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第五十一話:大失態

「(ちょっ、なんでこっちに来るのよ!)」


アルクエイドはアシュリーと共に待っていると突然、我が国のお歴々を押し退けて、こちらへ向かってきたのである


「か、閣下。」


アシュリーもジオルド第3王子がこちらへ向かってくる事に気付いたらしくどうすれば良いか迷っていた。アルクエイドはいつでも対応できるように身構えているとジオルドがアシュリーの前に止まって「そなたの名は何という?」と尋ねてきた


「え、え?」


「名前だ。」


「ジオルド殿下。」


アルクエイドがアシュリーを庇うように、代わりに対応した


「畏れながらジオルド殿下、アシュリー嬢が困惑しております。」


邪魔された事にジオルドはカチンときたのか不機嫌そうに尋ねた


「ん、貴様は誰だ?」


「ははっ、私はロザリオ侯爵家当主のアルクエイド・ロザリオと申します。この御方はゴルテア侯爵家令嬢のアシュリー・ゴルテア嬢にございます。」


アルクエイドが紹介するとジオルドはアシュリーの方へ目線を向け「アシュリー・・・・良い名だ。」と褒めた


「あ、有り難き幸せにございます。」


「気に入った!アシュリー・ゴルテア侯爵令嬢。今すぐ私の妃になれ!」


「「え!?」」






そして現在に至る。アルクエイドとアシュリーは突然のプロポーズに驚き、目が点になった。ジオルドは構わずアシュリーにアプローチを続けた


「あ、あの・・・・」


「そなたを一目見た時から私は惚れたんだ!」


「いや、私は・・・・」


「畏れながら、ジオルド殿下。」


我に返ったアルクエイドはアシュリーの庇うように遮り、真っ正面からジオルドと対応した。当然、邪魔されたジオルドはアルクエイドに怒鳴り付けた


「邪魔をするな、無礼だぞ!」


「御無礼を承知で申し上げねばなりません。アシュリー嬢は私の婚約者にございますれば、御戯れはその辺で。」


ジオルドはすかさず「嘘を言うとためにならんぞ!」と怒鳴り付けたが、アルクエイドは冷静に「アシュリー嬢との婚約は畏れ多くも陛下も御了承を得ております」と答えた。ジオルドはアシュリーに「そうなのか」と尋ねるとアシュリーは「は、はい。閣下の仰る通りにございます」と答えた


「な、何だと?」


「説明が遅れてしまい、まことに申し訳ございません。」


アルクエイドは相手が王族という事で謝罪したが当のジオルドは茫然自失の状態に陥っており、そこへ副使のサルドバが「まことに申し訳ない」と深々と謝罪した後、ジオルドに対して「殿下、参りましょう」とこの場から離れようした。そこへ国王グレゴリーと王妃レティーシアが険しい表情を浮かべながらジオルドの下へ訪れた


「・・・・如何されたのだ、ジオルド殿。」


「あぁ、ガルグマク王。大変申し訳ありませんが殿下は正体をなくすほど酔うております故、退出させていただきます。」


「・・・・そうか、気をつけられよ。」


「は、はい、ではこれにて失礼致します。」


副使のサルドバはジオルドを連れてパーティーを後にした。グレゴリーとレティーシアはアルクエイドとアシュリーに先程の遣り取りについて説明を求められた。アルクエイドとアシュリーはありのままを説明し「申し訳ございません」と騒ぎを起こした事を謝罪した。グレゴリーはというと「そなたらに罪はない」と2人を責めず、むしろ冷静に対応した事を褒め称えたのである。アルクエイドとアシュリーは「有り難き幸せにございます!」と感謝を述べた。グレゴリーはというと同盟を結んでもいないのに勝手気ままに振る舞うジオルドの言動に嫌悪感を抱いた


「うむ、それにしても・・・・あれがサンドラ王国の大使のする事か。」


「そうですわね。寧ろ同盟を結ぶ前に知れて良うございましたわ。」


グレゴリーだけではなくレティーシアも大使を務めるジオルドに心底、呆れ返っていた。仮にも国を代表する立場の人間が公の場で他国の、しかも婚約者のいる令嬢にプロポーズするとは思いもよらなかったのである。他のお歴々もジオルドの言動に対してあまり良い印象を受けていなかった


