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いつだって恋する女神と一緒なら救えない世界はない  作者: おつかれ
第3章 オクシデントの世界
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43話 エビル、北へ向かう

深い森の奥。太陽の光は高い針葉樹帯で薄っすら差し込む程度で、暗く鬱蒼とした雰囲気の中に二人の姿があった。


「本当にエーテルが使えた!」

僕はエーテル“ワープでワープ”を存在させ、セプテン公国へと移動した。はずだけど、、、


「だろ!!でも、ここはどこだ?」

エビルは公国を思い浮かべ、ゲートの目的地を設定したつもりだったが、全く別の場所へ転移していた。


「セプテン公国じゃないの?」


「わからん。私は首都をイメージしたつもりだったが。訳の分からない森の中に着くとはな」


イデアとはまだ音信不通だ。

未だに聖地からは光が溢れ続け、ダザインの地を明るく照らしている。




時間を遡ること、宿将テオドリーが討伐軍を整え、北の大地へと出発した日。

難民かつ異界側のエビルは討伐軍についていくことができないため、寝静まった野営地から抜け出して、北へと向かうことにした。


エビルは異界軍に合流するとのことで、支度を始めた。お前も来るか?と誘われたが、聖地イデアに向かうと言い、断った。もしかしたら、イデアの手がかりがあるかもしれない。



「いや、お前一人では聖地イデアにはたどり着けないと思うぞ」

エビルは荷造りの手を止めて、前屈みに僕の方を向いた。


「え、なんで?」


「だって、ネアローミの市民証を持ってないだろ?」

 

「ネアローミ?」


「主人が建国した国家だよ」

はあ、といつもの呆れた顔をするエビル。


「インペラトルは全てを滅ぼしたんじゃないの?」


「ああ、都市は破壊し、大地は腐敗させた。ただし、首都を除いてな」


エビルは話を始めた。

エクシェを討ち取られた主力軍は北へと敗走したが、旧ダザイン帝都、現首都ニヒトには異界側の人魔が大勢暮らしているらしい。

過去の大戦時、ダザイン王敗北後に異界軍は帝都を包囲。抵抗するダザインの兵士は虐殺し、インペラトルは降伏を促した。そして、時の大臣は抗戦を諦め降伏を決断。帝国ダザインは滅亡した。

インペラトルはダザインの高官を一通り処刑し終えた後、ダザイン都民たちの財産を没収し帝都から永久追放した。かわりに異界側についた人魔を迎い入れ、国家ネアローミを建国した。


「つまり、助け出された人って」


「ああ、ダザイン人だな」

ここにいる難民たちは首都を追い出された人々。首都と郊外の格差は凄まじく、首都に住まぬ者には人権どころか住まう地域すらなかった。


「めっちゃ悪いやつじゃないか」


「何を今更。おまえはその極悪人の部下とずっと一緒に過ごしてるんだぞ」

ははは、と笑うエビル。

僕の目にはその笑顔が不気味に見えはじめた。


「エビルも大勢の人を殺したの?」


「いや、私は必要時以外戦闘はしない。アエディリス(按察官)っていって祭儀担当の官職だ。だから、聖地イデア侵攻の際に同行したのさ」


「そっか。少し、安心した」


「まあ、主人への忠誠心は女神イデアへの信仰心よりも遥かに上だがな」


「今までのよしみで市民証を貸してくれない?」


エビルは哄笑した。


「私はアエディリス(按察官)だぞ!そんなものは必要ない。顔パスだ顔パス」

嬉しそうに腰に手を当て胸をはるイデア。


じゃあ僕はどうしたらいいんだろう。


エビルはよし、準備できた!というと荷物を背負い、困り果てた僕の方をちらっと見た。だが、すぐにじゃあな、と言うと手をひらひら振りながら、テントを出ていった。


二人だと狭いテントだったが、一人になるとそこそこ広かったことに気がついた。

ネアローミという新国家は間違いだっけかもしれません。異界の司令官エクシェを倒した後、帝都まで進軍すべきな所、戦争に勝利したと凱旋せんと帰路につく連立混成軍。これじゃあ整合性が取れていないので、そのうち書き直します。

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