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ネコ耳王女様ニャ


 トラックはカヨタ獣王国に入り暫く北上した。


「お兄ちゃん、やっぱり舗装されてない道だと大変?」


「実は適度にスキルホバークラフトを使って衝撃軽減しているんだ」


「やはり運殿の運転技術は凄いですね。私もようやく自動車の免許を取りましたが、そのせいか良く解ります」


「お、それじゃあ五十鈴、ちょっと運転代わってみるか?」


「いやいやいや、まだ大型免許は持ってないですから」


 等と雑談を盛り上げながら首都カヨタに近付く頃、ドンと何かがトラックにぶつかる音がした。


「何かぶつかった? お兄ちゃん」


「いや、何かが荷台の上に落ちて来たように感じたが……一度降りて確かめてみるか」


 3人がトラックから降りて荷台を見上げると、そこには警戒色露わな獣人族の女が1人立っていた。女は荷台から軽やかに飛び降り、運達に迫った。


「こんな所に不審なトラック、ダンナ達、いったい何者ニャ~?」


「どうする久遠」


「もうお兄ちゃん。事前に話してあったでしょ?」


「すまん、忘れちまった」


「ぶー」


 久遠は呆れたように首を振って、3人を代表するように前に出た。


「初めまして。私は久遠、帝国の聖女と呼ばれている者です。そしてこちらは仲間の運と五十鈴。運は現在、勇者の称号を保持しています」


 獣人族の女は警戒を解かないまま、返答として姿勢を正して名乗った。


「それは申し遅れたニャ~。私はアクトロス。カヨタ獣王国の獣王、ベンツ・メルセデス13世の娘だニャ~」


「「王女様!?」」


 3人が驚くとアクトロスは困ったように顔を顰めた。


「その呼び名は止めて欲しいニャ。性に合わないのニャ~」


「だろうな。そんな身分でこんな所に1人でいる方が変だ」


「ニャハハ~。1人ではないけどニャ~」


 アクトロスが指差す方角から遅れて駆け寄ってくる数十人の獣人族の姿があった。


「首都に向かう怪しいトラックがあると聞いて、部下を連れて来たのニャ」


「全然ついて来れてないようだが?」


「ニャハハ~、そんなことはどうでも良いニャ。それより、運にゃん達はどうしてカヨタ獣王国まで来たのニャ~?」


 それに対して久遠が再び前に出る。


「私達は勇者と聖女のパーティです。魔王討伐のため貴国を通過する旨、通達済みですが」


「それはもう随分と前の話ニャ~」


「少し準備に手間取っただけです」


「それに、勇者パーティは全滅したと聞いているニャ~」


「現にこうして生きています」


「それを証明するものはあるのかニャ~?」


「キャンター枢機卿から書簡を預かっています」


 そう言って久遠は一通の書簡をアクトロスに差し出した。


「なるほどニャ~。どうやら間違いないようニャ」


 サインに目を通してアクトロスはようやく警戒を解いた。


「疑ってごめんなさいニャ~。貴方達を歓迎しますニャ、カヨタ獣王国へようこそニャ~」


「有り難い話だが、偉く簡単に信じてくれたもんだな。帝国側の書簡なのに」


「相手がキャンター枢機卿なら話は別ニャ~。あの人はトラ仙人様のお弟子さんだからニャ~」


「「トラ仙人!?」」


「ニャ? 老師様のお知り合いだったのかニャ~?」


「いや、違うんだ。実は俺達は……」


 運達はアクトロスに事情をかいつまんで説明した。


「なるほどニャ~。それなら、老師様には私が取り次ぐニャ~」


「それは助かるな、ありがとう」


「ニャんの。こちらも魔王討伐は最大の課題。協力は惜しまないニャ。尤も、本当に魔王を討伐できるかは……女性を侍らせて、見た目も強そうには見えないしニャ~?」


「ほっとけ」


「まぁ良いニャ~。まずは案内するニャ。老師様は首都カヨタの郊外に住んでいらっしゃるのニャ~」


 こうしてトラックはアクトロス先行のもと、トラ仙人の元へと向かった。


「しかしトラックを先導するニャんて、獣人族の身体能力はハンパじゃないニャ」


「お兄ちゃん、口調が移ってるニャん」


「お前もニャ」


 ふざけ合う運と久遠を余所に五十鈴は冷静にアクトロスの様子に目をやっていた。


「耳の形からするとネコ科……でしょうか?」


「「語尾で気付けよ」」


「う……。しかし、狩りとかが得意そうな種族なのは間違いありませんね」


「アクトロスの場合、少し天然入ってそうなところは狩りに向かなそうだがな」


「運殿もああいう猫耳が好みだったりするのですか?」


「いや俺は何も言ってねー」


「五十鈴さん。お兄ちゃんのことは二人でしっかりと見張っておこうね!」


「はいっ!」


「ほれ、そうこう言ってる間に着いたようだぞ」


 アクトロスが立ち止まって振り返ったので運はトラックを収納した。


 目の前にはこじんまりとした和風の一軒家が建っており、表札には「黒金くろがね幼司(ようじ)」と漢字で書かれていた。


「着いたニャ~。ここが……」


「「トラハウス?」」


 運と久遠の声が重なった。


「なぜ知ってるニャ!?」


「「ニャんとなく」」


「やるニャ……」


 アクトロスは妙に関心しながらトラハウスのドアをノックした。


「老師様! アクトですニャ~。お客さんを連れて来ましたニャ~」


 しかし返事は無かった。


「留守かな?」


 久遠が言った。


「老師様は御歳を召されているからお耳が少し遠いニャ。もう暫く呼びかけてみるのニャ」


 呼び掛けを続けるアクトロスを見て、運は久遠と五十鈴に漏らした。


「どうして一国の王女様があんなに慕っているんだろうな。トラ仙人って言っても、表札を見るに俺達と同じ異世界人だろ」


「私、聞いたことあるよ。イロハニ帝国がカヨタ獣王国と争っている時、敵方にとんでもなく強いトラックがいるって。もしかしたら守護者的な立ち居地なのかも」


「一国の軍隊と渡り合ってしまうトラック……一体どんな方なのでしょう?」


 と五十鈴が言った時、4人の後ろからプップーと軽快なクラクションが聞こえてきた。


 振り返ればそこには小さく可愛らしい、年代物の軽トラックが1台佇んでいた。


「老師様!」


「「え!?」」


 アクトロスの反応と、想定と掛け離れて貧弱そうなトラ仙人の風貌に3人は驚いた。


「なんか普通の好々爺だな。間違いなくトラ仙人ではなく、普通の黒金幼司さんだ」


「でも待ってお兄ちゃん。虎の毛皮を着込んでいるだなんて、いかにもトラ仙人過ぎて普通じゃない!」


「いずれにせよ、只者ではないですね……」


 良し悪し入り混じる3人の猜疑的な視線を全く気にした様子も無く、トラ仙人はゆっくりと軽トラから降り、堂々と第一声を発した。


「ハロー!」


 意外と陽気なお爺ちゃんだった。



いつもお読みいただきありがとうございますニャ。


仙人と言ったらカメさんですよね。

第一声からそんなイメージです。

次回、「トラハメ波」

……嘘ニャ~

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