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いつだって恋する女神と一緒なら救えない世界はない  作者: おつかれ
第3章 オクシデントの世界
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42話 復活のコンスル

副官ゲッツェのもとに華美に穢れた装飾の棺桶が運ばれてきた。棺を開くと、エクシェはまだ腐敗するまでには至っておらず、だがオドアの大剣ロムルスによって貫かれた傷口は塞がれており、手を組んだ姿で眠りについていた。


ゲッツェは遺骸を抱え込むと、下士官たちに全力で防衛するよう命じ、夕日の化物“黄昏”に捧げるように持ち上げた。

下士官たちは展開していた防衛の網の範囲を狭めると化物"黄昏"とデメルングを守ることに集中、限界を超えて異力を捻出し、強力な結界を張った。




「急に暗くなったと思ったら、なんすかあれ」 

宰相エミアは攻撃の手を止めると、その光景を不思議そうにみつめていた。

雨のように飛んできた異法はおさまり、かわりに得体のしれない夕日の形をした化物が宙を浮いていた。地表からはデメルングより闇があふれ、化物へと吸い込まれるように立ち昇る。


「異界の化物だ。私も初めて見る」

セプテン公リストは未だ魔力は回復しておらず、蒼白した顔持ちで空虚に眺めている。

デモーク公爵は変わらぬ様子でぼんやりとしていた。


「ありゃ、私めのいる魔界とも異なる世界から呼び出されたようですぜ」

マリッドの“コリン”は試しに大きな手のひらを広げると、ぎゅっと折りたたんだ。

だが、異界側の結界に拒まれ、変わりに内側にいる数人の術者が吐血し倒れた。


その間にも"黄昏"の図体はどんどん巨大化していく。膨張するにつれて目口は離れてゆき、ケタケタケタと耳をつんざく不気味な音を響かせている。ゲッツェは顔をしかめながら、エクシェの亡骸を支えていた。


「なんかヤバそうっすね。ちょっと本気出してみるっす」

エミアは両手を胸の前に合わせると、全ての魔力を一点に集中させた。全身から電流がほとばしり、白い稲光が彼女を輝かせる。


そして、射出。


強力なイカズチが曲線を描きながら、突き進むと衝突。遅れて響き渡る雷鳴。

一瞬間。

周囲は白く眩い光で覆われた。


エミアは視界が戻ると敵陣を確認。

術者たちの異力を上回る魔力により結界は崩壊していた。

と、同時に化物"黄昏"が破裂。飛び散る腐敗した破片。

異界軍の悲鳴が聞こえてくる。ゲッツェの叫び声も混ざっており、敵陣の大地は抉られ巻き起こった砂埃で視界は遮られている。


「..どうすか?わ、私やっちゃったっすか?」

そう言うとエミアはヘトヘトと後ろに倒れ込んだ。


「残念ですが、姐御。まだ終わってないようですぜ」

目を細めながら敵陣を見つめる“コリン”。

「ありゃあ、さっきの奴らより格上でしょうな」



衝撃が収まると一人の影。



死んだはずの《コンスル(統領)》エクシェの姿があった。土色の顔色は完全な復活を示しておらず、長く伸ばした青髪を掻き上げると、自身の身体の回復具合を確認。手を握ったり開いたりした。

胸の曲線を隠すために着た背丈よりも大きな紺の軍服は勲章で飾られており、肩章の赤い星の数はオディテンス帝国での将官以上の地位であったことを示していた。


エクシェは川の向こうにいる魔人たち、周囲に散らばる"黄昏"の破片を視認。そして現状をおよそ把握。側に転がっていた汚い棺桶の残骸から制帽を拾い上げると、砂埃を軽く払う。


「うん、半端だがまあよかろう」

エクシェは制帽を被ると、男顔負けの鋭い眼光で周囲を見渡した。


何の感情もない目で下士官たちの死体を一瞥したあと、白目を剥くデメルングを発見。

未だ闇を延ばし続けるその身体から剣を引き抜くと、リストたちへ向かって挨拶程度に軽く薙ぎ払った。


突然の攻勢。無防備な魔人軍に襲かかる衝撃。

斬れ味はデメルングよりも遥か上。

街に綺麗な横線が入ると、魔人たちの身体は真っ二つに割かれた。


“コリン”はリストたちを守るように立ち塞がり、両手で受け止めた。だが、食込む斬撃で手のひらがエグれ、青い血が吹き出す。



「はあ。“ジクフリトの剣”は君主が嫌がるだろう」

歪んだ剣身をもつ"ジクフリトの剣"を蔑視した後、手に持つそれを粉々に砕いた。


「ケケッ。あなた様を生き返らせた“黄昏”もリヒルト系統ですぜ」

ゲッツェは先の衝撃で身体は吹き飛び、首一つの姿で地面に転がっていた。異法で身体に細工しているゲッツェの生命はしぶとかった。


「気色悪い奴め。踏み潰すぞ」

エクシェは横たわるゲッツェの頭を踏むと、勘弁してくだされと焦ったように煩く懇願した。


「しかし腹が痛いな。あいつはどこだ。今すぐ殺してやる」

ゲッツェの頭を蹴り飛ばした後、エクシェは腹を擦りながら、殺気立った目で遠くを見た。


「私も痛いですが。しかし、エクシェ。今はそれどころではない」

意識を取り戻したデメルングは空いた腹部を押さえながら、ゆっくりと立ち上がった。


「田舎の小国にこの様とはな。なあ、デメルング君」

エクシェは口角を上げると、デメルングの体に手を当てて、自身の異法を注ぎ込んだ。

これからは、1話2000文字書くように頑張ります。

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