ギルドと適性試験
起床。
毎日こんな夢を見させられるのは正直勘弁してほしい。
宿題を催促されてるような気分だ。
しかも、俺の場合は白髭の言う通りに宿題をしてるのにあれがダメだ、これがダメだとか言われるので尚の事腹立つ。
またあいつが出てくるのも癪なので一応それっぽい行動をとっておけば何も言われないだろう。
ギルドに行って討伐者っぽいことでもしておこう。
ちゃんとやってますよってところを見せたら何も言ってこないだろう。
俺の行動はあいつに監視されてるみたいだから報告とかもしなくて明日にでもあいつは出てこなくなるはずだ。
今日は店が休みなので丁度いい。
できることは今日中に済ませておこう。
また昨日と同じようにカエデさんにギルドに行くことを伝えにいった。
「カエデさん、またギルドに行ってきますね」
「え、また行くの?ちょっとだけ待ってて」
「?わかりました」
また10分後、カエデさんは昨日と違う服装で部屋から出てきた。
「今日のこの服はどうかな?」
だから、ちょっとだけって言うなら本当にちょっとだけにしてくださいよ。
10分は普通に長いから!
「綺麗ですよ。カエデさんは何でも似合いますね」
褒めて欲しんでしょ?
これで満足ですか?
「どこがどういう風にいいかちゃんと言って」
見透かされてしまった。
当然だ、適当な表情で適当な返しをしたらそりゃバレるってもんだ。
カエデさんは昨日とはうって変わって、少し怒っているかのようだった。
「そうですね、服を着こなしてるって感じがしますね。自分に似合う服をしっかり理解してるっていうか、男性にモテそうですね」
これで文句あるまい。
テレビで誰かが言ってたコメントを丸パクリしただけだけどカエデさんには分かるまい。
「エンドューもこの服好き?」
「ええ、大好きですよ」
まあ服と言うよりもかわいい服を着ているカエデさんが好きって感じですけど。
おっと、これは失言でした。
「そっか…わかった…」
今日はどこかにお出かけですか?男と。
頑張ってくださいね。俺はギルドに行くけど。
「じゃあ俺ギルドいってきます」
「いってらっしゃい…」
カエデさんに見送られながら家を出て、ギルドに向かった。
それにしてもカエデさんのファッションショーは一体何だったんだ?
似合ってたし、可愛かったからいいけど。
男とデート行くならそいつに判断してもらったらいいのに。
俺に聞いたってそいつが気に入るかどうかは分からないでしょ?
まあどうでもいいけど。
そんなこんながあってギルドに到着した。
「こんにちは」
元気よく挨拶をかますと、いきなり昨日の鎧の大男が寄ってきた。
「君!昨日トイレに行くと言ってそのまま帰っただろう。どういうつもりだ!」
やっぱりそこを問い詰められるか。
「すいません、用事を思い出したのでそのまま帰ってしまいました。今日こそは試験でも何でもやります」
俺の才能がどのくらいなのかを知っておきたいし、初日から討伐に行かせられることもないだろう。
それっぽいことを言っておけば今後の活動に支障をきたすこともない。
あ、ちなみにレベルがいきなり10とかで討伐者としての才能が抜群とかいうオチはやめてくれよ。
そういうのは別の物語でやってくれ。
勇者になる気のない俺にそういう役は似合わないから。
「まあいいだろう、しかし君には適性試験を受けてもらうよ。これに着替えて準備ができたら僕に声をかけてくれ」
違和感なくここまで来たが、冷静に考えるとおかしいからな。
討伐者の説明を受けに来た奴に対していきなり試験がどうだとか普通ないから。
今日も適当に言い訳をして帰ってもいいが、これ以上面倒を起こすとギルドにいられなくなるかもしれないからとりあえず言うとおりにしておこう。
大男に用意された物はただの上下セットのジャージ。
これなら今の服装でも大して問題ないのでは?
まあこの服もくれるというのであれば、服難民の俺としてはありがたいが。
準備(ジャージに着替え)を済ませると俺は大男に声をかけた。
「着替えてきました。あの、これから何をするのでしょうか?」
「簡単なことだ、モンスター討伐に出てもらう」
いや、モンスター討伐行くんかい。
適性調べるためになんで命張らなきゃいけないんだよ。
「ちょっと待ってください。僕はまだ右も左もわからないんですよ。モンスター討伐なんてできるわけないじゃないですか」
ていうか討伐者になるとすら言ってないからな。
この世界での倫理観、価値観は以前の世界とは違うのだろう。
以前までの常識は通用しないと考えておかないと。
「安心したまえ、比較的危険の少ないモンスターだし、俺もついていくから何かあった時は任せろ」
「そんなこと突然言われても…」
「よし、行くぞ!目的地はハイド鉱山だ」
話聞けよ!
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俺は大男と二人で近くの鉱山まで行かされた。
昨日のこともあったのであまり強く出られないのが辛い。
街の中にある鉱山だったし、ギルドからは10分程度で着く距離にあった。
「この辺りのモンスターは適性試験には丁度いい、まずは何匹か倒してくれ。鉱山の中にも何人か討伐者はいるから安心してくれていい」
いやいや、街の中にモンスターは出ないんじゃなかったのかよ。
誰だ?誤情報を混ぜてきたガキは。
鉱山の近くにはスライムみたいな雑魚敵っぽい奴が数匹いた。
俺は言われるがままにモンスターを討伐することにした。
素手で倒せるし、思っていたより大したことはない。
何かもっと手強いモンスターに通用しないながらも俺の才能でも図るのかと思っていたけど、そうではないらしい。
「君、既に能力を有しているな。どんな能力か教えてもらっていいか?」
数匹倒したところで後ろで見ていた大男は俺の能力の事について聞いてきた。
素手で殴ってただけなのになんで能力持ってることが分かったんだよ。
まあ別にばらしてもいいが自分の手の内を明かすのはデメリットしかないし、無理矢理連れてこられて腹立つしやめておこう。
「すいません、この能力に関しては誰にも明かせないんです」
俺の能力でもないしな。
あんたらに教えたくないしな。
「わかった。詳しくは詮索しないが今後のために大事にするべきだぞ。ギルドの仲間である以上いつかは言ってくれよ」
いつかがくればいいけどな。
「よし、君のデータは大体取れた。これを元に君のレベルを計ろうと思う。俺の予想ではかなりいい成績だと思うよ」
もう終わりかい。
雑魚敵数匹倒すだけでジャージに着替えたりしなきゃいけない意味が分からん。
まあこれで夢の白髭も今日は出てこないだろう。
ていうか今後も出てこなくていいからな。
皆さんの意見や批評など、よろしければ何でも送ってください。
なにぶん素人なので、より面白いものを読者の皆様と作っていけたらいいなと思っております。
よろしくお願いします。