再会と裏
ジグロードの飛翔でどこかの山の山頂付近まで来た。
「何とかなったみたいだな」
「ああ、助かったよ。ここなら誰にも見つからないはずだ」
「わしは疲れた。さっさと貴様の中で眠るとしよう」
「おう。ゆっくりと寝てくれ」
そうしてジグロードは俺の中に戻った。
さてと、討伐者どもは何とかできたけどイカロスが現れるかどうかが問題だな。
さっさと帰って眠ろう。こうしている間にもカエデに危険が迫っているかもしれない。
時刻はまだ19時。俺は店に戻るや否やすぐに寝る準備をし、ベッドに伏せた。
気が付くと夢の世界にいた。イカロスと思わしき老人もいる。
何とか上手いこといったみたいだ。
「貴様、ドラゴンと協力して一体どういうつもりじゃ」
相変わらず怒鳴り散らしているが、今日はこいつの説教を受けに来たわけではない。
「今はそんなことはどうでもいい。おい、教えて欲しいことがあるんだ」
「どうでもいいとはなんじゃ、どうでもいいとは。街がどうなってもいいのか」
「カエデがどこにいるか知らないか?」
イカロスはけろっと表情を変えた。
「カエデってお主と共に住んどる女のことか?」
「そうだ、今日の朝から姿を消したんだ」
「そう言われてもこの街全体を把握しているわけではないのぉ…」
「じゃあ探してくれ、あんたしかいねぇんだ」
「そう言われてもな…」
「できないのか?」
少し挑発すればこいつは引っかかってくれるだろ?
「できるわ!神を愚弄する気か!」
こんなにも単純な神がいてたまるか。
「よかろう。そのカエデとかいう女を探してやる。そやつの容姿の特徴を言え」
「目の色は黒で、髪はオレンジ、服装は昨日と変わってなければピンクのネグリジェだったかな。あと、胸がすごく出てる。顔が整っていておっとりした雰囲気の可愛らしい人だ」
「貴様…最低じゃのう。特徴を聞いて胸が出てくるとは」
「うるさいなぇ。出てるもんはしょうがねぇだろ」
「まあよかろう。それだけ分かれば十分じゃ。『探索』!」
「それはどんな能力なんだ?」
「これは自分の思い描く人物や物を探す能力じゃ。理想の女に探すために作った能力じゃが、こんな風に使うことになるとはのぉ」
お前の方が最低じゃないか。
「それで?見つかったのか?」
「少し待て。…む、おそらくこやつじゃのう。貴様の言う通り胸が凄く出とるのぉ」
探してくれるのはありがたいけど、そういう目で見られると若干腹立つところはある。
付き合ってないけど。
「どこ見てんだ。変態爺。それで場所はどこだ?」
「これはヤハブ神社か。デカい樹があるんじゃが、その近くに寝かされておるの」
「それはどこにあるんだ」
「正門を出て、南西方向にある」
「わかった。サンキュー。じゃあ俺はもう行く」
「精々面倒なことに巻き込まれないようにな」
「忠告してくれるのはありがたいけどよ、何か新しい能力をくれないのか?」
「やるわけがなかろう。後は自分で何とかしろ」
「ケチな爺さんだ。でもありがとう」
「貴様に死なれてはわしも困るからの」
このまま夢から覚めるのを待ってもいいけど、どうせなら気になることでも聞いて暇をつぶしておこう。
「そういえば能力の事は全部言っとけよな、五感を共有できるなんて知らなかったぞ」
「どういうことじゃ?」
「いやいや、知ってんだろ?『無効化』を発動した対象はその五感を共有できるんだよ」
イカロスは驚いた表情をしたが、すぐに元の威圧感ある態度に戻った。
「そうか、『無効化』の裏は五感共有じゃったか」
「どういうことだ?あんたの能力なんだろ?」
「能力には表向きの効果と能力者すら知らない裏の効果がある。『無効化』に例えるなら、表が能力使用不可、裏が五感共有だったというわけじゃな」
「へえー、それって全部の能力がそうなのか?」
「そうじゃな。だが、稀に表の効果が強力すぎるため、裏が存在しないものもある」
「つまり能力には覚醒後が存在するということだな」
「一概に裏の方が強力というわけではない。表で劣る分、裏が強力になるという法則もある」
「使えなさそうな能力でも覚醒すれば強力ってことか?」
「逆に、強力そうに見える能力でも裏は大したことがないということじゃな」
「なるほど。それで裏の能力ってのはどれくらい知れ渡ってんだ?」
「裏の存在自体はほぼ皆知っとるが、その能力について気付くものは能力者全体の1%ほどじゃな」
「じゃあ俺が気付いたのはすごい偶然だったんだな」
「まさかここまで早くに気付くとは思わなかったな」
「まあ何にせよ、カエデを助けに行ってくるよ。色々助言してくれてありがとな」
「礼を言われるほどの事は何もしておらん」
皆さんの意見や批評など、よろしければ何でも送ってください。
なにぶん素人なので、より面白いものを読者の皆様と作っていけたらいいなと思っております。
よろしくお願いします。




