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第三十二話:夜会4回目(後編)

本日の夜会は賑やかであった。本日の主役といえるフロイス・ポナパルド男爵の御披露目の日であるのだ。貴族たちは手ぐすねを引いて待ち望んでいたが一向に姿を見せないフロイスにザワザワし始めた


「あの男を見たか?」


「いいえ。」


「欠席届を提出していないようだが・・・・まさか遅刻か?」


「御披露目の日に遅刻とは何と情けない。」


「無断で欠席したりして。」


「それこそ自分で自分の首を絞めるようなもの、そのような非常識な振る舞いはするはずが。」


「・・・・本当に来ないつもりでは?」


「「「「「あり得るな。」」」」」


貴族たちはフロイスが来ないという噂が夜会全体に広まったのは言うまでもなく、夜会を主催する国王グレゴリーの耳にも届いた


「ポナパルド男爵が来ていないだと?」


「ははっ。」


「欠席届は提出されたか?」


「いいえ。」


宰相であるレスター・アルグレン侯爵の報告を受けた国王グレゴリーはたちまち不機嫌になった


「余が国王になって十数年経つがここまでの珍事は初めてだ。」


グレゴリーは口調こそ穏やかだが自分の主催する夜会に無断で欠席した事に腸が煮えくり返っていた


「夜会はもうすぐで終わります。そうなればポナパルド男爵は貴族としての資格を失います。」


「であろうな。」


「では爵位の剥奪、及び財産は没収致しましょう。」


「そうせよ。」


その後、夜会は終了したが結局、フロイス・ポナパルドは夜会に姿を見せなかった。アルクエイドとアシュリー、ウルスラ&ナビエ侯爵夫人等もフロイスの姿を1度も見掛ける事はなく夜会が終了したのである


「結局、現れませんでしたね。」


「よろしいではありませんか、閣下。」


「アルクエイド殿、彼の御仁の心配でもされているのか?」


「いいえ、貴族としての礼儀作法を教えてやろうと思っていたんだ、ウルスラ殿。」


「あらま、それは残念でしたな。」


「ロザリオ侯爵閣下、私もアシュリー嬢同様、いない方がよろしゅうございます。」


「それもそうですな。」


「では帰る準備をしましょうか。」


「そうしましょう。」


アルクエイドを含め、他の貴族たちも帰る準備を済ませようとしたところ、外が騒がしかった


「ん、何やら外が騒がしいな。」


ウルスラが外の様子を眺めていると、そこに現れたのは如何にも場違いレベルの派手な貴族衣装を身に纏ったフロイス・ポナパルド本人が血相を変えて現れたのである


「あらら、今になって主役の御登場だ。」


アルクエイドの一言にアシュリー、ウルスラ、ナビエはコクンと頷いた。他の貴族たちも今になって現れたフロイスに呆れと嘲笑を浮かべた。フロイスはというと一人の娼婦が偶然、招待状を見つけフロイスに見せると今日は夜会である事に気付き、急ぎ身支度を済ませ、王宮に向かったのか顔中、汗だくでより醜悪さが増したのである


「(いつ見てもキモいわ。少しは身嗜みを整えなさいよ。)」


アルクエイドは心の中でフロイスを罵倒していると フロイスはアルクエイドに気付き、駆け足で近付いてきた


「アシュリー嬢、モンテネグロ夫人、下がっていなさい。」


「「はい!」」


「ウルスラ殿。」


「あぁ。」


アルクエイドとウルスラはアシュリーとナビエを守るように前に出た。フロイスはアルクエイドとウルスラに前に止まった。フロイスから汗臭さと共に女の残り香が感じたアルクエイドは女の所に行ったと察知した


「ろ、ロザリオ侯爵閣下、や、夜会は!」


「先程、終了した。」


「し、終了した。」


フロイスはこの世の終わりのような表情を浮かべた。アルクエイドはそれを無視して夜会を無視して何をやっていたのかを問い詰めた


「ポナパルド男爵、畏れ多くも国王陛下主催の夜会を今になって参加するとはどういう了見だ?」


「い、いや、だ、大事な用事がありまして。」


「ほぉ~、国王陛下を蔑ろにしてでも優先する用事とは何なのか御答えくだされ。」


ウルスラ、アシュリー、ナビエ含め会場にいた貴族たちはフロイスを注視した。フロイスはというと、どう言い訳をしようかひたすら考えていた


「まさか女の所に行っていたのではあるまいな?」


「な、何を根拠にそのような・・・・」


「微かにだが女の残り香が鼻についた。それが何よりの証拠だ。」


女の残り香と聞いたフロイスは必死に自分の服装の臭いを確かめた。その様子を見たアルクエイド以外の貴族等は「女の所に行ったな」と悟ったのである。側で聞いていたウルスラはこれ以上の問答は無用と感じたのかアルクエイドを制した


