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第十七話:処刑

ここはとある廃墟、2度目の指名手配をされ、この廃墟に身を隠しているシェズは手提げ金庫から金を取り出し食糧や生活用品を購入していたが、やがては底をつき今は最後のパンを貪り食っていた


「これで最後か・・・・はあ~。」


シェズは何故、こんな事になったのかと悩みに悩みまくっていた。かつてはゴルテア侯爵家に仕える騎士の家系に生まれた。そこで自分が仕える主の娘であり幼馴染のアシュリー・ゴルテアと出会い、共に過ごした。シェズにとってアシュリーは初恋の相手であったが身分の壁に阻まれた。特に実父(シェズの父)からは「身に過ぎたる思いは必ずや身を滅ぼす」と度々、忠告された。煩わしいと思っていたが父の言った事が正しく、今にして思えばまさにその通りの結果になってしまった


「・・・・俺はどこで間違えたんだ、アシュリー。」


シェズはアシュリーも自分と同じ思い(初恋の相手が自分)を抱いていると思っていた。歳月が経つと共にその思いが強くなったが身分の壁が邪魔をしてこの思いを封じてきた。そんな俺たちの思いを踏みにじる男が現れた。男の名はアルクエイド・ロザリオ、ロザリオ伯爵家の当主だ。奴は19歳の若さでロザリオ伯爵家を継ぎ、多岐にわたる商売を展開し大成功を収め、今ではガルグマク王国有数の資産家である。私生活の方はかつて婚約者がいたが、その婚約者は想い人と共に駆け落ちし、婚約者の実家は没落し一家心中をした。それからはずっと独身主義を貫きつつ、女遊びも積極的にやる放蕩者として有名である。そんな奴が今ではアシュリーの婚約者となり、評判になるほどの女遊びを一切しなくなった


「あの(クラリス・ハーゲン)に出会わなければ・・・・」


シェズはというと叶わぬ恋と諦め、自分に告白したクラリス・ハーゲン男爵令嬢と付き合い、いずれ結婚するために騎士爵を得ようと必死になって頑張ったが、クラリスの実家であるハーゲン男爵家がカバナル商会と繋がり、私腹を肥やしていた事が露見しクラリスも警備隊に捕縛された瞬間、シェズは壊れ始めた。


「結局、俺の人生は何だったんだ。」


シェズは益々、憂鬱になっていると外がバタバタと騒がしくなっていた。シェズは壊れた窓からこっそり覗くとそこには警備隊がわんさかいた


「(警備隊、何故ここに!)」


シェズは慌てて脱出しようとしたが瞬間・・・・


「ぶふっ!」


後ろから鈍器のような物で殴られ、シェズは前のめりに倒れた。何が起きたのか理解できず、シェズは「ち、ちくしょ・・・・」と言い残し、気絶した


「合図を。」


「おう。」


派手な音が廃墟に鳴り響いた。警備隊は音のする方へ向かうとそこには気絶したシェズだけがいた


「アイツがポスト・ロイヤルだ。」


「絶対に逃がすな!」


シェズはそのまま警備隊に捕縛された。シェズが警備隊に連れていかれる様子を覗く影はそのまま跡を追い警備局に入るのを確認した後に、その場で消えたのである







「そうか、とうとう捕まったか。」


「はい、隠密からの知らせで警備局に護送されました。」


ロザリオ伯爵邸執務室にてジュードからの報告を承けたアルクエイドはホッとした


「奴の子分たちは、裁判を待たずにそのまま処刑された。奴とて例外ではない。」


「左様にございますな。」


「そうだな・・・・誰か来たようだ。」


扉の向こう側が騒がしくなった。すると扉からノック音がして入室の許可を出すと新聞紙を持った部下の執事が少し慌てた様子で入室してきた


「旦那様!」


「落ち着け、まずは深呼吸だ。」


「は、はい!はぁ~、ふぅ~。」


「よし報告しろ。」


「はい!ポスト・ロイヤルが逮捕されたと号外が出ております。」


「うむ、見せよ。」


執事がジュードに渡し、そのままジュードがアルクエイドの下へ号外新聞を渡した。号外新聞を広げ、内容を拝読すると間違いなくポスト・ロイヤル逮捕とデカデカと載っていた


「うむ、確かにポスト・ロイヤル逮捕の知らせだ。」


「我等にとっては吉報にございますな。」


「うむ。ゴルテア侯爵家にも号外新聞が届く頃であろうな。」


その頃、ゴルテア侯爵家にもポスト・ロイヤル(シェズ・アルバート)逮捕の号外新聞が届いた。アシュリーはというと知らせを聞いて、やっと捕まったか程度の気持ちで聞いていた


