15話 投げてくる球体
「ね、違いがありますよね。一度私に攻撃をしてみてください」
言われた通りに、僕も同様に"真円の球体"を存在させるとイデアに放出した。しかし、盾にぶつかると、軽い金属音が鳴るとともに球体は消失した。
「差がありすぎますね。もちろん、僕が人間だからというのがあると思いますが」
「強く創造するのですよ。さ、もう一度盾を出してみて下さい」
今度は強く創造しようと、まずは感情をコントロールする。イデアが、僕の大好きなイデアが目の前にいるこの幸福を、また、どんな敵がこようとイデアを護る強い決心を込めて"誇り高き盾"を存在させた。
視覚的には何も変わらない大きな楕円形の盾。だけど、さっきとは違って、盾全体を純白のエーテルが覆っていた。
「お、先程よりは頑丈に思えますね。えいっ」
放たれたエーテルが盾にぶつかると、イデアの方へ弾き返すことができたが、その衝突の反動で僕の体も吹き飛び、弾き返されたエーテルはイデアの目先で塵のように散った。
恒例のようにイデアが眉をハの字にかえて、近寄ってきた。
「おお、何かコツを掴んだのですね。でも、大丈夫ですか」
差し伸べられた手を掴み、ゆっくりと立ち上がった。
「大丈夫です。けど、上手くいきました」
「今ある"誇り高き盾"から強く誰かを護ろうとする意志が感じられます。もしかして、私を守る創造をしてくれたのですか」
少し照れっぽく言うイデアに対して、はいそうですと答えると、嬉しそうな笑顔を浮かべた。
「これは頼もしいですね。今後私に危機が迫った時は貴方に守ってもらいますね」
スキップしながらイデアは少し距離を取ると、手のひらを上に向けて巨大なエーテルの球体を創り出した。大きさはログハウスくらいだろうか、エーテルの周囲は白い電流が走っている。
流石にこれに当たるとただでは済まないのでは…
「では、この"エーテルボール"をぶつけます。私から私を守ってください。いいですか、創造で私を守るのですよ! えいっ」
流石にこれはやりすぎだ。僕は急いで迫りくる巨大な球体から身を守るために創造した。"誇り高き盾"では無理だと思い、"主よ人の望みの城壁よ"という強固な防壁を何重にも存在させる。地面からせり出すそれは数メートル程の高さはあり、外観はくすんだ煉瓦造り。生命の危機からイデアを守る、その強き気持ちが真っ白なエーテルを付帯させ深く全体を覆っている。
"エーテルボール"は"主よ人の望みの城壁よ"と衝突すると、壁は簡単に崩壊していき、しかし段々と勢いは収まると、ひとつ防壁を残した既のところで消滅した。
遠くから、凄いです〜という声が聞こえてくる。
呆然と立ちすくむ僕の頭に残ったのは、いつから、こんなヤバめな女神を好きなったのだろうかだった。




