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ゼロとイチの大地  作者: 椎名焦茶
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第2章「ウィルス退治も種類によっては面倒くさい」

 ケンゾーは牽引けんいんしていたアルミボートトレーラーを自宅前に切り離し、今はヨシヒロの住むマンションにいた。

 マンション入り口のインターホン前に来て10分。

「えーと…あいつ…何階だっけな?50…」

 目の前には見知らぬ者の進入を拒む自動ドアが、音声認証システムと網膜認証システムをこちらに向け準備万端で『どうぞ!』とばかりに入力を待っている。

「あー、ほんっと面倒くせー」

 ケンゾーが帰ってしまおうかと思い始めた頃、唐突に自動ドアが開き、天井に設置されたスピーカーから聞きなれた声がした。

「よーケンゾー、入り口で何やってんだよ。不審者に間違われるぞ」

「ヨシヒロか?お前起きてたのかよ!ならさっさと入り口開けろっての!面倒くせーな」

「いま起きたんだよ。だいたい着いたら起こせって言っただろ。いーから、早く上がって来いよ」

「お前の部屋って5606…だったよな。05だっけ?」

「6508だって!全然違うだろ」

 ケンゾーは、今度は『いらっしゃい』と開かれた自動ドアを入ると高速エレベーターに乗りこみ、65階を押した。

すぐさまエレベーターは65階へ向けて登り出した。その速さは体感できないが、およそ10秒足らずで65階まで連れていってくれた。

 エレベーターを降りてからヨシヒロの部屋までは、なぜか竹垣があったり、赤茶色のレンガの塀が並んだりで、天井が無ければ、マンション内の通路とは忘れてしまいそうだ。まるで古都の裏道でも歩いている気分になる。その裏道を歩いてヨシヒロの部屋に着いた。

「おーい」

「おぉ入れよ」

『ピシュン』と玄関の扉が開き、ケンゾーは勝手にあがり、まっすぐリビングに入った。

「勝手に座ってろよ」

「ん、あぁ。ほい、おみやげ。」

「なに?」

 ケンゾーはおもむろに携帯用クーラーバッグから魚を取り出し、ヨシヒロに差し出した。

「うわっ!なんだなんだ?ブラックバスか?本当に持って来たのか!しかもさばいてある」

「食わせるって言ったろ。決まりで生きたまま別の場所に持って来るわけにいかないから、ボート上で捌いてきた」

「これならすぐに料理できるな。ムニエルにでもするか。食ってくだろ?」

「あぁ」

最初からそのつもりだ。

「それより携帯は?」

「テーブルの上」

 ケンゾーはヨシヒロの携帯を手に取ると、首にかけたヘッドギアのコードを携帯のジャックにつなぎ、ヘッドギアを装着した。

 装着と言ってもヘッドホンをかけるようにヘッドギアをかけるだけだ。見た感じは音楽を聴いているのと変わらない。

「ちょっと見てくる」

 ケンゾーはそう言うと、集中しデジタルの世界に意識を跳ばした。一瞬でケンゾーの姿がデジタルで形成された。

「ようピータ。昼間はありがとな」

軽く右手を挙げた。

「ピュ」

ヨシヒロの携帯でピータは待っていた。

「それじゃピータ。ウィルス?バグ?」

ピータの頭上に吹き出しが表示され『ウィルス!』の文字が点滅し表示された。

「あーそ。タイプは?」

『バックアタックゲートタイプ!』

再びの点滅文字。

 バックアタックゲートタイプとは、ウィルス自身をコピーして感染を広げつつ、感染する際にデータを盗もうとし、感染したらその機械のデータを特定の場所へ送信し、更に正規のアクセス以外に特定のアクセス方法で外部からデータを見る事ができるようにしてしまう。つまり【裏口】を作る。なおかつ、自分を削除しようとするプログラムには、攻撃してくるという、何とも面倒くさいウィルスだ。

「えーバックアタックゲート?面倒くせー。裏口だけふさいで終了にするか?で、ピータそいつどこ?」

 ピータの案内で【メニュー】に入ってみると【セッティング】と【電話帳】の間にそれはいた。

 あかくボーッと光るウィルスをみてケンゾーは『いかにも悪い事しそうだなぁ』と思いニヤリとした。

「ピータ。俺腹減ったから飯食ってくるわ。今はウィルスも休憩中みたいだし」

そう言うとケンゾーはヘッドギアをはずしリアル世界に戻ると、勝手にテーブルにつき、ブラックバスのムニエルの完成を待った。

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