第十八話:サルマン王国
ここはガルグマク王国王宮、国王の執務室にて国王グレゴリー・ガルグマクは1通の手紙に頭を抱えていた
「はあ~、サルマン王国は何を考えておるのだ。」
手紙の内容は国王グレゴリーと王妃であるレティーシア・ガルグマクとの間に生まれ、王太子であるグラン・ガルグマク【年齢18歳、身長180㎝、色白の肌、碧眼、金色の短髪、彫りの深い気品漂う端整な顔立ちの聡明な美青年】とサルマン王国の姫との縁談である。グランには既に婚約者であるレミリア・ガルグマク【年齢17歳、身長165㎝、色白の肌、碧眼、金髪ロング、巨乳、細身、彫りの深い気品漂う端整な顔立ちの美人、ガルグマク公爵家令嬢】がおり、サルマン王国もその事は知っている。知っているのも関わらず何故、縁談を申し出てきたのか理解できなかった
「誰か。」
「ははっ。」
グレゴリーの呼びかけに側近が駆け付けると、「ロザリオ伯爵を呼べ」と命じた。側近はすぐさま、ロザリオ伯爵邸に赴き、アルクエイドに王宮へ参内するよう伝えた。アルクエイドはすぐに正装に身を包み、王宮へ参内し執務室にいる国王グレゴリーの下へ参った
「御召しにより参上致しました。」
「うむ、よう参ったロザリオ伯爵。まずはこれを読め。」
「ははっ!」
国王から手紙を受け取ったアルクエイドは一読した後に国王の方へ視線を向け、「これは本当の事ですか」と尋ねると国王は首を縦に振った
「彼の国は殿下とその婚約者の事は存じておられるのでは?」
「ああ、勿論知っている。だからこそありえぬのだ。」
「畏れながら、鉱石の件も含まれているのでは?」
「そうかもしれん。」
サルマン王国の主な輸出品は鉱石(金鉱石・銀鉱石・銅鉱石・鉄鉱石・錫鉱石)である。先程も説明した通り、サルマン王国の大半の地域は山だらけであり、農業は限られた地でしかできず大半は漁業と畜産業と林業と商工業と交易に頼っている。鉱石産出量は世界一を誇っており、鉱業大国と呼ばれるほど繁栄していたが最近では鉱石が枯渇していき、輸出もままならなくなった
「それで陛下はどのようにお返事を?」
「無論、断る。王太子グランと婚約者のレミリアの婚姻は国内外に周知しておる。」
「彼の国が納得しましょうか?」
「いや、しないであろうな。向こうが何かしら仕掛けてくるのであれば受けて立つまでだ。」
「流石は陛下、良き御決断にございます。ですがあまりにも性急に身も蓋もなき事を申されては我が国が悪者になってしまいます。まずは返事を濁らせ様子見をした後に各国に密書を遣わしサルマン王国の愚挙を知らせましょう。」
「そなたはどうするのだ?彼の国にも商売を広げておろう?」
「御心配なく、少しずつですが撤退させます。後は陛下の御随意のままに。」
「うむ、ではそうしよう。」
グレゴリーはアルクエイドの進言に従い、まずは婚約者の実家を説得、各国に事情を説明等をする事で返事を濁らせつつ、此度のサルマン王国の愚挙を密書に認め、各国に遣わした。アルクエイドの方でもサルマン王国に悟られぬよう撤退を開始するよう指示を出した。サルマン王国にいる商人たちの下へアルクエイドから手紙が届くと皆、口を揃えて「やはりか」と溜め息をついた
「さて、問題はどうここから離れるかだ。」
「閣下からはまずなるべく王国側に悟られずに少しずつ国を出るよう伝えて来た。」
「うむ、難問ではあるがここで商売を続けていくよりはマシだな。」
商人たちも鉱石が枯渇しているという噂を聞いており、この国に長居は無用と思っていた。サルマン王国の商業ギルドには母国の商売に問題が起きた事を告げ、王国側に悟られぬように撤退を始めた。残っていた商人たちも必要最小限の商売をしつつ、夜逃げする準備を刻々と進めていた。商人たちがサルマン王国から徐々に出国する知らせがアルクエイドの下へ届いた