「大使のする事とは思えないほどの突飛な行動だ。」


「彼の御方を大使に任命した王の器が知れる。」


「同盟を結んだら間違いなく共倒れになる。」


「彼の国では婚約者のいる御相手にプロポーズするのが慣わしなのかしら?」


「砂漠の国のお歴々の底が知れますわね。」


「同盟を結んでも居ないのに我が物顔に振る舞うなんてとんだ恥知らずだわ!」


ジオルドの言動に嫌悪感を抱いたお歴々の口々に「同盟反対」が会場を埋め尽くしており、グレゴリーは「静まれ!」と一喝し会場は一気に静かになった


「取り敢えずパーティーは開始する。今日は存分に楽しむが良い。」


「「「「「は、ははっ!」」」」」


アルクエイドを始め、他のお歴々も困惑しつつもパーティーが再開した。アルクエイドはアシュリーと共にゴルテア侯爵一家と合流し一旦、別の部屋へ避難するとクリフとエリナとレオンはアシュリーを気にかけた


「「「アシュリー、大丈夫だったか(大丈夫!)?」」」


「は、はい。」


「いやあ、まさかこんな事になるとは夢にも思わなかった。」


「ええ、私も驚いた。まさか第3王子殿下があのような事をなさるなんて・・・・」


「それにしても同盟を結びに来たのか、嫁を探しに来たのか、何を考えているのか分かりませんね。」


3人はジオルドの言動に心底、うんざりしていたようで向こうが望んでも辞退する事を考えるほどである。するとアルクエイドはゴルテア侯爵一家にある提案をした


「突然で申し訳ありませんが、アシュリー嬢を我が家にお預かりしても宜しいでしょうか?」


「「「「はい?」」」」


アルクエイドの提案にゴルテア侯爵一家は耳を疑った。我に返り真っ先に尋ねたのはクリフとエリナである


「ロザリオ侯爵殿、何故そのような事を?」


「そ、そうですわ、いきなりそのような事を!」


「一言でいえばアシュリー嬢を守るためですかね。」


「わ、私を、何故?」


自分を守るというアルクエイドの発言にアシュリーは疑問系で返すとアルクエイドは理由を語った


「はい、あの第3王子が大人しく引き下がるとは思えないのですよ。公の場でアシュリー嬢にプロポーズをしたのです。しかも大使という重要な立場でありながら同盟を締結すべき国に対して国辱ものの事を仕出かしました。それでも第3王子は必ずやアシュリー嬢を狙うと私の勘がそう告げています。」


「か、勘?」


「えぇ、自慢する事ではありませんが私の勘はよく当たるのですよ、ゴルテア侯爵閣下。」


アルクエイドの提案にアシュリー以外のゴルテア侯爵一家は婚約者とはいえ娘(妹)を預けて良いのかどうか迷っていたがアシュリーはというと・・・・


「私・・・・閣下の仰る提案に従います。」


「「「アシュリー!」」」


「閣下の仰る通り、もしも第3王子殿下が私を狙う可能性がないわけがありません。大使という大事なお役目を放り出してまで御自身の願いに忠実でございましたから。」


アシュリーの正論に3人はぐうの音も出なかった。あの第3王子ならやりかねないと薄々感じていたのである。クリフはアルクエイドに「いつまで娘をお預かりに」と尋ねた


「「貴方(父上)!」」


「この際、ロザリオ侯爵殿にお任せする他はない。お前たちも第3王子殿下の蛮行をその目で見てきただろう。」


エリナもレオンもジオルドの所業を思い出したのかこれ以上の反論が出ず渋々、賛成に回った


「それで娘をいつまでお預かりに?」


「・・・・サンドラ王国御一行が国を出るまでです。」


一方、サンドラ王国一行はというと宿舎に戻った後、公の場で国辱ものの大失態を犯したジオルドはサルドバから大目玉を食らっていた


「何という事をしたのですか(怒)」


「いや、あの令嬢を見ているとどうしても声をかけたかったんだ。」


「何もあの場で言わなくても良かったでしょう!それに同盟を締結していない国に対して大変無礼ではありませんか!下手をすれば戦争になりかねないほどの殿下はやからしたのですぞ!我が国の立場をお考えくださいませ!」


「し、しかしだな。」


「しかしも案山子もございます!あぁ、我が国から同盟を持ち掛けたというのに、この有り様では陛下に何と御詫びすれば・・・・」


サルドバは頭を抱えている一方でジオルドはひたすらアシュリーの事で頭が一杯であった。今のジオルドのどすぐろい欲望が心を支配したのであった


「(あの令嬢をどうしても国へ連れて帰りたい!例え婚約者がいたとしても!)」


そんなサンドラ王国使節団の様子を屋根裏で伺っていた隠密はすぐに国王グレゴリーに報告すると・・・・


「人柱を立ててまで同盟する価値がないな。」


グレゴリーの腹は完全に決まり、使節団からの度重なる謝罪と会談の催促を無視し続けたのであった

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