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第十一話:悪堕ち

ガルグマク王国にて一つの婚姻【ゴルテア侯爵家♡ロザリオ伯爵家】が正式に結ばれ、アルクエイド・ロザリオ伯爵とアシュリー・ゴルテア侯爵令嬢の婚約が世間に注目を集めたのである。2人の婚約が社交界に知れ渡ると新旧問わず貴族たちから次々と祝賀と祝いの品が両家に届けられた


「これはスゴいな。」


「左様にございますな。」


「何をのんきな事を言っているの。アルクエイド、返書はちゃんと作成しなさい。」


「分かっておりますよ、母上。」


アルクエイドは母に促され、腕が疲れるほどの返書を作成した。作成している間も祝賀と祝いの品はゾクゾクと屋敷に運び込まれていく


「(いつまで続くのよ!)」


一方、ゴルテア侯爵家も同様に祝賀と祝いの品が続々と運ばれた。当主であるクリフ、跡継ぎであるレオンは必死に返書の作成に取り掛かった


「父上、腕が痛いです。」


「我慢しろ、返書を疎かにするようではゴルテア侯爵家の名折れだ。」


「は、はい。」


祝いの品が列をなして運ばれていく様子を見ていたアシュリーは改めてアルクエイドと婚姻を結んだ事を実感していた


「閣下と婚姻を結んだだけでこれほどの品が運ばれるなんて・・・・」


「それほど我が家とロザリオ伯爵家の影響力があるということよ。」


「お母様。」


そこへアシュリーの母であるエリナが現れた。エリナ曰く「ゴルテア侯爵家とロザリオ伯爵家は歴史ある由緒正しい家柄、それ故に影響力は大きく王家すら無視できない」との事である


「ゴルテア侯爵家は昔ほどの勢いはないけれど創業以来の名門で王家とも縁が深く影響力は強大、ロザリオ伯爵家は現当主であるアルクエイド殿の代で家格を盛り返し【ロザリオ伯爵家中興の祖】と呼ばれるほどに至った。旦那様がロザリオ伯爵家と縁組を結びたいと前々から考えていたわ。」


「お父様が・・・・」


「アシュリー、くれぐれも誤解はしないでちょうだい。確かに家の存続を優先していたけれど、旦那様なりに貴方の幸せを考えていたわ。私も最初は成金で女遊びの激しいと評判のアルクエイド殿が相手だと聞かされた時は反対したわ。でも貴方がアルクエイド殿と交際していくうちに徐々に良好な関係を築くだけではなく、アルクエイド殿が女遊びをしなくなったと聞いた時は私も耳を疑ったわ。結果としては、これで良かったと思っているわ。」


「お母様。」


「アシュリー、貴方はゴルテア、ロザリオの両家を繋ぐ架け橋となったわ。両家の繁栄のためにも貴方には頑張って貰わないとね。」


「はい!」


アルクエイドとアシュリーの結婚は王都だけではなく王都外にも広がっており、逃亡中のシェズの耳にも届いたのである


「おい、聞いたか。ゴルテア侯爵家の令嬢とロザリオ伯爵家の伯爵との結婚。」


「あぁ、ロザリオ伯爵家の恩恵を受けた平民も多いからな。どこもお祭り騒ぎらしいぜ。」


「確か伯爵と侯爵令嬢の歳の差は10歳程らしいぜ。」


「だとしたら伯爵は若くべっぴんな娘と結婚できるという事だな。」


「羨ましいぜ。」


「まぁ、俺たち平民にとってはどうでもいいことだけどな。」


「そうだな、アハハハハ!」


「(アシュリー、結局は愛よりも金目当てだったのか!)」


酒を飲んでギャアギャア騒ぐ客を背にシェズは変装をし偽名を使いながらひっそりと暮らしていた


「ところでよ。最近、ここいら治安が悪くなったな。」


「あぁ、何でも旅人や行商人や旅の僧侶を襲って金品を巻き上げているんだってよ。」


「山賊たちか?」


「いや、目撃した奴の証言じゃあ、相手は一人なんだってよ。しかも凄い剣の使い手らしいぜ。」


それを聞いたシェズはビクッと体を震わせ、冷や汗をかいた


「(まさか目撃者がいたとは、迂闊だった。)」


犯罪者となったシェズは金が無くなると旅人や行商人や僧侶を殺し、金目の物や食糧を奪っていく生活を送っていたのである


「例の脱走兵も捕まってねえし、物騒だな。」


「もしかしたらその脱走兵が旅人等を襲ってんじゃねえのか?」


「だとしたら捕まえて賞金をいただきだ!」


野次馬が脱走兵(シェズ)の捕縛で盛り上がっている一方で鬱屈した思いを抱えたシェズは金を払ってその場を退散し、そのまま人気の無い山道(仕事場)へ向かうとそこには先客なのか山賊の一団がいた


