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第四十一話:マリアンヌの縁談

「突然、お尋ねして申し訳ございません、ロザリオ侯爵閣下。」


「どうされのですか?エルマンド子爵殿?」


ある日の事、ロザリオ侯爵邸にエルマンド子爵家当主のヒルズ・エルマンドが訪れた。アルクエイドはヒルズを客間に通した後、ヒルズが用件を伝えた


「はい、実は閣下に折り入ってお頼みしたい事がございます。」


「何でしょう?」


「はい、我が領地は辺境にて近くに店がなく何かと不便にございます。それで閣下の御力を持って商団を派遣してほしいのです。」


「商団を?」


ヒルズ曰く、エルマンド子爵家領地は辺境に離れた土地であり、行商人が領地で売買していたが最近ではその行商人もめっきり来なくなり、領民たちが難儀をしているのだという


「用件は分かりました。商団を結成し派遣する事を御約束致しましょう。ただし派遣する際の負担は子爵殿が請け負う事になりますがよろしいか?」


「はい、元よりその覚悟です。」


「うむ、結構。」


「失礼致します。」


話し合いが終わったのと同時にマリアンヌ等の侍女たちが菓子と紅茶の入ったティーポットを運び、テーブルに続々と置かれた。ティーカップに紅茶を注いだ後、マリアンヌ等の侍女たちは「失礼しました」と挨拶を述べ、退出した


「マリアンヌ嬢も侍女姿が様になりましたな。」


「えぇ、彼女自身も元婚約者と別れて以来、生き生きしていますよ。」


「・・・・そうですか。」


「因みにマリアンヌ嬢を妻に迎えたいという御令息が跡を絶ちませぬ。」


アルクエイドがカマをかけるようにヒルズに言うと、ヒルズの手がピクッと震えた。反応を見たアルクエイドはこれは脈ありだなと悟った


「そ、そうですか。流石はマリアンヌ嬢。」


「えぇ、私としても元婚約者とその家族のいる家にはなるべく嫁がせたくないのが私の本音ですね。彼女の事を本当に大事にしてくれる殿方がいれば話は別なのですけれどね。」


アルクエイドがそう言いながらヒルズの方を注視した。ヒルズは何か言いたげな様子にアルクエイドは「如何なされた」と尋ねた


「は、はあ、何でしょうか?」


「先程から、妙にそわそわとしておられたから、如何されたのかと。」


「あ、ああ、心配には及びません。」


そう言うと出された紅茶を一口飲んだ。まだ熱かったのか舌を火傷したようだ


「大丈夫ですか?冷たい水を御持ち致しましょう、誰かおるか!」


アルクエイドが呼ぶとそこへマリアンヌが現れた。ヒルズはマリアンヌにみっともない姿を見られたくないのか、そっぽを向いた


「旦那様、お呼びにございますか?」


「冷水を持ってきてくれ、私とエルマンド子爵の分だ。」


「畏まりました。」


マリアンヌが客間を去るとヒルズは「ありがとうございます」と礼を述べた。それから数分後、冷水の入ったコップを持ってきたマリアンヌはテーブルに置いた後、「ではごゆっくり」とその場を立ち去った。ヒルズはマリアンヌの姿が見えなくなった途端、冷水を口に含んだ。舌のヒリヒリしたを無くそうと口の中を動かした。それを何回も繰り返し、ようやく舌の火傷が無くなったのか安心した表情を浮かべた後、アルクエイドに謝罪した


「閣下、御迷惑をおかけいたしました。」


「舌の方は?」


「はい、おかげ様にて。」


「それは良かった。」


「長居をしてしまいました。私はこれにてお暇致します。」


「左様か、だれかお見送りを致せ!」


ヒルズが去ってから数日後、クリフ・ゴルテア侯爵が訪れた。何事だと思い、クリフを客間へ通すとアルクエイドは用件を尋ねた


「これはゴルテア侯爵閣下、今日は何用で参られましたか?」


「うむ、マリアンヌ嬢の事なのだが。」


クリフの口からマリアンヌの名が出た途端、アルクエイドは「(ああ、縁談の話か)」と勘づいたのである


「不躾ながらお尋ね致しますが、もしや縁談にございますか?」


「おお、流石はロザリオ侯爵殿、鋭いな。」


「それで御相手は?(やはりか)」


「うむ、相手はシルフォード男爵家当主のソルト・シルフォード殿だ。」


シルフォード男爵家の領地はそれほど面積は広くはないが海があり漁業や海運業による交易によって利益をあげており、特にシルフォード男爵家当主のソルト・シルフォード【年齢25歳、身長180㎝、色白の肌、細身、ベージュ色の短髪、碧眼、彫りの深い端正な顔立ち】は21歳で若くして当主を継ぎ、海運業と共に特産品の奨励や新田開発を行った結果、ガルグマク王国有数の資産家であるロザリオ侯爵家には負けるが相当な資産を持つ【成金貴族】である


「私と同じ【成金貴族】ですか。」


「貴殿には負けるがそれなりに資産を有しているのは有名だ。」


「それで先方がマリアンヌ嬢を望んで申し込んできたと?」


「そういう事だ。」


「畏れながら、その御方の人物として信用できるのでしょうか?」


アルクエイドが気になったのはやはり性格である。ロザリオ侯爵家ほどではないがそれなりの資産はあるが問題はマリアンヌを大事にするかどうかである


「(何だか私の中でモヤモヤ感が半端ないんですけど。)」


アルクエイドは内心、そう思っているとクリフは困ったように頭を掻きながら「私も詳しくは知らんのだ。」と答えた。それを聞いたアルクエイドは思わず、ずっこけた。相手方の事をよく調べずに縁談を持ちかけたのかとアルクエイドは内心、呆れていた


「・・・・閣下、相手の事を知らずに縁談を持ちかけたのですか(ちゃんと調べときなさいよ!)」


アルクエイドは睨みつけるかのようにじとっとした表情を浮かべると、クリフは「仕方がなかったんだ、先方がウチを通して懇願してきたんだ、私はそれを伝えてに来ただけだ」と困ったように再び頭を掻いていた。アルクエイドは「付け届けを貰ったな」と内心で思いつつ直言をする事にした


「失礼を承知で申し上げますが簡単に安請け合いするものじゃありませんよ。せっかくマリアンヌ嬢は元エルマンド子爵前夫妻と元令息から解放されたというのにこれでは元の木阿弥です。それに先方が閣下を通して私に縁談を持ち掛けるなんて明らかに断りにくいように仕向けているではありませんか。」


アルクエイドがそう言うとクリフは罰が悪そうにしていた。クリフからしたら完全なとばっちりを食らう羽目になったようなものである


「先方にはこう伝えてください。縁談を持ち掛けるのであればマリアンヌ嬢の主である私に直接出向くよう申しつけてくださいませ。」


「わ、分かった。」


クリフはロザリオ侯爵邸を出た後、ジュードにシルフォード男爵家について調べるよう命じた。するとジュードはふと考え事をしながら呟いた


「シルフォード男爵家・・・・にございますか。」


「ん、如何した?」


「シルフォード男爵家の商人が旦那様と懇意にしている商業ギルドに出入りしてしておりましたので・・・・」


それを聞いたアルクエイドは悪い笑みを浮かべた。ジュードは「また何か企んでおりますな」と言うとアルクエイドは「まあ、そんな事はいい。では調べてきてくれ」と命じた


「(もし向こうが何かしら仕掛けて来たら出入り禁止にしようかしら、ふふふ。)」






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