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第十二話:金貸し

「シェズが金貸しを?」


「ははっ。」


ここはロザリオ伯爵邸の執務室、家令のジュードがある最近、流行っている金貸しについて報告をした。その金貸しはポスト・ロイヤルと名乗っているが手配中のシェズ・アルバートだということが分かったという


「最近、姿を見せていないと思ったら金貸しをしていたのか、お尋ね者の分際で何と大胆な。」


「警備隊にこの事を伝えますか?」


「如何せん証拠がない。それに奴に金を借りている警備の人間、特に上層部あたりがいるかもしれん。例え捕られても金の力で有耶無耶にして釈放されるのがオチだ。」


「それで如何なさいますか?」


「まずは隠密を忍ばせ身辺を調査する。もしロザリオ伯爵家及びゴルテア侯爵家に手を出そうとするのであれば殺せ。それまでは何もするなと伝えよ。」


「宜しいので?」


「私たちは聖人じゃない、他の面倒までま見れぬ。」


「畏まりました。」


「さて、ゴルテア侯爵家にも知らせぬとな。」


「ははっ。」


アルクエイドの送った手紙はゴルテア侯爵家に送られた。アルクエイドの認めた手紙を一読するとクリフは「はあ~」と深い溜め息をついた。側で聞いていたエリナ、レオン、アシュリーが手紙の内容を尋ねてみた


「旦那様、ロザリオ伯爵は何と?」


「ああ。最近、金貸しとして活動しているポスト・ロイヤルという男の正体が指名手配されているシェズ・アルバートだと判明したそうだ。」


それを聞いた3人は驚愕した。懸賞金付きの脱走兵となったシェズが偽名を名乗って金貸しをしているのである。特にアシュリーはシェズの名を聞いた途端、殺気立ち、「直ちに捕らえましょう!」と父に意見した


「アシュリー、気持ちは分かるがロザリオ伯爵が待つよう書かれている。」


「何故ですか!」


「状況証拠だけで捕縛する事はできぬのだ。今のところは隠密を忍ばせて調査をしているとの事だ。伯爵からは向こうが接触を求めても決して関わってはいけない事、屋敷と身辺の警備を厳重にする事、この事は他言無用にと念入りの上だ。」


「・・・・分かりました。」


本当はいますぐにでも捕縛して後顧の憂いを断ちたかったが婚約者(アルクエイド・ロザリオ)からの忠告となれば渋々ながら了承するしかなかった。それから数日後、アシュリーはアルクエイドの屋敷に赴いた。表向きは御茶会であるが、実際はシェズに関する事である。席についたアシュリーは開口一番に尋ねた