「アルクエイド殿、もうよろしいではありませんか。」


「ウルスラ殿。」


「もう夜会は終了したのです。この御方は貴族としての義務を完全に放棄されたのですから。」


それを聞いたフロイスは今度は泣き落としにかかった


「お待ちください!どうか陛下に御取次のほどを!」


「何故、取り次がねばならぬのです。貴方は夜会よりも女性の方を優先されたのですから。」


「ウルスラ殿、それではあまりにも身を蓋もないではないですか?」


「隠しようのない事実ではありませんか、アルクエイド殿。」


「それもそうだな。」


「「ハハハハハハ。」」


アルクエイドとウルスラが笑うと、周囲の貴族等も失笑をした。他の貴族もフロイスに向かって次々と馬鹿にし始めた


「やはり成り上がり者のする事は我等には理解出来ませんな。」


「女の所といってもそのような見た目で会いに行くとしたら限られますな。」


「ポナパルド男爵は金だけはありますからな。」


「金を取ったら何も残りませんがね。」


「ほんと、冗談は醜悪な見た目だけにしてほしいわ。」


「ぷぷ、奥様、そのような事を申されては可哀想ではありませんか、ふふふ。」


「もう貴族ではない奴がここにいるのも烏滸がましい限りだ!」


「そうだ、貴族でない奴はさっさと出ていけ!」


「まぁまぁ、最後の夜会なのですから生暖かく見守りましょう♪」


「お優しいですわね、私には真似できませんわ。」


周囲からの心無い罵倒にフロイスは顔を真っ赤にさせプルプルと震え出した


「ポナパルド男爵、もうここに貴殿の居場所はない。早くしないと屋敷を差し押さえられますぞ。」


「・・・・まれ。」


「はい?」


「ダマレエエエエエ!」


フロイスは激昂しアルクエイドの胸ぐらを掴んだ。周囲にいた貴族等はフロイスの行動に驚いた。まさか逆ギレするとは思ってもいなかったのである。フロイスはアルクエイドの胸ぐらを掴んだまま周囲を罵倒した


「黙れ!黙れ!貴様らのような爵位しか取り柄のない奴等に罵倒される資格はないわ!」


「はぁ~。」


溜め息をついたアルクエイドは、すぐさまフロイスの足を踏みつけた


「あっつ!」


踏まれたフロイスは胸ぐらを掴んだ手を離した途端、アルクエイドはフロイスの股間を思い切り蹴り挙げた


「おう!」


フロイスは股間を蹴られた痛みに悶え苦しむとアルクエイドは次に腹にボディーブローを浴びせた


「ぐふ!」


アルクエイドに股間を蹴られ、ボディーブローを食らったフロイスが踞ろうとした瞬間、顔面に思い切りストレートをぶちこんだ


「ぐぼえ!」


フロイスはそのまま後ろに吹き飛び、ドサッと倒れた。鼻は折れて鼻血が溢れ、ピクピクとしたまま気絶した


「やれやれ、手間を取らせてくれる。」


アルクエイドは手についた血を持っていたハンカチで拭くと周囲から拍手喝采が注がれた


「お見事です、ロザリオ侯爵閣下。」


「流石は武闘派貴族!」


「惚れ直しましたわ!」


周囲の貴族等は騒ぎを静めたアルクエイドをこれでもかというほど褒め称えた


「流石は武闘派貴族殿、私の出る幕もなかったな。」


「その名は呼ばないでいただきたい、こそばゆうて敵わない。」


「閣下!」


そこへアシュリーが血相を変えて駆け寄ってきた


「閣下、お怪我はありませんでしたか!」


「心配は御無用。この通り、怪我一つ負っていませんわ。」


「・・・・良かった。」


「ありがとう、心配してくれて。」


「い、いいえ(照)」


「一体、何事だ?」


そこへ国王グレゴリー、王妃レティーシア、王太子グラン、グランの婚約者であるレミリアが駆け付けた。アルクエイド等、臣下一同はすぐに臣下の礼を取ろうとしたがグレゴリーは「そのままで良い、取り敢えず何があった」と説明を求めた


「畏れながら陛下、この先は私が説明致します。」


アルクエイドは先程、起こった事をありのまま説明した。周囲にいた貴族等もアルクエイドに同調しフロイス・ポナパルドの失態を説明した。それを聞いたグレゴリーは気絶しているフロイスを睨み付け、宣言した


「フロイス・ポナパルドは夜会に無断で欠席した事は明白である。よって彼の者の爵位と領地と財産を没収致す。なお、騒ぎを起こした罪で向こう100年、鉱山にて強制労働刑に処する!」


「「「「「ははっ。」」」」」


フロイスは気絶されられたまま、100年の強制労働に従事する事になった。フロイスはそのまま鉱山に送られ、結局は王都に戻る事なく生涯を閉じるのであった

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