンヌ等の侍女たちが朝食を運び、アルクエイドとアシュリーの下へ続々と置かれた。今日はメニューは焼き立てのトースト、目玉焼き、ウインナー、鳥のささみ入りのサラダ 野菜スープ、蜂蜜入りヨーグルトである


「では頂きましょうか。」


「はい♪」


アルクエイドとアシュリーはまずはサラダから食した。アルクエイドはサラダに前世の知識で作った梅のドレッシングをかけた。アシュリーもアルクエイドを真似て梅のドレッシングをかけて食べていた。梅のさっぱりとした酸味が食欲が注いだ


「閣下、この梅のドレッシングって本当に美味しいです。」


「えぇ、梅のさっぱりとした酸味がサラダに合うので私だけではなく従者たちも気に入っています。」


「私もです、これほど美味しいものは初めてですわ♪」


2人はサラダを食べ終わった後、焼き立てのトーストにジャムやバターを塗り、その風味を味わいつつ他の料理にも手をつけた。その料理も徐々に減り、蜂蜜入りのヨーグルトを食べ終わった途端に朝食が終わったのである


「「御馳走様でした。」」


料理を食べ終わった後は休憩を取った後に一緒にお出掛けの準備をした。今日は国立自然公園にてピクニックである。アシュリーの方はというと事情が事情なだけに変装をしながらお出掛けせざるを得なかったのである


「アシュリー嬢、なかなか似合っていますよ。」


「そ、そうですか。何だか別人みたいです。」


アシュリーはというと執事服に茶色の短髪(カツラ)、伊達眼鏡を装着した、いわゆる男装女子に変身した。勿論、ロザリオ侯爵邸滞在中はアルト・ロイドという偽名で活動するのである


「申し訳ない、アシュリー嬢。本来であったら令嬢の服装で外へお出掛けをさせたかったのですが例の第3王子がアシュリー嬢を狙っている可能性がありますので・・・・」


「お気になさらずに。私は閣下とお出掛けできれば満足ですわ。」


「ありがとう。」


「では参りましょう・・・・旦那様♪」


「うむ、では参ろうか、アルト。」


一方、サンドラ王国使節団の方はというとサルドバは外務大臣のホルス・フォード侯爵の下へアポもなしに突撃し、半ば無理矢理な形で話し合いが行われた


「ホルス侯爵殿、ガルグマク王との会談との会談、御協力願いたい。」


「ソルトレイク公爵閣下、陛下は貴殿等と話し合うつもりはないとの事にございます。」


「そこを何とか!」


「ソルトレイク公爵閣下、パーティーでの第3王子の御振る舞い、陛下は大変御嘆きにございます。」


サルドバは心底、後悔していた。副使兼目付役としてジオルドを補佐していたが、まさかパーティーであのような振る舞いをするとは思っておらず、非常に焦っていたのである


「ソルトレイク公爵閣下、もう話は終わりました、お帰り下さい。」


「ホルス侯爵殿!」


「あ、そうだ。陛下より伝言がございました。陛下曰く、人柱を立ててまで同盟を結ぶつもりはないとの事にございます。」


「な、何・・・・」


「では失礼。」


「ま、待ってくれ!」


ホルスはサルドバの呼び掛けを無視してその場を退出した。サルドバはこれからどうすべきか思案を重ねる一方で問題を引き起こしたジオルドはというとサルドバがいない事をいいことに僅かな側近だけを連れて勝手に宿舎を抜け出し、アシュリーの実家であるゴルテア侯爵家に乗り込んでいた。クリフはというと本当に来たと内心、思いつつ対応をした


「これはジオルド殿下、今日は何用で参られましたので?」


「うむ、貴公の娘であるアシュリー嬢に会いたい。」


「・・・・来て早々申し訳ございませんが娘は領地におります。」


アシュリーが領地にいると聞いたジオルドは耳を疑った。ジオルドはすぐさま「領地にいるとはどういう事なのか」と尋ねるとクリフは淡々と説明をした


「はい、ジオルド殿下が退出された後、周囲のお歴々から腫れ物に触るような扱いをされ、娘はショックのあまり寝込んでしまったのです。それで密かに領地へ帰したのです。勿論、陛下の御了承を得ております。」


「な、んだと。」


アシュリーが領地へ帰ったという話は勿論、アルクエイドが提案した真っ赤な嘘でありジオルド一行が尋ねてきたらそう伝えるようクリフに伝言を残したのである。勿論、国王グレゴリーにも事前に伝えている。何も知らないジオルドはというと、アシュリーが本当に領地へ帰ったと聞いて愕然としたのである


「な、何故、そのような真似をしたんだ!」


「・・・・無礼を承知で申し上げますが、その原因を作ったのは他ならぬジオルド殿下ではありませんか?」


クリフの口からアシュリーが領地へ帰った原因を作ったのはジオルドのせいだと真っ向から言われたジオルドは激高した


「アシュリー嬢の父親だからって言って良い事と悪い事があるぞ!」


「殿下、どうか落ち着いて!」


「冷静に、冷静に!」


側近たちはジオルドを宥めていると、クリフは意にも返さずに「公の場で娘にプロポーズをする御方がする事ではありませんな」とジオルドを煽った。流石の側近たちもクリフの無礼な態度を注意し始めた


「ゴルテア侯爵殿、いくら何でも言いすぎでは!」


「そうだぞ!」


「言い過ぎ?まだまだ言い足りないくらいですぞ。貴殿ら側近はジオルド殿下の追従者か何かか?」


「「うっ。」」


ハッキリとイエスマンだと指摘するクリフに対して、側近たちは何も言えずにいるとジオルドが「すぐにアシュリー嬢を連れ戻せ!」と命令してきた


「何故、連れ戻さねばならないのですか?それに私はガルグマク王国に仕える貴族です。他国の臣下になった覚えはございません。」


正論中の正論にジオルドは話題を変えてクリフを説得しようと試みた


「だ、だったらアシュリー嬢は私が引き取ろう。我が国とガルグマク王国はいずれ同盟を結ぶのだ。そうすれば腫れ物扱いされているアシュリー嬢を救う事ができる!」


「・・・・それは無理にございます。」


クリフの口から無理という言葉にジオルドは「な、何故だ」と尋ねた


「畏れ多くも陛下が仰ったのです。人柱を立ててまで貴国と同盟を結ぶつもりはないと・・・・」


同盟を結ばないという発言にジオルドは立ち上がり、「な、何故だ!」と口調強めにクリフを問い詰めた


「何故って・・・・公の場で、しかも同盟を結んでいない国のパーティーで突飛な振る舞いをされたジオルド殿下を快く思っている者は誰一人としておられぬからです。陛下もジオルド殿下の御振る舞いに大層、御嘆きになられました。」


「なっ、何!」


「何を驚かれるのですか?使節団の大使という重要な役目を放り出してまで御自分の思うままに振る舞われた結果なのですから。」


ジオルドは自分の行動がガルクマク王国に快く思われていない事に愕然とした。側にいた側近たちの表情は青褪め冷や汗をかいており最早、手遅れだと感じ取ったのである


「ジオルド殿下、この国で貴方の味方をする者は一人としておりません、それだけはご理解頂きたい。」


クリフから死刑宣告ともいえる発言にジオルドは膝から崩れ落ちるように倒れ込んだ。側近たちは何とかジオルドを支えた後、逃げるようにゴルテア侯爵邸を離れた


「(ロザリオ侯爵殿、言いたき事を全て申す事ができ、スカッとしたぞ。)」


この場にいないアルクエイドに感謝するのであった

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