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第二十一話:末路

「ロザリオ伯爵、サルマン王国王都が陥落し、国王アラマキと一族は捕縛されたそうだ。」


「それは吉報にございます。」


アルクエイドは王宮に参内し、今は執務室にて国王グレゴリー、宰相でアルグレン侯爵家当主のレスター・アルグレン侯爵【年齢45歳、身長180㎝、色白の肌、碧眼 茶色の短髪、彫りの深い端整だが理知的で思慮深そうな顔立ち】と共にサルマン王国陥落の一報を受けていた


「それでアラマキ王は如何あいなりましたか?」


「うむ、それについてはレスターに聞いてくれ、レスター。」


「ははっ!ロザリオ伯爵殿、アラマキ王とその一族は今、牢獄の中にいるそうだ。家臣たちの反乱によって全員捕縛されたそうだ。」


「それはそれは、まさに因果応報ですな。」


「全く持ってその通りだ。」


アラマキ王とその一族捕縛はできたとしても問題は戦後処理である。特に論功行賞で各国と問題を起こせば争いの火種になりかねない。アルクエイドは国王の方へ視線を向け、尋ねた


「不躾ながらお尋ねいたしますが、その後のサルマン王国は如何ありましょうか?」


「うむ、問題はそこだ。サルマン王国は山国だ、平地も僅かしかない。話によると鉱石事態もほぼ枯渇している状態だ。」


「結局は骨折り損のくたびれ儲けと言うわけですか。」


「そうでもないぞ。金鉱、銀鉱、銅鉱、鉄鉱、錫鉱は枯渇しかけているが、それ以外の鉱石は豊富に産出している。使い道は色々とあるからな、我等はそれを頂戴しようと思っている。」


「それだと各国が黙っていないのでは?」


「金鉱、銀鉱、銅鉱、鉄鉱、錫鉱が枯渇した鉱山と僅かな平地と港を各国も文句は言わん。」


「それなら宜しいのですが・・・・」


「陛下、先にあの事を・・・・」


「ああ、そうだったな。内々ではそなたに伝えておく事がある。」


「ははっ。」


レスターに促され、グレゴリーはアルクエイドに目線を向けた


「さて此度のサルマン王国制圧の功績者は2人決まった。1人目はウルスラ・モンテネグロ伯爵、もう1人はそなただ。」


「私にございますか?私は何もしておりませぬが?」


アルクエイドは記憶を辿ったが功績を立てた覚えがなく精々、アドバイスはしたくらいだ


「そなたがサルマン王国の愚挙を各国に知らせるよう進言した事だ。あれがなければサルマン王国を制圧できなかった。」


「いや、あれは陛下からお尋ねにした事に対してお答えしたまでの事にございます。」


「結果として良い方向に導いた。その功績によりそなたを【侯爵】に陞爵(しょうしゃく)してやろう。」


国王の口から【侯爵】に陞爵すると耳にしたアルクエイドは目が点になった


「え、私が侯爵に?」


「ああ、これよりそなたの家は【ロザリオ侯爵家】になった。勿論、ウルスラ・モンテネグロ伯爵も此度の功績で【モンテネグロ侯爵家】に格上げ致す。勿論、新たな領地はそなたやアーデスの領地の近くに与える。」


「は、ははっ!有り難き幸せにございます!」


「おめでとうございます、ロザリオ侯爵殿。」


「ありがとうございます。」


「モンテネグロ伯爵が帰還した後にそなたとモンテネグロ伯爵の両名の陞爵式を行う。それまでは他言無用だ。」


「ははっ!」


アルクエイドは王宮へ後にし馬車にて屋敷へ戻る道中、今でも自分が侯爵に出世するとは夢にも思わなかった。おまけに自分の領地近くに新しい領地が貰えるのだ


「まあ、貰えるんだったら有り難く貰っておきましょう。」


屋敷に到着した瞬間、目の前には品物の行列ができていた。出迎えたジュードに「これは何だ?」と尋ねると・・・・


「はい、旦那様が此度、侯爵就任に際しお祝いの品にございます。」


「・・・・はあ?」


アルクエイドは呆気に取られた。国王からこの事は他言無用にと念を押されたにも関わらず、あっという間にアルクエイドの侯爵就任の噂が広まった


「(人の口に戸は立てられないとは言うけど、広まるの早すぎでしょ!)」


「旦那様、私は感動しております。ロザリオ伯爵家が侯爵家に御昇進された事、これほど喜ばしい・・・・事は・・・・ううう。」


ジュードは感極まって涙を流した。アルクエイドはそんなジュードを宥めつつ、屋敷の中へ入っていった






「ここから出せ!」


「「そうよ、出しなさいよ!」」


ここはサルマン王国の罪人用の牢獄、元国王アラマキ・サルマンと、その母のアルトリア・サルマン、妹のアーシア・サルマンが一緒に収容されていた。いつものように3人は「ここから出せ」の一点張りで牢番はイラついていた


