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第三十六話:ナミリヤ伯爵家

ここはナミリヤ伯爵邸、屋敷の壁は剥がれており、庭は雑草だらけ、一見すると幽霊屋敷と間違われてもおかしくない状態であった。この屋敷に住むのはナミリヤ伯爵現当主であるリコール・ナミリヤ伯爵【年齢25歳、身長176㎝、色白の肌、胡桃色の短髪、翠眼、彫りの深い端整だが幸薄い顔立ち、ナミリヤ伯爵家当主、婚約者不在(婚約解消された過去あり)】、リコールの妹であるリネット・ナミリヤ【年齢18歳、身長164㎝、色白の肌、胡桃色のロング、翠眼、美乳、細身、彫りの深い端整な顔立ち、婚約者不在(婚約解消された過去あり)、レオンが一目惚れした令嬢】と元当主であるリース・ナミリヤ【年齢47歳、身長178㎝、色白の肌、白髪の短髪(かつては胡桃色)、翠眼、見た目が60代前半の彫りの深い老け顔、ロザリオ侯爵家(元ロザリオ伯爵家)から絶縁された原因を作った人物】や僅かな使用人のみが暮らしていた。生活費は領地からの税だけでやり繰りしているが節約のためにリネットは身分を隠し、リンダという偽名を使い食堂【ヒマワリ】で働いていた。仕事へ行く前にリネットはいつものように精神安定剤と水をリースに渡していた


「父上、お薬です。」


「いつも、すまない。」


リースは医者から渡された精神安定剤を服用した。薬を渡したリネットはいつもように食堂へ向かう準備をし仕事場へと向かおうとした


「それじゃあ、私は仕事に行ってきます。」


「いつもすまない。お前にばかりつらい事をさせて・・・・」


「それは言わない約束ですわ。」


「いや、元を正せば私のせいだ。私がロザリオ侯爵に対し暴言を吐いたせいでリコールとお前の婚約が解消され、おまけにこんな生活を送る羽目に・・・・ううう(泣)」


昔を思い出し涙にむせぶリースにリネットは必死に宥めた


「私の事は気にしないでください。くれぐれもお体をご自愛ください。」


「うう、すまない、ううう。」


父を何とか宥めたリネットは仕事場へ向かう途中で兄のリコールに鉢合わせした


「これから仕事か?」


「はい。」


「いつもすまないな。」


「私にできる事といったら、これくらいしかありませんので。」


「そうか。気を付けて行ってくるんだぞ。」


「はい、では行ってきます。」


リネットは仕事場へ向かってから数時間後に執事のトルコ・ロッソ【年齢50歳、身長176㎝、色白の肌、口髭、碧眼、白髪交じりの黒の短髪、彫りの深い柔和な顔立ち】が一通の手紙を持ってリコールの下へやってきた


「トルコ、如何した。」


「はい、ロザリオ侯爵閣下からお手紙が参りました。」


トルコからの報告を聞いたリコールは耳を疑った。絶縁状態のロザリオ侯爵から手紙が来るとは思って芋おらず何度も確認した


「トルコ、偽りを言うな。ロザリオ侯爵家とは絶縁状態だぞ!」


「いいえ、間違いなくロザリオ侯爵家からです。」


リコールは手紙をマジマジと見た後、トルコから手紙を貰った。リコールはごくりと唾を呑み込んだ後、恐る恐る手紙を開き、内容を拝読した。リコールは一言一句、確認すると目をギョッとさせた


