第三十九話:告白
ガルグマク王国王都に衝撃が走った。絶縁状態であったロザリオ侯爵家とナミリヤ伯爵家との間で和解が成立した事。更にゴルテア侯爵令息のレオン・ゴルテアとナミリヤ伯爵家令嬢のリネット・ナミリヤの交際がロザリオ侯爵家によって発表されたである。社交界では絶縁していた両家が突然、和解した事で様々な憶測が広がった
「聞きましたか、両家が和解した事を!」
「ええ、私も予想外でした!」
「意外なのはゴルテア侯爵家のレオン殿がナミリヤ伯爵家の令嬢とそのような仲になっていたとは・・・・」
「確かに。」
一方、ロザリオ侯爵家と和解が成立したナミリヤ伯爵家はというと和解成立よりもレオンとリネットの交際が発覚した事に誰よりも驚いたのは他ならぬリースである。リースは驚きつつもリコールとリネットに噂の詳細を確かめた
「い、いつからゴルテア侯爵家の令息と交際を始めたのだ!」
「ろ、ロザリオ侯爵邸にて御対面した後に令息様から告白されて、そのままの流れで。」
「な、何!」
「父上、ゴルテア侯爵家と縁を結ぶのは良いと思います。ゴルテア侯爵家の御令嬢はロザリオ侯爵閣下の婚約者、ロザリオ侯爵家との繋がりが磐石となります。」
「う、う~ん、しかしだな。」
「父上、ナミリヤ伯爵家の当主が決めた事にございます。自己報告をした事は申し訳ないと思っておりますが、これでロザリオ、ゴルテア両家との縁が結ばれた事は我等にとって幸先がようございます。」
「う、うむ、そ、そうだな。」
リースは自分だけ除け者にされたような気分であったが結果的にロザリオ侯爵家と和解でき、おまけにゴルテア侯爵家と縁ができた事でこれ以上、文句の言いようがない事に渋々ではあるが了承せざるを得なかった
その頃、ゴルテア侯爵家ではレオンとリネットの婚約を成立させるためにアルクエイドとレオンがクリフとエリナを説得している最中であった
「父上、母上、どうかリネット嬢を妻に迎える事を御許しください。」
「侯爵閣下、御夫人、私からもどうかお願いいたします。」
「「う、うむ(う~ん)」」
側で聞いていたアシュリーはアルクエイドとレオンに助け船を出すようにクリフとエリナを説得に加わった
「お父様、お母様、もうこうなっては仕方がありません。閣下もこう仰っている以上、婚約を成立させましょう。」
「「そ、そうか(そう)」」
「アシュリー嬢の申される通りです。和解が成立した事で私が便宜を計り、ナミリヤ伯爵家に支援を送るよう手配をしています。お歴々の方々にもナミリヤ伯爵家と和解した事や今後とも懇ろなお付き合いをと念を押しましたから心配はご無用です。」
「ロザリオ侯爵殿がそう申されるなら・・・・」
「認めるしかありませんわね。」
「あ、ありがとうございます!父上、母上!」
それから数日が経ち、ゴルテア侯爵邸にナミリヤ伯爵家当主のリコール・ナリミヤ、前当主のリース・ナリミヤ、そしてレオンの婚約者予定のリネット・ナミリヤが訪れたのである
「本日は妹の婚約を認めていただき、感謝致します。」
「私の父親として娘の婚約にご賛同していただき感謝致します。」
そういうとリースとリコールが深々と頭を下げた
「御二方、どうか頭をお上げください。もう我等は親戚の間柄になる間柄なのですから。」
「そうですわ。息子にもようやく婚約者が出来た事に私共もホッとしているのです。」
「「あ、ありがとうございます。」」
2人は静かに頭を上げ、再度礼を述べた。それからは両家との間にレオンとリネットの婚約が成立したのである
「そういえばナミリヤ前伯爵はロザリオ侯爵殿に御会いになられたのですか?」
「はい、昨日改めて御礼とこれまでの事の謝罪を致しました。」