「うむ、商人たちも徐々にではあるが国を出たとの事だ。」
「それはようございましたな。」
「いや、鉱石の件もあって商業ギルド相手に説得に苦労したそうだ。」
「それはそれは難儀にございますな。」
「うむ、無事に出国するにも時間がかかりそうだ。」
「こればかりは運指第にございますな。」
「あぁ。」
時間はかかったがようやくガルグマク王国出身の商人たちが国を出る事ができた。ガルグマクの商人たちがサルマン王国から出国した事を聞いた各国の商人たちはサルマン王国から徐々に出国するのであった。一方、国王が認めた密書は各国に届けられた。密書を呼んだ各国の王はサルマン王国の愚挙に呆れと嘲笑を浮かべつつ鉱業大国の終焉が間近に迫った事に気付き、国交断絶はしないものの距離を置くようになった
「陛下、鉱山から金鉱石が完全に枯渇致しました。」
「・・・・そうか。」
ここはサルマン王国王宮では家臣の報告を聞いた国王ソビエット・サルマン【年齢53歳、身長175㎝、色白の肌、碧眼、漆黒の黒髪、彫りの深い精悍な顔立ちの男前】は表情にこそ出さなかったものの内心、消沈していた
「してガルグマクからの返事は?」
「はっ・・・・受けるとも断るとも明確にせず曖昧な返事ばかりで。」
「そうか・・・・」
「陛下。」
「父上。」
「お父様♪」
そこへ側妃のアルトリア・サルマン【年齢37歳、身長165cm、色白の肌、碧眼、漆黒のロング、細身、巨乳、彫りの深い端整な顔立ちの美熟女】と、アルトリアとの間に儲けた王太子のアラマキ・サルマン【年齢18歳、身長175cm、色白の肌、碧眼、彫りの深い端整な顔立ちの美男子】と王女であるアーシア・サルマン【年齢15歳、身長163㎝、色白の肌、碧眼、漆黒のロング、美乳、細身、彫りの深い端整な顔立ちの美少女】が現れた
「お父様、私はいつになったらグラン様と結婚できるのですか♪」
「ううむ、向こうは色々と問題が山積みでな、すぐには無理だ。」
それを聞いたアーシアは顔を真っ赤にさせ「問題とは何ですか!」とまくし立てた
「サルマン王国の姫と結婚できるのですよ!そこいらの令嬢と同じ扱いをされるのは堪ったものじゃありませんわ!」
「う、ううむ。」
「陛下、娘が可愛くないのですか!」
「そうです、父上!」
ソビエットはアルトリアとアラマキとアーシアの癇癪に頭を痛めていた。気に入らない事があると、いつも癇癪を起こし周りを困らせる事があった。側妃のアルトリアはアラマキとアーシアを甘やかしてばかりで他の者が注意しても逆に注意した奴をクビにする等、親子共にかなりの問題児であったが王籍から排除する事ができなかった。理由は王妃や他の側妃との間には子供はいたが夭逝しており更に親族がいないため、王位継承者はアルトリアとの間に生まれたアラマキとアーシアしかいないのである。それ故、3人は好き勝手し放題なのである
「父上、私が彼の国に行ってこちらの要求を伝えましょう!」
「アラマキ、何を言うのだ!」
「アラマキの言う通りですわ。陛下、直ちに行いましょう!」
「ならぬ!ならぬぞ!」
ソビエットはこれ以上、ガルグマク王国との関係を悪化させたくない思いから必ず約束を取り付けると3人を宥めたが3人の不満は頂点に達していた
「(優柔不断な陛下がいては可愛いアーシアの結婚が無くなるわ!)」
「(父上には隠居してもらうしかない。)」
「(お父様、私の幸せのために隠居して貰いましょう♪)」
その様子を呆れながら見ていた家臣たちは「次の移住先を考えよう」とか「他国にいる親戚を頼ろう」と内々に亡命しようと計画を立てるのであった




