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いつだって恋する女神と一緒なら救えない世界はない  作者: おつかれ
第3章 オクシデントの世界
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46.5 実験

「気味の悪い月があいつを復活させたの」


エミアは冷徹に言葉を絞り出す。目を閉じて深く息を吐き、頭を振るようにして何かを整理しようとしている。その言葉には、無念と怒りがにじんでいた。エクシェが復活したことが、彼女にとってどれほどの衝撃であり、また、その背後にある恐ろしい力を理解している証だった。


「デメルングか。あいつは趣味が悪いからな」


エビルは少し不気味に笑いながら言う。その顔は冷たく、どこか愉快そうにさえ見えた。デメルングとは、いわゆる異界の神々を崇拝し、彼の手によって復活した者は、もはや人間ではなく、完全に異形と化す。そんなことを考えると、僕の胸には不安が広がる。


エミアがさらに話を続けた。「あの月の力は、ただの空間転移の枠を越えてる。まるで、時空を歪めるような力を感じるわ。」


僕はその言葉に驚きながらも、少し理解できた。エクシェの復活、時間のズレ、そしてこの不自然な状況。すべてが一つの大きな謎に繋がっている。エクシェを復活させたのは単なる魔法ではない。もっと大きな力が絡んでいるのだ。


「それに、何かしらの異常が発生しているのは間違いないな。」


僕が続けると、エミアは頷いた。「異界と現実の境界が曖昧になっている。ここの空間も、完全に異世界のものに侵食されてる。」


その言葉を聞いて、僕は一つ思い当たった。「だから、君が現れたんだ。」


エミアが驚いたように僕を見つめる。「え?」


「君の出現が、あの空から降ってきたってことは、異界の力が無理にこちらに干渉している証拠だ。エクシェを復活させるために、異界側の力が集まってきてるんだろう。」


エビルが腕を組みながらうなずく。「確かに。あいつの復活が意味するのは、単なる死者の蘇生じゃない。空間転移の力が増幅され、異界との接触が深くなってる証拠だ。」


エミアは不安そうに空を見上げる。「もし、この異常が続けば、私たちの世界は異界に飲み込まれるわ。あいつが復活したのも、それが狙いなんじゃないか。」


その言葉に、僕は冷静を保ちながらも心の中で緊張が走る。異界との境界が崩れ、世界が飲み込まれる。それが現実となるのは、もう時間の問題だということだ。エクシェが復活し、その手には計り知れない力が宿っている。それを放置しておくことはできない。


「まずは、あいつを止めないと。」


僕の言葉に、エビルが少し口を開く。「止めるって、簡単に言うがな。あいつの力、今はほとんど無敵だぞ。」


「無敵ではない。」


エミアが強く言った。「私がまだ生きている限り、あの力には限界がある。エクシェを倒す方法があるはずよ。」


その言葉に希望が灯る。僕たちは力を合わせて、この異常を食い止めることができるかもしれない。だが、それにはかなりのリスクが伴うだろう。


「どうする? 何か方法があるのか?」


僕が尋ねると、エミアは少し黙って考え込みながら、目を細めた。「方法は一つ。私たちが全力を尽くして、異界と現実の境界を再構築しなければならない。エクシェを封じ込めるために。」


「それには何が必要だ?」


エビルが鋭い目つきで尋ねると、エミアはその問いに静かに答えた。「まずは、エクシェがいる場所を突き止めなければ。彼は必ず、異界との接点を探しているはずだから。」


その瞬間、周囲の空気が少しひんやりと感じられた。何かが近づいてきている、そんな気配がした。エクシェの力が、少しずつ僕たちに迫ってきているのだ。


「お前たち、動けるか?」


僕が声をかけると、エミアは気を引き締めて答えた。「私は準備ができてる。お前はどうだ?」


「問題ない。」


エビルも同様に答える。その目には、今までにない決意が宿っているように見えた。


「なら、行こう。」


僕は二人に頷き、前を向いた。これからの戦いは、ただの戦闘ではない。異界の力を封じ込めるための戦いだ。そして、エクシェを倒すための、最も危険な戦いでもある。


進むべき道はただ一つ。異界との接点を断ち切り、エクシェを封じ込める。そのために、全ての力を使い果たす覚悟を決めた。


「何かあったら言ってくれ。お前たちを助ける。」


エビルが言うと、エミアは少しだけ微笑んだ。「ありがとう。でも、私たちがすべてを決める。」


その言葉に、僕はしっかりと頷き、彼女とエビルを前に進ませた。今、世界の命運が僕たちの手にかかっている。何が待ち受けているのか分からないが、全力で戦い抜く覚悟を決めた。

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