リースは昨日あった事を語り始めた。ロザリオ&ナミリヤ両家との和解が成立した後、リースはリコールと共にロザリオ侯爵邸に訪れた。客間にてアルクエイドに対面したリースはすぐに土下座した
「ロザリオ侯爵閣下、過去の御無礼申し訳ございません。そして今回の和解、そして娘の世話をしていただき感謝申し上げます!」
リコールは土下座する父親の姿に驚くのをよそにアルクエイドは土下座するリースの前にしゃがんだ
「・・・・痩せられましたな。」
「全ては自分自身が招いた事にございます。」
「・・・・貴殿とは何かと諍いがありましたが現にこうして話し合う事ができたのです。これからの未来のためにも共に繁栄していきましょう。」
アルクエイドの言葉にリースは肩を振るませ、ポツポツと涙を流した。そして感極まった声で「感謝致します」と礼を述べたのである。その事をゴルテア侯爵一家に伝えたのである
「ロザリオ侯爵殿がそう申されたのか。」
「はい、肩の荷が下りたような心地にございました。」
「アシュリーは良き御方を婚約者に迎えられて幸せね。」
「はい、私の婚約者ですから当然です♪」
「本当にロザリオ侯爵閣下には感謝しかありません。」
ゴルテア侯爵一家は改めてアルクエイドと縁を結べて良かったと心底、思った瞬間であった
「レオン様。」
「ん、ああ、リネット嬢!」
「レオン様は本当に私で良かったのですか?今はロザリオ侯爵家と和解致しましたがナミリヤ伯爵家はかつての威光がないに等しい状態でしたのに・・・・」
リネットの言う通り、ナミリヤ伯爵家はアルクエイドから絶縁状を叩きつけられて以降、家運が下落し貴族とは名ばかりの貧乏暮らしを強いられていた。他の貴族との交流や元々、結ばれていた婚約も解消され孤立無援となり、リネットはリンダという偽名を名乗って食堂で働いて家計を助けるほど没落寸前だったのである。傍から聞いていたリースとリコールもバツが悪そうな顔をしていた。そんな3人を見たレオンは何故か自分語りをし始めた
「私は・・・・ゴルテア侯爵家の令息しか取り柄がない男です。侯爵家の人間として父の命に従ってきました。婚約者も父に決められた相手と結婚する事になると思っていました。その現状に不満を抱いていないといえば正直、嘘になります。勿論、リネット嬢との事も反対されました。ロザリオ侯爵家との関係を悪化させたくないという家の方針もありましたがもし、ここで従えばもう自分はゴルテア侯爵家の歯車として一生を終えると思ったんです。他は仕方なしと諦めますが、これだけはリネット嬢と一緒になる事だけは譲れなかったのです。」
「レオン様・・・・」
「それが叶って今が幸せです!」
「レオン様。」
「ごほん。レオン、リネット嬢、水を差すようで悪いが我々がいる事を忘れないでくれ。」
2人だけの世界に入るレオンとリネットにクリフから注意を受けた。2人も周囲の視線に気付き、照れ臭そうに俯いていた
「リネット嬢、ウチの愚息をよろしく頼む。」
「末長く息子の事をよろしくね。」
「リネット嬢、兄の事をよろしくお願いいたします。」
ゴルテア一家(クリフ&エリナ&アシュリー)から結婚の許しを得たリネットは結婚の挨拶を述べた
「・・・・はい、不束者ですがよろしくお願いいたします。」
「ナミリヤ伯爵殿、これからもよろしくお願いいたします。」
クリフがリコールとリースに向けて挨拶すると、リコールもリースも挨拶をした
「こちらこそよろしくお願いいたします。」
「レオン殿は娘の事をよろしくお願いいたします。」
「はい、こちらこそよろしくお願いいたします。」
こうして両家は末長く結ばれるのであった




