22話 クラヤミ
そんなこと言われてもなあ。
ジャッジは強すぎるし、どれだけ鍛錬しても、人間の僕が神を自称する存在に勝てるわけない。だけど、ここから抜け出すためにはあの攻撃を防ぎきる程度の強さが必要なはず。
強い想念か…。遠い生前を振り返ってみた。けど、なんだか思い出せない。僕はどんな生活をしてたんだっけな。
死にたいという気持ちで、毎日を過ごしていた。それ以外の記憶が全く無いほどに。
あのときの強烈な死に対する欲望をエーテルへと転換することができるのだろうか。
いや、と思う。
転生と言っていいのか、イデアに強引に幽閉されてから、死=無への意志は段々と薄れてきてる気がする。なんだか矛盾しているが、無に還るために必死になって強人へと向上しようとする。けれど、、、。
快晴の空、前には無表情だけど、どこか期待をかけるような面持ちなジャッジ、ぼろぼろな身体、生きる意味、どこかで見てるだろうイデアの見守り。
僕は何をしているのだろう、なんだかよくわからなくなってきた。
この感覚、全てが無駄に思える徒労、絶望に近い厭世感が僕の精神を蝕みだした。
僕の周囲の色が段々と暗く、エーテルを赤黒く塗り始めた。
無駄なんだ、こんなことしても。全身か痛いし、頭がザワザワしだした。行為が無意味の連続で、死ぬことのできない身体、抜け出すことのできないこの現状。苛立ち、怒り、やるせない脱力感。それらの想念が強くなると、呼応したエーテルが陰性感情を増幅させる。
ジャッジはこの微妙な変化の違和感に気付くと"どうかしたのか"と声をかけたが、僕の耳には届かなかった。
そして、僕の歪んだ顔を見るや休憩しようと呟いた。
何もかもが嫌になる、そうだ当時もそうだった。この感じ、みんなそうだ。
歪なエーテルが笑い出した。それも、冷笑するような、憐憫するかのような嫌な声。
当時の記憶が蘇ってきた。
「お前らなんか消えてしまえばいいのに」
この感情に反応したどす黒いエーテルは周囲を闇にする。
ジャッジは光を灯そうとエーテルを使うが無意味だった。
"何をしたんだ"
呆然とするジャッジに波状にエーテルの闇が襲いかかる。
かろうじて振り切るも、纏わりつくようにエーテルがジャッジを離さない。
"光りあれ"と何度も詠唱するが、それすらもかき消す深い漆黒。
闇から無数に手が伸びだし、僕の身体を包みこんだ。
ベタベタと触るな気色悪い。けど、それすらもどうでもいい。僕は絶望的観念に体を預けた。
ジャッジは払い除けても、纏わりつくエーテルに苦戦しつつも、やっとの思いで希望のエーテルを創造し、絶望に落ちたエーテルを打ち消した。
すると、眼の前には見知らぬ人間がいた。
'ここが、イデアの私設空間か?'
闇に紛れて、招かれざる客が足を踏み入れた。
投稿頑張りますー。




