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第四十六話:愚王子の暴走【2】

北の牢獄に幽閉されていたグドンは自分の周囲の人間が解任された事を知り、愕然としていた


「ち、父上は僕よりも成金貴族共を優先するのか!成金貴族共の言いなりに成り下がったのか!」


グドンは成金貴族たちの言いなりになった父を殊更に罵り始めた。見張りについていた看守はグドンの言動を逐一報告した。知らせを聞いたグレゴリーはこれまで通り、無期限の幽閉を継続する事にした


「・・・・馬鹿者め。」


グレゴリーはいつか息子(グドン・ガルグマク)が改心してくれる事を待ち望んでいたが、これ以上の期間は無駄だと判断したのである


「(夜会に初参加させる前で良かったわい。)」


今年17歳になったグドンは夜会に初参加させる予定だったが頑固で独りよがりな考えを持つグドンを夜会に参加すれば間違いなく問題を起こすと判断し幽閉する事に決めたのである。流石に命までは取ろうとまでは考えておらず、中央から離れた辺境の地に幽閉するだけで済ませようとした


「先が思いやられる。」


一方、グドン幽閉の報を当然のようにアルクエイドの耳にも届いていた。知らせを聞いたアルクエイドとジュードはグドンの頑迷さに呆れを通り越して清々しく感じた


「あの御方は成金貴族を目の敵にしてきたからな。特に私に対して。」


「教育係、守役、乳母、騎士、側近を全て解任、そして婚約者を実家に返したとなればグドン王子は丸裸も同然となりましたな。」


「それはそうだろう。あのような独りよがりが考えに育て上げた環境が悪いのだ。寧ろ遅すぎな気もするがな。」


「旦那様、誰が聞いているか分かりませんよ。」


「ただの愚痴だ。」


「それでグドン王子は今後、どうなるのでしょうか?」


「まあ、流石に命までは取りはしないだろう。最低、辺境の地に追放あたりか。」


その頃、北の牢獄に幽閉されていたグドンはというと叫び続けていから2週間が経ち、飽きたのかベッドでぐったりしていた。もしこのまま幽閉だったらどうしようと考えているとふとある物に目がついた


「ん、なんだこの隙間は?」


グドンが隙間に触れるとボロボロと煉瓦が崩れそうになった。グドンは何とか受け止め看守にばれずに済み、ホッとした。グドンは慎重に煉瓦を崩しながら剥がしていくと人1人が入れるくらいの隙間が出来上がった。試しに入ってみるとそこは外であり、グドンの目が輝いた


「(よし、これでいつでも外に出れるぞ。)」


グドンは隙間を何とか隠し看守が目を離した隙に脱獄しようと計画していた。そして夜更けになり、看守も睡魔に襲われ、そのまま寝息を立てていた


「よし、脱出だ。」


グドンは隙間から脱出し王宮から逃亡、向かった先は自分の守役と乳母の屋敷であった。グドンは何十回も遊びに来たことがあり、屋敷の構造を知り尽くしておりどうやって中に入るかも造作はなかった






「お可哀想に(泣)」


「我等がしっかりしていれば・・・・」


屋敷の主、カシューナイツ伯爵家当主のビター・カシューナイツ【年齢45歳、身長175㎝、口髭、色白の肌、銀色の短髪、碧眼、小太り、彫りの深い柔和な顔立ち、保守的で成金が大嫌い、グドンの元守役】とキャリー・カシューナイツ【年齢44歳、身長163㎝、色白の肌、細身、美乳、碧眼、銀髪ロング、彫りの深い端整だがキツメの顔立ち、保守的で成金が大嫌い、グドンの元乳母】は北の牢獄に幽閉されているグドンを憐れんだ。当の本人たちも国王からグドンを独りよがりな人間に育て上げたという罪で守役と乳母を解任させられ、周囲の貴族たちからもあからさまに馬鹿にされ、孤立状態になっており、今は夜遅くまで内職に務めていた。するとコンコンと扉からノック音がした