「とうとうシェズも捕まったか。あやつには散々な目に遭ってきたからな。」


「全くですわ。あの者を雇っていた事が我が家にとっては恥そのものですわ!」


「父親は立派なのに息子の方は恩知らずですね。」


クリフ、エリナ、レオンはシェズに関して不平不満を述べる一方でアシュリーは・・・・


「(シェズ、あの世でしっかり罪を償ってきてちょうだい。私は閣下と共に生きるわ)」


「・・・・リ、アシュリー!」


「は、はい、お父様。」


「どうしたんだ、先程から上の空だぞ。」


「「アシュリー、大丈夫なの(か!)」」


両親と兄から心配されたが、アシュリーはケロッとして「ご安心を、シェズが捕まってホッとしていましたのよ」と答えた


「そうか、なら良いんだが。」


「アシュリー、無理はしないで。」


「そうだぞ。」


「心配しすぎですわ。」





一躍時の人となったシェズはというた手足を拘束され、取り調べという名の拷問を受けている最中であった。1人の拷問官が気絶しているシェズに水をぶっかけ無理矢理、起こした


「おら、起きろ(バシャ!)」


「ブフッ、ウホォ、ウホッ、ウェェェ!」


「さて、金貸しポスト・ロイヤル・・・・いやオーガス盗賊団のポルト・オーガス・・・・逃亡兵のシェズ・アルバートと言った方が良いか?」


拷問官は既に身元を調べていたようで、シェズは拷問官を睨み付けた。そんなシェズを拷問官は鼻で笑った


「ふん、逃亡兵の分際で。全部、自分が招いた結果じゃないか。」


「くっ。」


「まぁ、いい。お前は裁判をかけられずに死刑と決まったんだ。略奪、放火、婦女暴行、恐喝、不当な取り立て、そして奴隷売買だ。」


「ま、ま、ってくれ。し、死ぬ前にあ、アシュリーに・・・・会わせて・・・くれ。」


拷問官の口から裁判なしの死刑と聞いた瞬間、シェズはアシュリーを呼ぶよう懇願した。拷問官は「元主人の御令嬢を呼び捨てにするとは何と無礼な!」と折檻したが、それでも粘り続けるシェズに根負けした拷問官はゴルテア侯爵家に使いの職員を寄越したのである


「・・・・というわけです。」


職員はゴルテア侯爵一行(クリフ・エリナ・レオン・アシュリー)に用件を伝えた


「何と傲慢な!アシュリーを呼べとは!」


「アシュリー、こんな戯言に付き合う必要はないわ!」


「そうだ、アシュリー!」


案の定、クリフとエリナとレオンは激怒し、誘いに乗らない方がいいと答えた。当のアシュリーはずっと黙ったままであったが、数分後に口を開いた


「シェズとはどなた様の事でしょうか?」


アシュリーの発言にクリフとエリナとレオンだけではなく、職員も呆気に取られた


「しぇ、シェズ・アルバートです。貴家に仕えていた元騎士です。」


「当家にはそのような者はおりません。それに逮捕されたのはポスト・ロイヤルという御方でしょう。私はその御方と面識がございません。彼の御方の処遇はそちらの御自由に。」


淡々と述べるアシュリーにクリフとエリナとレオンはゾッとし、職員も「ではそのように致します」と答え、ゴルテア侯爵邸を去った。職員は去った後、クリフとエリナとレオンはアシュリーに心配そうに尋ねた