「閣下、どこまで御存知なのですか?」


「・・・・奴の正体までだ。」


「・・・・そうですか」


アシュリーはガッカリした表情で俯いていた


「アシュリー嬢、奴を捕縛したい気持ちは分かるが、私を信じて待ってほしい。如何せん相手は金貸し、その手下も見るからに盗賊上がりの連中ばかりだ。」


「・・・・はい、閣下にお任せします。。」


「そうか、なら良いのだが。」


「旦那様。」


そこへジュードが現れ、何やら困ったような表情を浮かべていた


「どうした?」


「はっ、旦那様に御会いしたいという者が尋ねてきまして・・・・」


「アポ無しか。日を改めて尋ねるよう伝えよ。」


「いや、それが・・・・」


ジュードはアシュリーの方をチラ見した


「アシュリー嬢、すまないが少し席を外す。」


「は、はい。」


アルクエイドは席を立ち、人気のない場所へジュードを連れていき尋ね人の事を尋ねた


「誰が来たんだ?」


「ポスト・ロイヤルです。」


ジュードの口から「ポスト・ロイヤル」と聞いた瞬間、耳を疑い再度、尋ねた


「すまん、もう一度言ってくれ。」


「ポスト・ロイヤル・・・・お尋ね者のシェズが参りました。」


「な、何。」


何と大胆不敵な行動を取ると思ったが流石にアシュリーがいる前で会うわけにはいかない


「先方にはこう伝えよ、客人がいるため日を改めて尋ねよとな。」


「畏まりました。」


ジュードにそう命じた後、アシュリーの下へ戻ると何やら心配そうな顔でアルクエイドを出迎えた


「閣下、何か遭われたのですか?」


「いや、何でもない。」


「閣下。先程、ジュードが私の方を見ておりました。私に関係する事でしょう。どうか正直、仰って下さい。」


アルクエイドは迷ったが、いずれ知る事になるため正直に話すことにした


「分かった。取り敢えず落ち着いて聞いてほしい。先程、尋ねてきたのはポスト・ロイヤル、シェズと言った方が早いな。」


「な、何ですって。」


「ジュードに命じて日を改めるよう申し付けたがな。」


シェズが来たと知ったアシュリーの心中は沸々と怒りが込み上げた。お尋ね者の分際で自分の婚約者(アルクエイド・ロザリオ)の家を尋ねた。その大胆不敵な行動に自分自身も侮辱されたような気分になった。アシュリーの表情こそ出さなかったものの鬼気迫る雰囲気を醸し出していた事に気付いたアルクエイドはアシュリーを宥めつつ忠告をした


「アシュリー嬢、私は気にはしておらぬ。私が最も恐れているのはアシュリー嬢がシェズの毒牙にかかる事だ。」


「・・・・閣下。」


「奴の目的は何なのかは分からないが、くれぐれも早まった事はしないでほしい、この通りだ。」


するとアルクエイドはアシュリーに向かって頭を下げた。アシュリーは先程の怒りが消え、アルクエイドに頭を上げるよう説得した


「閣下の言う通りにしますので、どうか頭をお上げ下さい!」


「分かってくれるか、アシュリー嬢。」


「はい、閣下の仰る通りに致します。」


「ありがとう。」


その頃、ジュードはシェズに対して日を改めて尋ねるよう伝えた


「旦那様は大事な御客人と御面談の最中にございます

、日を改めてお尋ねください。」


「そうですか、なら仕方がない。なればいつ頃、御予定が空いてるかお教え願いとうございます。」


「旦那様は御多忙故、いつになるかは分かりません。もし空いている御時間があれば御連絡致しますので御待ちのほど。」


「承知しました(相変わらずムカつく野郎だ。)」


金貸しになったポスト・ロイヤル(シェズ・アルバート)はガルグマク王国有数の大金持ちであるロザリオ伯爵家と誼を通じようと考えており騎士だった頃、互いにあまり接点のないアルクエイドに融資を行い、成功すれば互いにウハウハ、失敗しても没落寸前まで金を絞り取ろうと考えると同時にアルクエイドの婚約者であり、元主の令嬢であり、初恋の相手だったアシュリー・ゴルテア侯爵令嬢とは直接会わずに外で取引をする事でばれずに済むと思って、アルクエイドに接近しようとした


「まあ、いい。他の金貸しを亡き者にすれば、ウチに頼るしかない。」


シェズの考えている事は当然、アルクエイドによって見破られておりシェズが金で雇ったチンピラを使い他の金貸しを亡き者にしようとした瞬間、隠密によって暗殺されるか、警備隊に突きだした。取り調べによりチンピラはというと高額な報酬に釣られてやったけど、雇い主の名前も顔も知らないとの事である


「くそ!」


アルクエイドは懇意にしている良心的な金貸したちに警備はしっかりした方が良いと忠告した。金貸したちもポスト・ロイヤル(シェズ・アルバート)が現れて以降、不穏な空気を察知し腕利きの用心棒を雇って身辺を警備を厳重にしたおかげで迂闊に近づく事ができなったのである


「くそ!またしても!」


シェズは苛立つあまりに物を壊しまくって部屋は散らかっており、子分たちはいつも掃除させられる事に不満を抱きつつ、作業を続けた


「こうなったら(アルクエイド・ロザリオ)の経営する店に片っ端から融資の取引をするしかない!」


シェズはアルクエイドの経営している店等に融資の取引を持ち掛けたが、アルクエイドから事前に【ポスト・ロイヤルからの融資は受けるな】と通達しており、店側もアルクエイドの許可がないとできないと断られ、シェズは「またしても奴か」と心の中で毒づき、再び物に当たるのであった

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