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甦る国、疑惑のフェニックス


 トラックが腕輪を格納すると、死城から生えていた巨大な花と石像は崩壊を始めた。


 崩れ落ちる残骸は灰のように脆く、地表へと落ちると粉々となって大気中に舞った。


「これじゃあ街が生き埋めになっちまうんじゃねーのか?」


「お兄ちゃん大変! 何とかしないとっ!」


「シルフ殿の力で吹き飛ばしましょうか?」


「五十鈴ちゃん無理言わないでよ……僕はもうヘトヘトだよ……」


 上空に佇むトラックの中で3人と精霊2人がその様子を見下ろしていた。


「おや? どうも様子がおかしい……大地に力が満ちてくる……」


 地の大精霊ノームが首を傾げた。


「ノーム殿、それは一体どういうことでしょう?」


「解りません。ですが思うに、数多の命を吸い上げたオーバーズが残したあの灰こそ、命の結晶とも呼べるものなのでは?」


「「!!」」


 驚く一同のもとへラグナが近付いて言った。


「ノームの言うことも強ち間違ってはいないかもね」


「ラグナ! 何か知っているのか?」


「いいえ? でも見て。花だった部分の中心、死城だった場所が灰で盛り塩みたいになってるでしょう?」


「盛り塩って、縁起でも無いことを言うなよ」


「でも、その中に物凄く大きな力を感じるのよ」


「止めてくれラグナ。もうこれ以上、一体何と戦えって言うんだよ」


 そこへダイナも近付いて来て言った。


「大丈夫だよご主人様。多分そんなに悪い存在じゃないと思うよ。優しい感じがするもん」


「そうなのか? それじゃあ一体……」


 一同の視線が山のように積った灰に向かう。その時、その灰の山の中で何かが動き、振動によって灰が流れるように動き出した。


「ねぇお兄ちゃん。私思ったんだけど、灰の中から生まれて命に関わる存在って聞いて、何か心当たりが無い?」


「ああ、もしかしてファンタジー世界で稀に良くあるアレだな?」


「そうそう! それっ!」


「運殿? 久遠殿? 一体それは何なのですか?」


 首を傾げる五十鈴に2人は得意げにになって答えた。


「「フェニックス!!」」


 その瞬間、2人の言葉に応えるように1羽の大鳥が灰の中から空へと飛び上がった。


「「やっぱり不死鳥フェニックスだっ!!」」


 感嘆する運と久遠の目の前を超えて更に高く飛び上がった不死鳥は太陽を背に大きく羽を広げた。するとシの街を埋め尽くしていた灰は全て宙へと吸い上げられ、不死鳥の周りを暫く回った後、霧散するように地平線の彼方まで遠く広がって行った。


「何だったんだ、今のは……?」


「灰が、国中に広がって行ったみたいだけど……」


 運と久遠は太陽の光を反射して煌くその灰を見ていた。


「運殿、久遠殿……地上を見てください……信じられません」


 五十鈴が震える声で言った。そして釣られるように視線を降ろした運と久遠も言葉を失った。空から降り注ぐ灰の粒子を浴びたアンデッド達がたちまち肉体を取り戻しつつあるばかりか、その大地にさえ草木の色を与えていたのだった。

挿絵(By みてみん)


「ご主人様! 凄い、凄いよ! こんな奇跡ってないよっ!!」


 喜びの余り飛び上がったダイナはトラックに飛び込んでその躯体を激しく揺らす。


「本当に凄いわ運ちゃん……30年死の国だったこの国に、命が満ちていく……」


 命の波は、灰の広がりを追うように地平線の彼方まで波紋となって広がっていく。その様子を一同は言葉も無く、ただただ穏やかな表情で見守っていた。


 天からは希望の光が、地上からは歓喜の声が響き渡り、30年闇の中にあったレソツ魔王国は甦った。




 暫くして、大地の再生を終えた不死鳥は緩やかに高度を下げ、呆気に取られる一同を意に介した様子もなく、さも当然のようにトラックの荷台に止まって羽を休めた。


「ん? 何か重くなったと思ったら不死鳥の奴、荷台に乗って休んでやがる。図々しいな」


「まぁまぁお兄ちゃん。大仕事の後なんだし、少しくらい許してあげようよ」


「……と言うより、これはどうも運殿に懐いてしまったとかではないですか?」


「俺、懐かれるようなことをした覚えは無いんだがなぁ……」


「運ちゃんが誕生の原因となったオーバーズの所有者だから?」


「そうかなぁ……?」


 運は首を傾げた。


「あはっ。またご主人様のペットが増えちゃうね~?」


 運は仲間達から向けられる微妙な視線を受けて頭を抱えた。


「ま、いっか。命を司る聖獣を従えたとなれば、暗黒王の汚名も少しは返上できるだろ」


 だがしかし、暗黒王が全国民の命を盾に魔王を殺害し、力づくでレソツ魔王国を手中に納めたとの噂で汚名挽回するのは少し先の話であった。


「さて。この後はどうすっかな~……一応、アルカナに事情を話しておくか」


「そうだねお兄ちゃん。でも、その前に……」


 久遠の目が鋭く光る。


「ダイナちゃんは全速力でアンに直行っ! ゾエちゃんに頼んで飛空挺で戻って来てっ! 支援物資を沢山持って来ないとっ! これから大忙しだよっ! レソツ魔王国の復興は最優先事項だからねっ!?」


「ハ、ハイッ! 解ったよ久遠さんっ!」


 ダイナは条件反射のように身を引き締める。


「流石は久遠殿。いくら甦ったとは言え物資が不足していますからね……激戦の直後にも関わらずそのお心遣い、まさに聖女様と呼ぶに相応し……」


「あはっ! 絶好の好機チャンス、ここでたっくさん恩を売っておけば……くふっ」


「「……」」


 その場の誰しもが表情を失った。


「私がこの国をエターナルホーリーしてあげるんだから。あははっ!」


「「……思うがままに?」」


「いっくよ~! エターナルホーリー!」


 しかし偶然か、それと同時に不死鳥が荷台の上で大きく羽を広げて咆哮したのであった。


「なぁ~んちゃって! あはははっ!」


「……そう言えば、不死鳥の力ってエターナルホーリーに似ているような……?」


 運が言った。


「更にそう言えばあの腕輪、久遠殿のエターナルホーリーを浴び続けてましたよね……?」


 五十鈴が続いた。


「もしかして、不死鳥が懐いたのは、と言うよりむしろ誕生した原因は……?」


 ダイナは首を傾げた。


「運ちゃんじゃなくて……?」


 ラグナは目を閉じた。


「「この人なんじゃ……?」」


 こうして疑惑の不死鳥は甦ったレソツ魔王国と共にエヒモセスに生を受けた。


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