「テメェか、俺たちの仕事を横取りした野郎は!なますのようにしてやろうか!」


山賊のリーダーらしき、いかつい男はシェズに恫喝し始めた。当のシェズはというと「・・・まれ(小声)」と答えた


「ああ、何て言ったんだ!」


「黙れって言ったんだ!ゴラアアア!」


シェズは一気に剣を抜き、電光石火の早さで山賊のリーダーを切り捨てた。リーダーは何が起こったのか理解できず、目の前に血しぶきが舞っていた事で自分が斬られたと悟り、そのまま絶命した


「か、頭!」


「やりやがったな!」


「この野郎!」


「・・・・おい。」


「「「「「ビクッ!」」」」」


「俺は今、気分が悪いんだ。邪魔すんならお前らもこいつのようにするぞ。」


シェズは底冷えするような声で山賊の手下たちを脅した。手下はというとシェズの鬼気迫る雰囲気にのまれ降参した


「お、俺たちの完敗でさ!」


「今日から貴方様を頭に仰ぎます!」


「頭、どうかお願いいたしやす!」


山賊の手下たちはシェズに精一杯の命乞いをした。シェズはというと山賊たちが自分に跪いている姿を眺め、不思議と高揚感が湧いた


「いいだろう、今日からお前らは俺の手下だ。」


「「「「「へへっ!」」」」」


「か、頭のお名前を教えてくだせえ!」


「俺か・・・・俺の名はポルト・オーガスだ。」


シェズ改め、ポルト・オーガスはオーガス盗賊団が結成した。オーガス盗賊団はゴルテア侯爵領やロザリオ伯爵領以外の領土【特に近隣の村や集落】を襲った


「全て奪い尽くせ!食糧も金も女もだ!」


「「「「「ヒャッハー!」」」」」


盗賊たちは金目の物や食糧を盗み、人妻や若く美しい少女を徹底的に犯し、飽きたら奴隷商人に売り払い金を貰う生活を送った。ガルグマク王国側も騎士たちを派遣したが、地の利を生かして逃亡したのである


「お頭、今日も大金を手に入れやしたぜ!」


「これで娼館にも行きやしょうか!」


「アホ!これは軍資金だ。」


「軍資金?戦争でも起こすんですか?」


「アホ!そうじゃねえよ!取り敢えずお前ら、耳を貸せ。」





とある貴族の領地にてある一団【高価な服を着た役人&騎士の一行】が訪れた。その一団は貴族の屋敷に入った。因みに屋敷の主人は今、王都におり管理しているのは家令である


「私は畏れ多くも陛下に仕える侍従である。貴殿等の家では御家騒動が起こっているとお耳にしてな。」


御家騒動という言葉を耳にした家令はビクッとなった。実際にこの家は妾が生んだ長男&次男、正室が生んだ嫡男(三男)による跡継ぎ問題が浮上していた。役人は続け様に「もしこの事が陛下のお耳に達すれば御家はお取り潰しなりますぞ」と脅した


「し、しかしこの事は王都にいる我が主に知らせませぬと!」


「事は急を要します、私にお任せすれば万事解決致します。」


「ど、どうすれば。」


「簡単な事、陛下への付け届けを出せば宜しい。多少、色をつけてな。」


「は、はい。」


「宜しい(ふふふ、上手くいったわい♪)」


役人の正体はポルト・オーガスこと、シェズである。シェズは子分たちに各地の様子を調べるよう言い付けた。問題のある貴族の家を探し出したところを国王に仕える侍従の一行だと偽り、家の問題点を指摘し、それを解決するために付け届け(賄賂)を贈るよう揺すっていたのである。貴族の当主と夫人は普段は王都に在住しているため留守でいる事が多く、地方に住む家臣も国王の側近の顔を知らないため、容易く金を手に入れる事ができたのである。貴族の家に仕えていたシェズはその事情を理解した上での計画的犯行を行ったのである


「では、これで宜しくお願いいたします。」


「私に万事お任せあれ。」


貴族の領地を出た後、シェズは子分たちも共に歓喜に満ち溢れていた


「頭、上手く行きやしたね!」


「まさか貴族の家相手に揺するなんて考えた事すらねえよ!」


「俺、スカッとしたぜ!」


「ふふふ、俺に任せとけば金は容易く手に入る。この調子でどんどんやるぞ!」


「「「「「オオオオオオ!」」」」」


この後にその金で立派な屋敷を購入、シェズはポスト・ロイヤルと名を改め、表向きは金貸しとして活動した。子分と共に美味い物を食い、女を侍らせ、さながら貴族と同様の暮らしをしていたのである


「(ふふふ、チョロいや。)」


シェズは我が世の春を謳歌するのであった





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