「旦那様、如何されましたか?」


「あ、ああ。ロザリオ侯爵閣下から和解の申し出が来た。」


「な、何ですと!」


和解という言葉にリコールだけではなくトルコは驚愕した。あのアルクエイドが和解を申し込んでくるとは夢にも思っていなかったようで手紙をマジマジと見ていた


「こ、これは天変地異の前触れではないか!」


「だ、旦那様、大旦那様にもこの事をお知らせ致しますか!」


「ま、待て!向こうの真意を確かめねばならぬ!」


「真意にございますか。」


「ああ、和解の真意を尋ねるのだ!」


リコールは数少ない白紙に筆を走らせた。とにかく失礼のないように丁寧すぎる内容で認めた後、ロザリオ侯爵邸に送られたのである






「旦那様、ナミリヤ伯爵家から御手紙が。」


「来たか。」


アルクエイドはジュードが持ってきた手紙を受け取り、内容を確認した


「ふっ、やはり疑ってきたか、それもそうであろうな。絶縁状を叩きつけたにも関わらず、いきなり和解を申し込んできた私の狙いが分からずにいるのであろうな。」


「如何なさいますので?」


「決まっているだろう、現当主であるナミリヤ伯爵を我が屋敷へ招く。」


「畏まりました。」


アルクエイドはすぐさま、返書を認めた。○月○日に屋敷へ招待する旨を手紙に書いた後にナミリヤ伯爵家に送った


「さて向こうはどう出るかしら♪」


返書はナミリヤ伯爵家に届き、執事のトルコから手紙を受け取ったリコールは内容を確認した


「○月○日にロザリオ侯爵邸に招待するとの事だ。」


「旦那様、これは吉報にございますな!」


「いや、ぬか喜びはできんぞ。向こうは何かしらの要求をする可能性もある。」


「それで如何なさいますか?」


「取り敢えず行くしかあるまい。」


「大旦那様にこの事は・・・・」


「まだ知らせぬ。」


「畏まりました。」


一方、リネットは食堂【ヒマワリ】にてせっせと働いていた。今日も食堂は繁盛しており猫の手も借りたいほどの大忙しである


「リンダちゃん、3番テーブル!」


「はぁ~い!」


リンダことリネットは料理を持って3番テーブルに運んだ


「リンダちゃん、今日も可愛いね♪」


「おだてても料理しか出ませんよ♪」


「リンダちゃん、俺と結婚してくれええええ!」


「「「「「喧しい!」」」」」


「ぶほえ!」


「ふふふふ。」


リネットは食堂【ヒマワリ】の看板娘として人気が高く、彼女に恋い焦がれる男は数多くリネット目当てに来る人が多いのである。そんな忙しい毎日を送っていたリネットは仕事を終わらせ余った料理を持って帰るのである


「はい、リンダちゃん、賄い料理だよ。」


「今日もありがとうございます。」


「リンダちゃんも大変だね。家族が多いと食費もバカにならないからね。」


「いいえ、好きでやっているので。」


「それじゃあ、気をつけてね。」


「はぁ~い。」


賄い料理を持ち帰り、そのまま屋敷へ帰宅した。リネットはトルコ等に賄い料理を渡すとトルコからそのままリコールの下へ向かうよう告げた。何事だろうと思い、リコールの下へ行った


「ただいま、帰りました。」


「お帰り。」


「どうされたのですか、兄上。」


「うむ、実はな。」


トルコから今日あった事をリネットにそのまま伝えた。リネットはというと半信半疑ですぐには信じられなかった


「兄上、それは何かの冗談では・・・・」


「冗談ではあればお前を呼びはしない。」


「だって・・・・あのロザリオ侯爵ですよ!あの御方は父を恨み、絶縁状を送りつけたではありませんか!それが今になって和解等と!」


「落ち着け、それと声が大きい。」


「も、申し訳ございません。」


「取り敢えず私はロザリオ侯爵に会う事とする。それと父上にはこの事を言うな、良いな。」


「・・・・はい。」


「では、下がって良い。」


「失礼しました。」


リネットは兄の下へ去った後、自分の部屋へ戻った。リネットはベッドに寝転びつつ、ロザリオ侯爵家からの和解について考えていた


「何故、今になって・・・・」


リネットは昔を思い出していた。当時、ロザリオ伯爵家(後にロザリオ侯爵家)を継いだばかりのアルクエイド・ロザリオが商売を始めた。貴族が商売とは親戚の誰もが耳を疑い、出来る筈がないと馬鹿にしていた。特に父は「商売とはロザリオ伯爵家も堕ちたものだ」とあからさまに馬鹿にしていた。しかし神のいたずらか商売は大成功を収めた事でアルクエイドを父を含め馬鹿にしていた人たちは不味いと思ったのか、付け届けを持ってアルクエイドに媚びを売ったが、アルクエイドの反応は冷たかった。ある日、アルクエイドから絶縁状を送りつけられた事は今でも覚えている。父は「望むところだ」と強気の姿勢をとったがこれがいけなかったのか、周囲から味方が続々といなくなり、徐々に孤立していった。兄と自分の婚約者の実家から婚約解消を告げられた事でナミリヤ伯爵家の威光が地に堕ち始めた。流石の父も焦ったのか次の婚約者を探していたが全て断られた。中でも父の精神が病んだ原因を作ったのは母が愛人である若い男と共に金目の物を持って失踪したことである。ナミリヤ伯爵家の全財産のうち、半分以上を持っていかれた事で暮らしぶりは一気に困窮し代々仕えていた使用人たちを召し放つ事態になったのである。その頃から父は精神を病み、兄に家督を譲ってからは精神病院に通う日々が続き、一層の貧乏生活を送り続けたのである


「今になって和解なんて・・・・遅いわよ。」


リネットは筋違いだと分かっていても和解を申し込んできたアルクエイドに恨み言を吐き続けるのであった


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