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時を超える  作者: ひばな
イカロス編
19/66

和解と本業

店に帰るとカエデが昼飯を作っていた。


「もう、どこ行ったのよ」

「ごめん、カエデが気持ちよさそうに寝てたから起こすのも悪いかなと思って散歩に行ってたんだ」


なんとなくハルカさんと会ったことは黙っておいた。


「まあいいけど!」


怒っているカエデに対して、俺は少し申し訳ない気持ちが芽生え始めた。


その後は、怒っているカエデを慰めるのと、ソードのせいで出来なかったデートの続きをした。

具体的に、外に出てどこかにお買い物に行ったというわけではないが、所謂お家デートなるものをした。

カエデの部屋の可愛いものを見たり、俺のこれまでの人生を語ったり、まあ色々だ。

俺自身もそれなりに楽しむことができたし、寝るときは今日と同じでカエデと添い寝で満足そうに寝てくれた。


次の日、目覚めるとカエデの姿はなかった。


自室に戻って支度をしているのだろうけど、この前の事があるので、念のため三階に行きカエデを呼んでみた。


「カエデー、いる?」

「なに?今着替え中なんだけど」


しまった。女子の着替え中に声をかけてしまった。


「いや、いるならいいんだ。声かけてごめんね」

「んー」

これは仕方のないことだ。むしろカエデを心配しての事だから何の問題もないでしょ。


俺はやるべきことを終えた後、エルドレッドに電話をした。


「遅くなって悪いな、もう少ししたらこっち来られるか?」

「待ってたぜ、兄ちゃん。今から30分後にそっちに向かうぜ」


30分後、エルドレッドとソードが来た。


「いらっしゃい、カエデはもう少ししたら来るよ。カイトとフォートは来ていないのか?」

「『感動の再会に俺たちがいたら邪魔になっちまうよ。姉さんを助け出せただけで十分だ』だとよ、変な気遣うなって言ったんだけど聞かなくてよ」

「そうか、でも良い奴らだな」

「ああ、自慢の弟分だぜ」


ソードはまだ口を開かない。


「おい、兄ちゃんにも謝れよ。あれだけの事をしたんだからよ」

「俺はエルドレッドに連れられてきただけだ」

「てめぇ、自分が何しでかしたかわかってんのか」

「ふん、俺は何も間違ったことはしてない」


こいつらそんなに仲良くなったのか。以前までのごろつき扱いはどこ行った。


「兄ちゃん。すまねぇな。こいつまだこんな感じなんだわ」

「別にいいよ。特に気にしてないし」

「当たり前だ。お前は最後にちょっと出てきただけだろうが」


気にしてないとは言ったが、この態度は腹立つな。


「誰のおかげでてめぇの腕があるか忘れたのかよ」

「カイトとフォートだ。こいつに俺の腕は折れんからな」

「お前の冗談は笑えないのが多いな」

「冗談を言った覚えはない」


話してる内に、カエデは飲み物を持ってやってきた。


「いらっしゃい。ゆっくりしていってね」

「カエデ…随分と変わったな…」

「エルドレッドもね。とりあえず座ろっか」


席について暫くして、初めにカエデが口を開いた。


「ごめんね、エルドレッド。三年間も何の連絡もしなくて」

「気にしてねぇよ。どのみち俺たちはもう解散したんだ、今更再結成しようとは思わねぇし、あいつらにも今の生活があるからな。お前が無事に暮らせてる事を知れただけでも良かったよ」