「アシュリー、本当にいいのだな。」


「勿論ですわ、お父様。」


「貴方がいいのならそれでいいけど。」


「心配しすぎですわ、お母様。」


「アシュリー。」


「お兄様、そう心配そうな目で見ないでくださいませ。私は決して不幸ではありません。それに私には婚約者(アルクエイド・ロザリオ)がおりますのでご安心を。」


「そうか、そうだったな。」


一方、警備局では職員の報告を受けたシェズ担当の拷問官に報告した。拷問官は「やはりか」と溜め息をいた。拷問官はそのままシェズのいる牢屋に訪れ、アシュリーの言動をそのまま伝えた。案の定、シェズ(手足が拘束された状態)は唖然とした表情と浮かべた後、すぐさまここへ呼ぶよう伝えた


「アシュリーをここへ呼べ!どうしても言わなければならない事があるんだ!」


「何度も言わせるな。シェズという騎士は知らないと仰られたのだ。いい加減、諦めろ。」


「くっ、出せ!ここから出せ!あのアマ、もう許さないぞ!」


シェズは必死になって手足の拘束具を力ずくで外そうと暴れまわったが拘束具はガッチリと固定されており、無駄に体力を消耗される事となった。その後、シェズは絞首刑に処された。シェズに怨みを持つ民衆は石を投げつけたり、罵倒したりした。当のシェズはというと・・・・


「(次に生まれ変わる時は・・・・アシュリーを妻に・・・・)」


シェズは最期までアシュリーの事を思い続けたまま絞首刑となり、その生涯を閉じるのであった。シェズが処刑されてから一週間が経ち、アシュリーはロザリオ伯爵邸にて御茶会をしていた。因みに御茶会はアルクエイドとアシュリーの2人だけである


「閣下、シェズの事は聞いてますよね。」


「あ、ああ。」


アシュリーの口からシェズの名前が出てアルクエイドは驚きつつも、返事をした。アルクエイド自身、アシュリーに気を使ってシェズの話題は出さないようにしようと思っていたがまさかアシュリーの方から言い出すとは思ってもいなかったのである


「意外でしたか、私がシェズの名前を出すなんて。」


「あぁ、まさかアシュリー嬢から言い出すとは思ってもいなかったものですから。」


「ふふ、あの者は最期まで私への執着が凄まじいほどでしたわ。」


「彼の者が何かされたのですか?」


「えぇ、実は・・・・」


アシュリー曰く、裁判なしで死刑が決まった事でシェズが最期に自分に会いたいと言ってきたという。アルクエイドはアシュリーへの執念に半ば呆れつつも、アシュリーにその後はどうしたのかを尋ねた


「それでどうされたのですか?」


「ふふ、当家にはシェズ・アルバートという者はおりません。ポスト・ロイヤルなる御方とは面識がありませんので御辞退致しましたわ。」


「ははは、彼の者にとっては奈落の底へ落ちた心地でしょうね。」


「えぇ、例え彼の者が生まれ変わっても、彼の者の妻になろうとは思いませんわ。」


「これは手厳しい。」


アシュリーは紅茶を一服した後、意を決して語り始めた


「閣下にだけ教えますわ。かつて私はシェズの事が好きでした。場合によっては駆け落ちも考えていたほどです。」


「それで?(分かってたけどね)」


「結果としてはしなくて正解でした。彼の者がクラリスに告白を受けた時点で私の中で踏ん切りがついたのです。それにシェズのクラリスの件で本性を知って良かったと思います。」


「そうですか。」


「閣下、私の行った事は間違っていたのでしょうか?」


「いいえ、貴方は何一つ間違った事はしておりません、むしろそれが正常な判断です。」


「・・・・ありがとうございます、閣下。」


「そうだ、また【カサンドラ】に一緒に行きませんか?また新作のパンケーキが完成したようですよ。」


アルクエイドの口からパンケーキという言葉が出た瞬間、目を輝かせ前のめりになり、アルクエイドに尋ねた


「パンケーキ!それは本当にですか!」


「え、えぇ、【カサンドラ】の店主が是非、お越しくださいと申し出が来ましたがどうですか?」


「はい♪勿論、参ります♪」


「ははは。」





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