第三十三話:恩師
「ロザリオ侯爵閣下、弟子にしてください!」
「「「「「弟子にしてください!」」」」」
「(何、このデジャブ。)」
ここはロザリオ侯爵邸玄関前、令息たちはアルクエイドの前に土下座していた
「「「「「我等に武術を教えてください!」」」」」
令息たちの目的はアルクエイドに弟子入りする事であった。アルクエイドは弟子を取るつもりはないことを令息たちに告げた
「何度も申し上げるが私は弟子を取るつもりはないからお引き取りください。」
「閣下、ここにいる者たちは私を含め閣下の勇姿に感動致しました!何卒、我等の願いをお聞きいれください!」
令息たちを代表して、セルジュ・アルグレン【年齢17歳、身長177cm、色白の肌、碧眼、肩まで伸びた茶色の髪、彫りの深い端整な顔立ちの美男子、宰相レスター・アルグレンの嫡男】侯爵令息が代弁した。相手が宰相の息子ともなれば無下に扱うわけにもいかず、何とかお引き取り願うよう説得を続けたが頑として動かない令息たちに業を煮やしていると・・・・
「セルジュ、何をしておる!」
「ち、父上!」
「「「「「宰相閣下!」」」」」
そこへセルジュの父であるレスター・アルグレンが現れた。どうやら息子と他の令息がロザリオ侯爵邸に押し掛けたと聞き、駆け付けたのである
「この大馬鹿者が!人様に迷惑をかけてどうする!」
「父上、我等は閣下に弟子入りを・・・・」
「喧しい!!」
「まぁまぁ、宰相閣下。どうか、その辺で。」
激昂するレスター、それを宥めるアルクエイド、しゅんとしているセルジュ含めた令息たち、何とも言えない光景にジュードたちは困り果てていた
「ロザリオ侯爵殿、愚息が申し訳ない。」
「いいえ、お気になさらず。ただ私は弟子を取るつもりは一切御座いません。」
「だそうだ、お前たち。」
「ですが父上!」
「そんなに弟子入り志願したいなら他に適任者がいるぞ。悪魔も逃げ出すほど厳しいとランドルフ・ベルグーズ侯爵殿をな。」
その名を聞いたセルジュ含め令息たちは表情が一瞬のうちに青ざめた。アルクエイドも「酷なことをするな」とレスターを見つめていた。ガルグマク王国に仕えるランドルフ・ベルグーズ【年齢53歳、身長182cm、色白の肌、筋肉質、碧眼、白髪の短髪、彫りの深い威厳に満ちた精悍な顔立ち、頬に十字傷、軍務大臣】侯爵は現役で活動しつつ、後進育成(新兵教育)の教官を務めていた。その教育は悪魔すらも逃げ出すと評判になるほど厳しく、友人であるウルスラからは「あの御方の訓練に着いてこれるのは一握り」と言わしめるほどである
「さて、どうする?」
レスターが尋ねるとセルジュたちは「父上、ロザリオ侯爵閣下、ごきげんよう」とそそくさとその場を立ち去った。レスターは「はぁ~」と溜め息をついた後、改めてアルクエイドに謝罪した
「ウチの愚息と令息たちが本当に申し訳ない。」
「いいえ、それよりも本当にベルグーズ侯爵の下へ弟子入りさせるのですか?」
「あれは言葉の綾だ。こうでもしなきゃ、あれは止まらないな・・・・はぁ~。」
「御心中、御察し申し上げます。」
「うむ、仕事が残っているからこれにて失礼。」
「ごきげんよう。」
宰相レスターが去ってから数日後、予想外な人物がロザリオ侯爵邸に訪れた
「久しいな、アルクエイド殿!」
「お久しゅうございます、ベルグーズ侯爵閣下。」
現れたのは悪魔すらも逃げ出すほど訓練の厳しい事で評判で今でも軍務大臣を務め、後進の育成に力を注ぐランドルフ・ベルグーズ侯爵本人である
「当家に何用あって参られたのでしょうか?」
「昔の弟子に会いに来た、それ以外に何があるのだ。」
「わざわざ畏れ入ります、先生。」
「先生と呼ばれるのは久しいな、ハハハハ。」
アルクエイドはかつてランドルフの下で武術の手解きを受けていた。前世は空手と合気道を習って多少は耐性があったが、ランドルフの手解きはそれ以上に厳しかったのは覚えている。ランドルフからは「筋がいい」と評価され、騎士になれと勧誘されたが丁重にお断りしたのは言うまでもなかった
「聞いたぞ、アルクエイド殿。例の成り上がり者を静めた際のお手並み、お歴々も褒め称えておったぞ!」
「お世辞でも嬉しゅうにございます。」
「私がその場にいたら、そやつを血反吐吐くまで扱いてやるがな(笑)」
「そんなことすれば彼の者は身が持ちませぬよ。」
「それはさておいて、その後、婚約者とはうまくいっているのか?」
ランドルフはアシュリーとの仲を尋ねて来た
「ええ、おかげさまで。」
「貴殿はずっと独り身、女遊びも激しいと聞いた時は心配していたが、婚約者となるゴルテア侯爵家の令嬢と出会ってからは女遊びも一切しなくなったと聞いた時は流石の私も驚いたぞ。」
「嘘偽りなく純粋に私に嫁ぎたいと願っている令嬢がいるのであれば私も正面から答えるまでの事です。」
「・・・・そうか。」
アルクエイドの物言いにランドルフはそれ以上、何も言わなかった。同時にアルクエイドが生涯の伴侶となる令嬢と未来に向けて歩みだす姿に内心、ホッとした
「では私はこれにて失礼しよう。」
「先生。」
「我が弟子よ。生涯の伴侶を裏切るでないぞ。」
「はい!」
「よかよか、では去らばだ。」
アルクエイドはかつての師に感謝しつつ、1歩前へ進むのであった




