23話 来訪者たち
強烈な闇が渦巻く中心には神の子の姿はない。
代わりに長身で黒い外套に身を包み、真っ黒い濃霧で覆われた闇の存在が姿を表した。右手を振り上げると、空は暗黒と化した。
"貴様、一体何者だ…"
突然の来訪者に驚きを隠せず、少し狼狽えたが、すぐに臨戦態勢に入るジャッジ。両手をエーテルで眩く照らし、青白い紋章を灯す。
審判者は"光りあれ"と詠唱し、"スーケルツォの連弩"でエーテルを射出。しかし、闇の来訪者の前で消滅。と同時に闇から複数の光線が直線上に襲いかかるが、"偉大なる盾"で防ぐ。
弾かれた闇は地面に飛散し、触れた草木は枯れ果てた。
ジャッジは闇に触れた瞬間に、経験したことのない恐怖に襲われた。竦み上がるような恐ろしさ。深い深い奈落に落ちていくかのような絶望。すぐに正気を取り戻すも、体は硬直して動かなかった。魔法でもエーテルでもなく、エネルギーの根源が未知のもの。初めての感覚であった。
'意外と弱いぞ?'
闇の存在の背後より、ヒョコリと背丈の低い少女が顔を出した。自身よりも大きなローブに、右手には赤い宝石がはめ込まれた木製の杖。
少女は、えいーっと言うと、杖から闇を産み出し審判者に向けて解き放つ。
硬直しつつも、かろうじて"神の子羊"を存在させ、闇を打ち消す。
恐怖を克服し、硬直を解くと"聳え立つ大槍"を存在させ両手に構えた。
少女の姿をみた審判者は状況を理解した。ここに超自然的存在者が現れるなんて、本来ならばありえない。ここは女神イデアの内のはずだが……まさか…
"女神イデア、侵入者だ"
ジャッジは呼びかけるも返事はなし。
霧が薄れてゆき闇の存在者たちの姿があらわとなった。
防衛エーテルはバッハの作曲名が由来でーす




