38話 リヒルト系統は禁忌だって
強硬派魔族が建国した国家だけあり、セプテンに住まう魔人の能力は高く、異界軍司令官デメルングは激しい抵抗を受けた。
セプテン公リストは強力な結界を張りめぐらすと、
巨大な黒龍を召喚。鋭利な牙は人のサイズで、覆う鋼鉄の黒鱗は異法を跳ね除ける。
上空で大きく旋回すると、敵軍目掛けて急降下。吐き出される黒炎により兵士たちは焼き払われた。
セプテン都民たちも応戦した。空は様々な種類の魔法陣で埋め尽くされ、悪魔が召喚され続けた。夥しい数の群れが渦を巻きながら異界軍と衝突。いかに異法で身体向上させてたとはいえ、異界側兵士たちの数は減っていく一方であった。
迫りくる悪魔の軍勢を前に、異界軍の副官ゲッツェは異法"ヴァルキューレ"を造形した。
ゲッツェの前には黒いキトンをまとう弓兵の連隊。横一列にズラッと並ぶと一斉に矢を放った。
「やはり、主人は偉大だったんだなあ」
悪魔に降り注ぐ矢を眺めながら、ゲッツェは独語。闇をまとう弓兵たちは隊列を組みながら、空中を前進した。
「まさかセプテン程度の小国に手こずるとはな」
デメルングは異法"ジクフリトの大剣"を造形、
歪んだ剣身のそれを手に取ると、空にむかって振りかざし、大空より猛威を振るう黒龍を切り裂いた。
「主人がこの光景を見たら、私どもは異界送りにされますぜ」
ゲッツェはケケッと下品に笑うと、肩をすくめた。彼の背は低く、大きな頭は禿げており、魔人らしい尖った耳にカールした口髭。
横に立つデメルングは長身で、整った容姿をしており、髪全体を後ろに流していた。
「しかし、ゲッツェよ。"ヴァルキューレ"は禁忌だろう。リヒルト系統の異法は主人は嫌がる」
「それでしたら、先ほどの"ジクフリトの大剣"もですぜ」
「まあ、な。しかし、主人は何処へ消えたのだろうか。エビルを連れて聖地イデアに向かったそうだが」
セプテン公リストは黒龍が堕ちた直後から長らく続いた詠唱を終えると、地響きとともに二階建ての建造物程度の巨大な腕が出現。大地に手を押し付けながら、胴体をこちらの世界へと寄せていた。
「おうおう。マリッド級の悪魔を呼び寄せおった。ケケっ、ありゃあ本気ですわ」
ニーチェはニーベルングの指環でリヒャルトワーグナーに失望したそうです。




