32話 とんでもないことをしたかもしれない
紫苑色のローブの胸元は開いており、手には大きな樫の杖。赤茶色の巻き毛、目深に被ったフードからは親しみのある目が覗いている。どこかエビルと似ていた。だが、背丈は僕よりも高く、年齢も上にみえる。要は大人の姿であった。
子供のような背格好、だったはずだけど…
「エビル…だよね?」
「しっ。…私のことを忘れたのか。ついさっきまで同じ空間で過ごしただろう」
エビルの名を出されるのが嫌なのだろう。口元に人差し指を当てると、声の主は不審そうな様子で答えた。
「いや、姿が違いすぎて」
「そう言われると、こっちに戻ったら大人の姿に戻れたようだ」
口調が大人びていてぜんぜん違う…。変化に戸惑った。
「違いすぎて気を使ってしまうよ」
「ははは、無理もないな。これがわたしの真の姿なのだ〜。なんてな」
フッと微笑ましく鼻で笑った。
「ところで、ここはどこなの?それにインペ…痛っ」
いきなり樫の杖で殴られた。
声に気づき振り向く馭者。
「すまない。今の揺れで杖があたってしまったようだ」
失敬と落ち着き払った様子で誤魔化すと、馭者はまた前を向いた。
エビルは僕の真横に座ると「今はその話はなしだ」とひそひそと話した。
「ところでここは?」
「おそらく、旧ダザインの領地内だと思う。私の知っている景色とはえらく違うが」
日が暮れ始めたので、平野に露営をすることとなった。兵士に混じって、動ける人間は手伝いをし、夕食の寝床の準備を始めた。魔法使いは使役する使い魔を多数召喚、あっという間に野営地が出来上がった。
僕とエビルは少し離れた場所で現状の確認を行った。
エビルは"ワープでワープ"で空間移動したが、突如ホールから光の突風が吹き荒れた。祭壇どころか聖地全体が神々しい光りに包まれると、空高くにまで到達、そこから半円状に広がりを見せ、闇に支配されたダザインの地を解放したそう。
現在も、聖地イデアからは、光はとどまる事を知らずに溢れ続けているそうだ。
それを聞いて僕は思ったんだ。光は多分エーテルで、この現状を生み出したのは僕が原因だってことにね。
…どうしましょ
30話こえたので、章ごとの区切りをつくってみました。




