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第三十八話:和解

「ようこそ、ナミリヤ伯爵殿、それとお久し振りですね、リネット嬢。」


「お久しゅうございます、ロザリオ侯爵閣下。」


ロザリオ侯爵邸の客間にて改めて当主会談が行われた。ナミリヤ伯爵家から当主のリコールとその妹のリネットが参加した。リネットの参加については事前にアルクエイドの相談し許可を得て、会談に参加したのである


「さてナミリヤ伯爵殿、御父上にはちゃんと伝えましたか?」


「はい、父からは異存はないとの事。それと伝言を預かっております。」


「何と?」


「【これまでの事、全ては私自身の視野の狭さ、認識の甘さ故に閣下に無礼を働いた事、深くお詫び申し上げます】との事にございます。」


アルクエイドは前当主であるリースが謝罪してきた事に少しばかり驚いた。かつてのリースは誇り高く、人に頭を下げるような事は滅多にしない事を知っていたので、絶縁後の災難が続いてすっかりプライドの高さも鳴りを潜めたという事にしみじみと感じた


「そうか、あの御方が・・・・」


「閣下、我等ナミリヤ伯爵家一同、数々の御無礼を伏してお詫び致します。」


そう言うとリコールとリネットは深く頭を下げて謝罪した


「過去、そして此度の事、全て水に流しましょう。」


アルクエイドがそう言うとリコールとリネットはバッと頭を上げ、礼を述べた


「感謝致します!」


「父もきっと喜びます!」


「うむ、さて今になって和解を持ち掛けようとした事を貴殿等は不審に思われたでしょう。その理由をお話し致しましょう。」


リコールとリネットは神妙な面持ちで理由を聞く姿勢を見せるとアルクエイドは語り始めた


「ゴルテア侯爵家を御存じですか?」


「は、はい。創業以来の譜代の名門貴族にございます。」


「ロザリオ侯爵閣下の婚約者の実家でもあります。」


「えぇ、実はそのゴルテア侯爵家の御令息がリネット嬢に一目見た時から懸想をしておりましてな。」


リネットは「えっ」とした表情を浮かべ、リコールも耳を疑い、尋ねた


「あ、あの、それは本当なのですか?」


「えぇ、ゴルテア侯爵令息が国立自然公園の乗馬コースにて御会いしたと聞きました。本人曰く【一目惚れ】だそうですよ。」


一目惚れと聞いたリネットは驚きを隠せなかった。そんなリネットを余所にリコールはレオンに会ったのかどうかを問い詰めた


「そうなのか、リネット。」


「す、少し御待ちを!」


リネットは必死で国立自然公園にいた時の事を思い出していた。あの時は仕事が休みで従者と共に国立自然公園に遊びに行っていた。その時に貴族の令息と護衛を見掛けたのを覚えていた


「お、畏れながらその御令息は金色の短髪で緑色の眼の気品のある美しいお姿をしておりましたか?」


「えぇ、間違いなくその御方ですね。名前はレオン・ゴルテア、御歳18歳、9つ下ではございますが私の将来の義兄になる御方にございます。」


「は、はぁ~。」


「その御方たってのお頼みでしてね。」


「それが和解に至った理由だと?」


「えぇ。」


理由を聞いたリコールとリネットは混乱していた。事実は小説より奇なりというが、本当にそうなってしまった事に頭の整理がつかないのである


「リネット嬢、一度だけレオン侯爵令息殿、御会いになられては如何ですか?」


アルクエイドからの提案にリネットは迷っていた


「リネット、一度でもいいから御会いしてみろ!」


迷うリネットにリコールは発破をかけた。リネットは逃げ道が存在しない事を悟り、会うことにした


「それは良かった。実はな、この屋敷にその令息殿がおられるのだ。」


「「えっ!」」


リコールとリネットは耳を疑った。まさかその令息がこの屋敷にいるとは思っていなかったようで寝耳に水だったのである


「いやぁ、リネット嬢が来ると知って令息殿が居ても立っても居られない状況でしてね、申し訳ない。」


「「は、はぁ~。」」


「令息殿からお二人には当日までは教えぬよう口止めされましてね。報連相を蔑ろにした時点で私も人が事が言えませんな、ははは。」


「「そ、そうですか。」」


「さて、早速お呼びしましょう。ジュード、令息殿をこれへ。」


「畏まりました。」


ジュードが客間を出てから数分後、ジュードはレオンを連れてやってきた


「旦那様、レオン侯爵令息様をお連れいたしました。」


「ご、ごきげんよう。」


肝心のレオンはというと一目惚れした相手に直接会う事になってから緊張でガチガチになっていた。その様子を見たアルクエイドは「大丈夫か」と心配しつつリコール&リネットの両名に紹介した


