36話 魔族国家
セプテン公国の地理としては、ダザイン帝国北部属州ゲルマと北の魔領アリスト王国の中央に位置している。
セプテン公国の歴史は、テレサ朝アリスト王国の二代目魔王テレサの治世に始まる。アリスト王国は魔人のために建国した初の魔族国家であった。
魔人は長寿のためか人間よりも人口は少なく、また閉鎖的な性質のため、古代より僻地に魔都市を建設、細々と暮らしていた。
初代魔王ソクラは魔族の優位性から、人類への危害を加えること、また、一切の交流を禁忌とした。
「私達は強者なのさ。だから、彼らの成長を見守る責務があるのだよ」
彼女は魔族同士の争いを平定し、魔都市国家をまとめあげると、魔王を宣言。緩やかな連合体を形成した。優秀な君主であった彼女は内政に力を入れ、有能な人材を登用、各魔族間の均衡を図った。また、寛容な魔人としても有名であり、一部の魔族からは絶大な人気があった。
だが、次第に増加する人間たちによって、魔人の暮らしを脅かしはじめた。
領地を奪われるにつれ魔人たちの不満を抑えることができなくなり、魔王ソクラでも制止することはできなかった。
そして、人間であるセプテン人達による魔都カデメイアへの侵略行為によって、魔人たちの怒りは頂点に達した。
セプテンの軍隊を迎撃すると、強行派たちは魔王ソクラの遠縁であるテレサを担ぎあげ、大規模なクーデターを決行。
結果として保守派は敗北、魔王ソクラは近衛軍もろとも南方の僻地へと追放され、テレサが二代目魔王に就任した。ここからアリスト王国の歴史が始まる。
「我々は十分に我慢した。そして時が来た。今こそ、積年の恨みを晴らすのだ」
二代目魔王テレサは、勢い止まらぬ対人過激派を率いて、セプテンに侵攻。
当時の人間の軍事、科学力では到底太刀打ちできるものではなく、セプテンの都市は魔人たちによる虐殺、略奪により、一晩にして廃墟となった。
セプテン人たちは南方や西方に追いやられ、空白となったセプテンの地に、国土防衛を目的として強硬派筆頭のデモークを辺境伯とし、セプテン伯領が誕生した。
そして、時代は流れ、デモークは大公となり、セプテン公国として独立。
人魔の和解も成立し、長らく平和な日々が続いていた地が、突如地獄の戦場と化していた。
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セプテン Septentrionalis 北を意味
ゲルマ ゲルマニアを意味
カデメイア アカデメイアを意味