「煩いぞ、罪人共が!」


「喧しいだと!私はサルマン王国国王だぞ!」


「元国王だろ。王都は陥落しサルマン王国は滅びた。お前らが滅ぼしたといっても過言ではないがな。」


「サルマン王国は滅びていない!私が生きている限り、サルマン王国は不滅なんだ!」


「「そうよそうよ!」」


「はあ~。」


牢番の口から何度もサルマン王国が滅びたと説明したが3人は聞く耳を持たず過去の栄光にすがるのみであった。それから一週間が経った頃、ある人物が3人を尋ねた


「まだ生きていたのか。」


「父上!」


「陛下(お父様!)」


尋ねていたのはサルマン王国元先王であるソビエット・サルマンであった。ソビエットは罪人と化した3人を養豚場の豚を見るような目で見ていた


「父上、どうか私をこの牢から出してくだされ!」


「陛下、私たちは家臣たちの謀叛に遭い、かかる仕儀(しぎ)となりました!」


「お父様、どうか私たちをお助けください!」


3人ら必死で懇願したがソビエットの反応は冷たかった


「自業自得ではないか。」


ソビエットの口から「自業自得」の言葉という言葉が出た途端、3人は唖然とした


「アラマキ、お前は兵を率いてワシを隠居に追い込んだであろう、その報いが来たのだ。」


「そ、それは国のために致し方なく!」


「致し方なく・・・・か。あの時、ワシは何を考えていたと思う?」


「さ、さぁ。」


「ふん、実の息子に裏切られ絶望の境地におったわ。それと同時に国は終わったと諦めもあった。ワシは改めて国王として父親としても失格の烙印を押されたのだ。」


ソビエットは昔を思い出していた。あの時は自分は輝いていた。富、名声、権力を一手に握っていた。だがいつまでもそれが続かなかった。頼みの綱である鉱石が枯渇していき、更には側妃との間に生まれた子供たちが問題児である事、あの時はこうすれば良かったと後悔の日々が続いたのである


「今日、お前たちを尋ねたのは他でもない。お前たちは明日、処刑される事が決まったからだ。」


ソビエットの口から「処刑」という言葉に3人は呆気に取られたがすぐに我に返り、問い詰めた


「父上、処刑とはどういう事ですか!」


「サルマン王国が滅亡したのだ、生き残りをそのまま生かしておくと思うか?」


「そ、それでしたら陛下はどうなのですか!」


「ワシか。ワシは王妃の母国であるオーストビア王国に亡命し、今では公爵の爵位を賜った。養子を貰い、次期後継者とした。王族ではなくなったがそれはそれで慎ましく暮らしておる。」


「だ、だったらお父様の口から助命嘆願をしてくださいませ!」


「断る。」


「父上(陛下・お父様)!」


「お前たちの処刑は明日と決まったのだ。それを告げるためにワシはお前たちの下へ参ったのだ。夫として父親としてな。」


「ち、父上。」


「さらばだ。」


ソビエットがその場を去ろうとすると3人は「父上!」とか「見捨てないで!」とか「この人でなし」と喚き散らした。ソビエットは背を背けたままその場を離れた。そして3人は口枷を嵌められ、両手を鎖で繋がれた状態で運ばれた。3人の処刑を今か今かと待ちわびていた国民たちはひたすら3人に罵詈雑言を浴びせた


「早くくたばってまえ!」


「俺たちの金で好き勝手した罰があたったんだ!」


「早く処刑しろ!」


「ギロチンが待ってるぞ!」


3人が豪奢な生活を送るために国民に対して重税を敷き、払えない者は見せしめのために処刑したのである。今では立場が逆転し、自分達が処刑される立場となった3人は今になって自分達がしてきた事がそのまま返ってきた事を実感したのである


「(どうしてこうなったんだ。)」


「(こんな事ってないわよ!)」


「(誰でもいいから助けて!)」


目の前にあるギロチン台を見た3人は恐怖に震え、気絶しそうになったが執行役によって無理矢理、ギロチン台に固定された


「これより死刑を執行する!」


「「「「「オオオオオオオオオオオ!」」」」」


「「「(死にたくない、死にたくねえんだよ!!」」」


その後の3人はギロチンの刃でその命を散らし、サルマン王国は歴史の闇に葬りさられたのであった

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