「この御方がクリフ・ゴルテア侯爵閣下の嫡男、レオン・ゴルテア侯爵令息です。令息殿、この御令嬢で間違いないですか?」


レオンはリネットの方へ視線を向けると顔を真っ赤にしてコクンと頷いた。リネットはというと国立自然公園で会った人物がまさかゴルテア侯爵家の令息だとは思っていなかったようでこちらも緊張していた


「令息殿、まずは座りなさい。」


「は、はい!」


アルクエイドに促され、レオンはガチガチになりながらもソファーに座った。アルクエイドは「御挨拶を」とレオンを促した


「ご、ごきげんよう。ゴルテア侯爵が令息、レオン・ゴルテアです。」


「ごきげんよう、ナミリヤ伯爵家当主、リコール・ナミリヤです。こちらが妹のリネットです。」


「リネット・ナミリヤと申します。国立自然公園ではゴルテア侯爵令息様とは存じませず失礼を致しました。」


「い、いいえ。こちらもな、な、名乗らなかったので・・・・」


レオン何とか答えようと必死で頭を巡らせたが如何せん、目の前にいる一目惚れした女性を前にしどろもどろになった。アルクエイドはそんなレオンに歯がゆい思いをしながら見ていた


「令息殿はリネット嬢に会えた事で緊張しておられるのだ、ははは(ああ、イライラする。男ならドンと胸を張りなさいよ!)」


「旦那様。」


そこへジュードが耳打ちをした。それを聞いたアルクエイドはスッと立ち上がった


「後はレオン令息殿とリネット嬢のお二人だけにしましょうか。さあ、ナミリヤ伯爵殿、我等はこの場を離れましょう。」


「え、あ、はい。」


「え、ロザリオ侯爵閣下!」


「兄上!」


「後は御二方で話し合われよ。」


レオンはリコールを促し、客間を退出しようとした。レオンとリネットは突然、2人きりにされた事で困惑した。そして客間にはレオンとリネットの2人だけが残った


「(リネット嬢と2人きり、な、何を話せば(照)」


「(レオン侯爵令息様と2人きり・・・・何を話せばいいのかしら(汗)」


「「あ、あの!」」


「「そちらから、どうぞ!」」


見事にハモる2人は互いにこそばゆい思いをしつつ先にリネットから話しかけた


「侯爵令息様、ロザリオ侯爵閣下から伺ったのですが、どうして私等に懸想を?令息様であれば他にも相応しい御令嬢がいらっしゃるのに?」


リネットの質問にレオンは顔を真っ赤にさせつつ、「一目惚れです」と答えた


「ひ、一目惚れ?それは本当ですか?」


「は、はい(照)」


レオンはガチガチになりながらも素直に答えた。リネットは今の自分と家の現状を語った


「私の実家は社交界から孤立し、暮らし向きも決して良くありません。私自身も身分を隠して平民の食堂で働いています。令息様はそんな私と実家と縁を結びたいのですか?」


リネットの発言にレオンは「わ、私は純粋にリネット嬢の事が・・・・」としどろもどろになりながら何とか言葉を出そうとしていた


「す、好きです!」


「・・・・反対されなかったのですか?」


「最初は・・・・反対されました。で、でも何とか説得して・・・・今回の場に何とか・・・・もち・・・・もちかけ・・・・ました。ひ、卑怯だとは分かってはいるのですが・・・・」」


「令息様。」


レオンはやけっぱちになったのかありったけの勇気を振り絞り、愛の告白をした


「り、リネット嬢、私は何の取り柄のない平凡な男です!でもリネット嬢を・・・・リネット嬢を思う心は・・・・誰にも負けません!」


レオンの必死の告白にリネットは頬を赤く染めながら、「す、少し気持ちの整理をさせてください」と答えた。レオンも「は、はい、待ちます!」と答えた。それからどれくらい長い時間が経ったか分からないほどの静寂が包まれたが、リネットはようやく口を開いた


「こんな私でよければ・・・・」


「ほ、本当か!」


「は、はい。不束者ですが、よろしくお願い致します。」


「あはは・・・・やった、やった!あははは。」


レオンは今まさに絶頂の時を迎えていた。そんな様子を陰ながら見ていたアルクエイド、ジュード、リコールはホッとした


「ナミリヤ伯爵殿、これで和解が成立しましたな。」


「はい。」


「ジュード、王都に触れ回れ。ロザリオ侯爵家とナミリヤ伯爵家の和解が成立した事。レオン・ゴルテア侯爵令息とリネット・ナミリヤ伯爵令嬢の交際している事をな。」


「畏まりました。」


こうして両家は和解し、2人の男女のカップルが誕生したのであった

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