電話と探索
さてと、掃除も終わったし、ジグロードも出したし、特にやることねぇな。
暇だしイカロスでも探しに行こうかな。
そうだ、確かソードはイカロスの孫だったはずだ。あいつに聞けば居場所を教えてくれるんじゃねぇのか。
俺は早速エルドレッドに電話した。
「おう、兄ちゃん。今日はどうした?」
「いきなりかけて悪いな。ソードはいるか?」
「あいつなら今カエデと仕事の話してるよ」
そうか、カエデは仕事のことでソードに会いに行ったのか。
それで夕方までかかるって言ってたのか。てか、あいつエルドレッドの家行きすぎだろ。
「いや大した用じゃないから時間が空いたらかけ直してくれって言っといてくれないか?」
「了解だ」
「ところで、カイトとフォートは元気にしてるか?」
「ああ、毎日バイト漬けの日々だ。あいつらもそろそろ一人立ちしないといけないと思っているんだろうな」
「強面だから苦労しそうだな」
「はっはっは、確かにそうだな」
「じゃあな」
「ああ、またかけ直させるよ」
そう言って電話を切った。
エルドレッドも最初の頃と違って随分とソードと仲良くなったもんだ。
さてと、待ってるだけってのも暇だし、知らないとこにでも行ってみるか。
俺は街に出て今までに行ったことないとこを探索してみた。
俺の言ったことあるとこなんて森林地帯かショップとギルド、あとはアイス屋さんくらいか。
イケメンの家は気に入らないのでノーカウントで。
一応街の外にイカロスはいるみたいだし、街を出てみるか。
俺は、門から街を出て、街に沿ってうろうろしてみた。
なんか異世界のくせに大して面白そうなものがないな。
もっと元の世界と違うところはないのか。
違うことと言えば能力があることと文明が遅れてることくらいじゃないか。
一人で考え事して俺何してんだろ、帰って寝るか。
その時、電話が鳴った。エルドレッドからだ。
「もしもし」
「俺に用とはなんだ」
電話の向こうにはソードがいた。
「ちょっと聞きたいんだけどさ、お前の爺さんの家ってどこにあるんだ?」
「俺の爺さんの家だと?何でお前がそんなこと聞いてくる?」
「爺さんと話すことがあるからさ」
「そんな訳の分からん理由で自分の身内の個人情報を教えるわけ無いだろ、バカか」
いきなり電話を切られた。まぁそりゃそうだわな。
でも他に言いようがなかったし、仕方ない。
するとまた電話がかかってきた。
「もしもし」
「エルドレッドの奴が教えろってうるさい…」
「兄ちゃんには恩があるだろうがよ、つべこべ言ってねぇで教えてやれよ」
「こいつがうるさいから教えてやる。他の奴には言うなよ」
「サンキュー」
エルドレッドの言いなりだな、こいつ。
「門から街を出てずっと西に行け。一軒家が見えたらそこが爺さんの家だ」
「わかった、ありがとな」
「能力や神の事なんかは聞いても教えてくれないからな」
また切られた。
まあ一度会ってみたいだけだし、何かを聞きたいわけじゃない。
一応東門から西に行ってるけど、一軒家なんて全然見当たらないぞ。もっと先にあるのかな。
俺はそこから一時間くらい歩いたが、一軒家どころか草原が続いてるだけだった。
本当にあるのか?本当の事言いたくないから適当に嘘ついたんじゃねぇのか?
その時、突然目の前に家が現れて、中からイカロスが出てきた。
「なんじゃ、追いかけてきおって。貴様とは聖域で散々話しておるじゃろうが」
ここがあいつの家か。豪邸のように広く、外は綺麗で、まさに金持ちが住むような家だった。
なんで急に現れたんだ?
「お前に一度会ってみたかっただけだよ。特に何か言いに来たわけじゃないよ」
「わしはこれから陶芸教室に行くんじゃ。用がなければ帰れ」
神が陶芸教室なんかするんじゃねぇ。
「どうやって家を出したんだ?」
「うるさいの。家は元々あった。移動しながら見えんようにしておったんじゃ。貴様があまりにしつこいから姿を現しただけじゃ。ほれ、はよ帰れ」
夢での立場と逆転してるな。
「家まで来たんだから茶くらい出してくれよ」
「うるさい!帰れ!」
俺は突き飛ばされ、家は消失した。
俺そんなに当たり強くなかっただろ。
やられてないことまでやり返してくんなよ。
まあいいや。そろそろカエデも帰ってる頃だろうし、俺も戻るか。
また、ぜえぜえ言いながら一時間ほど歩いて家に戻った。
明日は店もあるし早めに準備しておこ。店長だし。
家に着くとカエデは帰宅していた。
「おかえり」
「ただいま」
「夕ご飯作ってるからちょっと待ってて」
「待ってるよ」
3分くらいしたら晩飯が出てきた。
「じゃあ食べよっか」
「いただきます」
「今日は何してたの?」
「散歩してただけだよ」
「そうなんだ、そういえばエルドレッドに電話してなかった?」
「うん、ソードに聞きたいことがあって電話したんだ」
「そうなんだ。私はね、ソードさんに仕事について色々聞いてたの。って知ってるよね」
「うん、エルドレッドから聞いたよ。どうだった?」
「そうね、オーナーの仕事って店長の時と比べて全然違うかった。ソードさん、こんなこと一人でやってたんだって驚いちゃった」
あんな態度取るくせに経営に向いてたんだな。
「それと明日も休みにするわ」
「え、なんで?」
「私が行かなきゃいけないとこがあるから」
「それってまたソードのとこ?」
「ううん、街役所よ」
街役所とかあるんだ。まんま元の世界みたいだな。
「オーナーが変わったからそれを伝えに行かないといけないの。一日中かかるから明日の営業は中止にするわ」
「俺一人でも大丈夫だよ」
「仕事自体はそうかもしれないけど、一応、経営者が変わって一か月は経営者が不在だと何かあった時のために営業してはいけないことになってるの」
「そうなんだ、大変なんだね」
「それに私がいないとこでシュウが他の女の子と仲良くするかも知れないし…」
「そんなことしないよ!」
「ホントかな、ハルカちゃんに鼻の下伸ばしてたくせに」
何処で見てたんだよ。
「ごめん…」
「冗談よ。鼻の下伸ばしてたのは本当なんだね…」
しまった。またやってしまった。
「ごめん…」
変な空気のまま夕食を食べ終えた。
「ごちそうさま、いつも通り美味しかったよ」
「お世辞じゃないよね?」
「違うよ、カエデが作ってくれるものは何でも美味しいよ」
「褒めたって何も出ないよ。じゃあ私部屋で仕事してるから何かあったら呼んで。おやすみ」
「おやすみ」
最近一緒に寝れてないな。
いや、前までが異常だったんだ。女の子と同じベッドで寝るなんて付き合ってもないのにやっちゃいけないことだし。
何か手伝えたらいいんだけど店に来てまだ間もない俺にどうこうできるものでもないだろう。
おとなしく風呂入って寝よ。
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なにぶん素人なので、より面白いものを読者の皆様と作っていけたらいいなと思っております。
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