「助けてくれたのに何のお礼もできなくてごめんね」

「気にすんな。ダチが困ってたら助けるのは当然だ。礼なんか求めてねぇ」

「そっか…でも、これからはいつでも遊びに来てくれていいからね」

「ああ、次からは客として世話になるぜ」

「ふん、貴様のような輩が来ては店が迷惑だ」

「この野郎、生意気な口ばかりききやがって。さっさとカエデに謝れよ」

「俺は自分のしたことを間違っていたとは思っていない」


こいつまだこんなことを言ってんのか。


「おい、おま…」

「だが、突然連れ去ったことはすまなかった、反省してる」


今叫ぼうとしたじゃん。初めから謝れよ。


「ソードさんにはこの店で働かせていただいた恩があるので私はもう許してますよ」

「そうか」

「何が『そうか』だ。カエデは優しいから許してくれるんだからな。感謝しろよ」


当たり前だ、クソガキ。カエデの優しさを思い知れ。


「もういいか?用が済んだのなら帰るぞ、エルドレッド」

「こいつ…本当に反省してんのか?てめぇは帰ってゲームしたいだけだろ!」

「お前があんな状況で無理矢理連れ去るからだ」

「まあまあ、ソードさんはこれからもオーナーでいてくれるんですよね?」

「いや、オーナーはカエデにしてもらおうと思っている。もう少ししたら伝えるつもりだったんだがな。カエデの方がオーナーに向いてる」

「え、でも私そんな急にオーナーなんてできませんよ」

「エルドレッドから聞いた。人のためになる仕事がしたいんだろ?なら、お前がやるべきだ。俺は何の口出しもしないから自由にやってくれて構わない」

「私でいいんですか?」

「寧ろお前しかいない」

「分かりました。頑張ります」

「伝えることは伝えたしもう帰るぞ」

「もっと言い方ねえのかよ。じゃあ兄ちゃん、俺たちはそろそろ帰るわ。また何かあったらいつでも呼んでくれ、俺の携帯やるよ」

「悪いな、その時はよろしく頼むよ」


俺初めて喋ったんじゃないか?話すことなかったわ。


「帰る前に転生者、お前に一つだけ教えておいてやる。また必ずカエデを狙ってくる奴が現れる。そうなったときに絶望するなよ」

「絶望?どういうことだ」

「その時になればわかる。まあそうならないことを願うがな」

「安心しな、兄ちゃん。そうなったら俺たちカエデ救出軍団の出番だぜ」

「そうだな、俺たちなら大丈夫だ」

「ソード、お前も手伝えよ」

「…考えておく」


そう言ってエルドレッドたちは帰っていった。


「どうだった?」

「エルドレッドには久々に会えてよかったよ。ソードさんはずっとオーナーだったから変な感じがした」

「そっか、カエデの過去がちゃんと清算できてよかったよ。オーナー頑張ってな」

「私がオーナーなんて緊張しちゃうな」

「大丈夫。俺が支えるから」

「じゃあシュウには店長してもらおうかな」

「いや、まだ店の事ほとんど分からないし、俺にはできないよ」

「じゃあ、早くなれるように頑張ってね」

「精進します…」


とりあえずこれで今回の件は落ち着いただろう。


「じゃあ店の準備しよっか」

「そうだね」


時刻は11時、まだ開店時間には少し早いけど昨日何もできなかったから今日は早めにしておこう。


「じゃあ、私は買い物に行ってくるね」

「いってらっしゃい」


さて、カエデも行ったことだし掃除でもしてようかな。


あ、ダメだ。ジグロードを一回出さないと。毎日出すのも面倒だな。

俺は山に向かいジグロードを外に出した。


「毎日出さなきゃいけないの何とかならねぇか?」

「24時間経過すれば勝手に出るぞ?わざわざこんな山にまで来なくてもな」

「それじゃ街が混乱するじゃねぇか」

「わしの知ったことではない」

「無理なら仕方ねぇか。てか、お前。俺の体の中で何してるんだ?」

「寝とる」

「え?それだけ?」

「特にすることもないしな、他にはドラゴン族の今後について考えたりすることもある」

「先行きが不安なのか?」

「現在、ドラゴン族では権力争いをしておる。長の座を誰にするかで一族全員で争いが起こっておる。わしが何とかしてやりたいが長の座を決めるのに長が口出ししては意味がないからの。自分たちの事は自分たちで決めろというのが方針だ」

「なら、お前にできることなんてないんじゃないのか?」

「策ぐらいは考えられる」

「なるほどな、俺にできることがあるなら言ってくれよ。ドラゴン族に襲われるのだけは勘弁して欲しいけどな」

「貴様にできることなどないだろうが、考えておく」


話し終えるとジグロードは戻っていった。


カエデが帰ってくるまでに掃除しとかないと普通に怒られちゃうから早く戻ろ。

店に戻ると店の前にハルカさんがいた。ジグロード帰りによく会うな。


「ハルカさん、まだ営業時間には早いですよ?また忘れ物でもしたんですか?」

「君、ドラゴンを一人で撤退させたんだって?」

「え、ええ。まあ。たまたまですけどね。どこで聞いたんですか?」

「早く教えてよ。ちょっと一緒に来て」

「え、でも俺店の準備があるし…」

「ちょっとだけだから!」


ハルカさんは、強引に手を引っ張って俺を連れ去った。ああ、美人に連れていかれるのって悪くないかも。いやいや、それどころじゃない。なんでハルカさんがドラゴンのこと知ってるんだ?

もしかして、変なことに巻き込まれたりしてないだろうな。


俺はごく普通の家に連れていかれ、中に入れられた。ハルカさんの家かな?


「リーダー、遠藤君を連れてきました」


部屋には男が一人いた。今、リーダーって言ったか?何かの団体に所属しているのかな?


「ありがとう、ハルカ」


こいつは…宴会の時にチヤホヤされてたイケメンじゃないか。

なんでこんな奴とハルカさんが知り合いなんだ?もしかして…付き合って…


「久しぶりだね、遠藤君。それで以前の件は考えてくれたかな?」

「クエストに協力するってやつですか?いやー、まだ討伐者としては未熟なんで俺には…」

「はは、君はドラゴンを撤退させたんだよ?実力で言うならもう上級討伐者と言っても過言ではない。君なら大丈夫だ」

「なんだか今日はやけに強引ですね」

「我慢できなくなってきたんだ。君と討伐に行ってみたい」


俺はあんたと行きたくない。


「まあ俺は普通の生活を求めてるんで、討伐には成り行きで行っただけだし、ギルドも、もうすぐやめようかなって思ってまして」


討伐者志望でもない人間を強引に死地に誘わないでくれ。


「討伐者をやめる!?君は何を言ってるんだ?君ほどの才覚の持ち主がやめるなんて街の平和を脅かしているのと同義だぞ。俺たちと一緒に行けば死ぬことはない、安心してくれ」


お前は俺の討伐してるとこなんか見たことないだろ。伝聞だけで才覚の持ち主とか言ってんじゃねぇよ。


「ところで、ハルカさんはなんでこんなとこにいるんですか?」


こいつはどうでもいいけどハルカさんの事は気になる。


「なんでって、それはリーダーと同じパーティーだからよ」

「え、同じパーティーって…」


じゃあハルカさんの本業ってのはもしかして…



「だって私、討伐者だもん」


皆さんの意見や批評などよろしければ何でも送ってください。


なにぶん素人なので、より面白いものを読者の皆様と作っていけたらいいなと思っております。


よろしくお願いします。

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