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ゼロとイチの大地  作者: 椎名焦茶
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第4章「怒っている人をなだめるのは面倒くさい」

 電子世界へとダイブしたケンゾーは、待機していたピータに、また攻撃を受けてしまった場合を考え、絆創膏タイプのワクチンをマウントし、ヨシヒロの携帯に向かった。

 大容量通信網の発展により、現在はペタバイトでの通信が標準になりつつあるので、比較的容量の大きいケンゾーとピータでも、移動は快適だった。

 途中、一部バグっているサイトを見かけたが、あの程度ならサイト管理者が修正可能だろう。金儲(かねもう)け第一のエリミネータなら、サイトを訪問し、バグっている事を告げ、高い報酬でメンテナンスをするだろう。

 そんなこと…面倒くさいと思ってしまうのはケンゾーらしいところだ。

 ケンゾーはヨシヒロの携帯までの道すがら考え事をしていた。『あのウィルスのプログラマーを一発殴りたい。』

 油断したとは言え、攻撃を受けダメージを負った。一歩間違えば脳死の可能性もあった。また、ウィルスの感染活動に目的がない。

 バックアタックゲートは、通常、企業の開発データなどのシークレット情報を継続的に盗む場合に使用される場合が多く、手当たり次第に感染させるようなウィルスではない。

 単純に自分の作ったウィルスを見せびらかすのが目的か、困らせるのが目的にしかおもえない。それが気に入らない。

 なにより、刺されて痛かった。

 殴りたい理由はそれで十分だ。 そんな事を考えているうちにヨシヒロの携帯に到着した。内部に進入し、すぐに【電話帳】の陰にウィルスを見つけた。

 ウィルスは盗み出したデータをどこかに送信中だった。

「ピータはデータを追尾!てめー!刺したお返しだ!」

そう言ったケンゾーはウィルスに向かって走り出した。

一歩で4〜5メートル進んでいるように見える。走るというよりまさに“跳ぶ”(とぶ)と言った方が正しいかも知れない。ケンゾーは右腕を振り上げると、そのまま勢いに任せてウィルスを殴った。『グヮーン!バキバキ!』

 ウィルスはまた一瞬ブレて、殴った場所から大きくひしゃげ、割れるように二つ折りになった。そして割れた部分が紅色(あかいろ)に発色し形状が崩れだし、最後には『ピシュン』と消えた。

「おい!コピーしたんだろ!出てこいよ!」

その声が聞こえたのか、ウィルスは【メール】の陰から姿を現した。

「ほんっと面倒くせーな!マジでムカついたわ!」

そう吐き捨てて、走り出した。

 ウィルスは目の前の【電話帳】に例の針を突き刺した。ケンゾーの前にある【電話帳】から針が飛び出した。

 しかしケンゾーは、走るスピードをゆるめず、猛スピードで伸びてくる針を左手で払うと、鮮やかな虹色の波紋が広がった。

「何度も食らうかバーカ!」

 そのまま走り込むと再び怒りの鉄槌(てっつい)をウィルスに入れた。 その瞬間やはりウィルスはブレた。

「あーコピーは無理!俺とお前のいる5メートル四方の空間をロックしたから!空間内のデータは変更不可能だからコピーとかできねーの!」

 ウィルスはコピーをしようと、何度もブレた。

「これなーんだ!」

 ポケットから取り出した水晶珠(すいしょうだま)のような物体のなかで薄いエメラルドグリーンの液体状のものが揺れている。 それをウィルスに投げつけた。

 ウィルスは反射的に触手を伸ばして水晶珠を突き刺した。

『パンッ』水晶珠はまるで風船のように割れた。しかし中のエメラルドグリーンの液体は飛び散らずに、突き刺した触手からウィルスの内部に吸収されていった。

「はい。終了!それワクチンだから。空間のロック解除したらワクチンが効いてくっから」

 ケンゾーは間髪入れずに空間のロックを解除した。ウィルスは悪あがきに、ケンゾーめがけ触手を突き刺したが、すでにワクチンはウィルス全体を無力化しており、触手はケンゾーの鼻先で止まり、その先端から紅く光り、消えていった。

「ざまぁ!」

『ピシュン』とウィルスが消えたタイミングでピータが戻ってきた。

「お疲れピータ。送信先見つけた?」

『何度か関係ないサーバを経由しましたが、最終的なサーバを見つけました』

「関係ないサーバ?目眩(めくら)ましか?そんなのピータには関係ねーし!結局ピータにマウントしたワクチン使わなかったなぁ」

『ピュ』

 ケンゾーとピータはウィルスのプログラマーが使用してるであろうサーバへと向かった。

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