「ん、入れ。」


ビターが入室の許可を出すと、入室した人物にギョッとした


「「で、殿下!」」


「ビター、しばらく匿ってくれ。」


入ってきたのは北の牢獄に幽閉されていたグドンがどうしてここに現れたのかが分からないが取り敢えず話を聞くことにした


「殿下、何故ここに、北の牢獄に幽閉されていたはず。」


「抜け出してきた。」


「な、何故そのような事を!もしばれれば殿下の御立場が!」


「大人しくしていたところで待っているのは追放処分だ。」


グドンも自分の置かれる立場を理解しつつも黙っていられずにいた。そんなグドンの身を案じるビターとキャリーもグドンが辺境の地に追放される事を何となく察しており、何も言えずにいた


「ビター、お前は僕の忠臣として働いてきた。そんなお前に僕の胸の内を打ち明けよう。」


グドンの並々ならぬ覚悟を秘めた表情にビターは生唾を呑み、「何でしょうか」と尋ねた


「僕は父上を隠居に追い込み、兄上を追放、そして新たに国王につく!」


グドンの大胆不敵な発言にビターとキャリーは唖然となった。グドンの行おうとしている事は完全な謀反であり、もし露見すれば間違いなく処刑である。流石のビターもキャリーも本気で諫めにきた


「殿下、それだけはなりませぬ!そのような事をすれば間違いなく殿下の御命が!」


「そうです!どうかお考え直しください!」


「もう決めたんだ、それにお前たちだって成金貴族共の台頭を快く想っていなかったではないか!」


グドンの言葉にビターとギャリーは言葉が詰まった。カシューナイツ伯爵家の現状は貧しく領地経営にも失敗し守役と乳母を解任された今は内職に励みつつ爪に火をともす生活を送っていた。夜会や御茶会等に出席する際は豪華な衣装を身に付け何とか対面を保っていた。そんな中で台頭してきた新興貴族【成金貴族】の発展ぶりに2人は嫉妬に狂いそうになるほど毛嫌いしていた。そのためグドンに成金たちの悪口雑言を並べ立てた事もあった。まさか自分達の悪口雑言がこんな形でなってしまった事に2人は愕然とした


「・・・・分かりました。」


「貴方!」


「ですが我等だけでは謀叛は起こせませぬ。同志を募り、頃合いを見て決起致します。」


「そうか!流石は僕の忠臣だ!」


「殿下、時が来るまで北の牢獄にて御待ちくだされ。後は我等が何とか致します。」


「うむ、期待しているぞ!」


「ささ、早うお戻りくだされ。」


「分かった、吉報を待っているぞ!」


グドンが屋敷を出るのを確認した2人は屋敷に戻ると早速、諍いが行われた


「貴方、まさか本気で謀反を起こすおつもりですか!」


「起こすわけがないだろう。今の殿下に味方する者は1人もいない。かといって出来ないと言っても殿下は聞く耳を持たないだろう。」


「それでどうするのです、これから。」


「決まっている、陛下に御報告申し上げる。」


ビターの口から報告すると聞いたキャリーは待ったをかけた


「御待ちください!」


「何だ、いきなり。」


「もし御報告申し上げれば私たちは罰せられます!」


「何をいうのだ!」


「お聞きください。もし陛下にこの事を報告すれば私たちは殿下をお止めしなかったばかりか、謀反に加担したのではないかと疑われます!」


「だったら尚更、報告せねばならぬではないか!」


「お聞きください。我が身可愛さに殿下を売ったとなれば必ずや謗りを受けるのは必定です!ここはあえてどちらにも加担せずに素知らぬふりを致しましょう!」


キャリーの提案にビターに迷いを見せ始めた。確かに我が身可愛さに殿下を売ったとなれば国王からは謀反に加担したと疑われ、周囲からの非難は免れないのは必定。ビターは結局はこの出来事を墓場まで持っていく事に決めたのである


「分かった、我等だけの秘密としよう。」


「流石は旦那様!」


この判断がカシューナイツ伯爵家の運命を狂わせる事になるとは2人は知らずにいたのであった

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