4 E級冒険者
「ふぁ~~~」
今日も小鳥のさえずりで私は目を覚ました。
ギルドマスターが居たら良いなと思いつつ、
さっさと着替え、強化魔法で走る。
あっという間にギルドへ着き、辺りを見ると、ギルドマスターが居た。
「ギルドマスター!」
「?お、どうした、ゼロ。」
「いえ、お金を返したかったので。」
宿代の3000ゼニーと服は分からないけど
2着で1500ゼニー位かなと鑑定して思ったので、
取りあえず4500ゼニー入った袋を渡す。
「いや、要らねぇよ。お前の金だろ?」
「いえ、こういうものはしっかり返さないといけませんから。」
「はぁ···お前本当に頑固だな···仕方ねぇから貰っとくぜ」
「はい。」
このお金で足りるか不安だったが、まぁ大丈夫だろう。
私はまた依頼掲示板を見ようとしたが、
なんとなくでステータスを開くことにした。
「ステータス。」
またヴンッとステータスが開き、いつも通りのスキルが出る。
しかし、一つだけ違ったのはレベル 7と表示が追加されていたこと。
私は鑑定でレベルのところを鑑定してみた。
すると
『レベル···持ち主がモンスターを倒すと経験値が入り、
一定以上になるとレベルが上がる。これをレベルアップという。
レベルとは基本的にその人の強さを表す。』
···らしい。
よく分からないが、モンスターを倒すとレベルアップする、らしい。
まぁいいやと私は依頼掲示板を見た。
昨日とは違う依頼が沢山入っていて、
私は下の方にあるものから見ていった。
オイルキューブは不足しているらしく、報酬が前よりも上がっていた。
しかし私はオークを倒すことが出来たところから見て、
『オークの討伐』やそれと同じ列にある『キメラの討伐』が
私の今できるラインだと思った。
ということで私は『オークの討伐』と『キメラの討伐』、
『オイルキューブ集め』を受けることにした。
出来ることならこれらを午前中に終わらせ、午後は別の依頼をしたい。
とにかく当分はお金稼ぎと冒険者ランク上げかなぁと思った。
私はこの三つの依頼の紙を持って受付の人に渡す。
「え···オークにキメラ!?失礼だけど···貴女はやめた方がいいわ。
貴女がオークを倒したのは分かるけど···キメラは強いから。」
「いや、オークの時も余裕があったし大丈夫です。」
そう言うと受付の人はとても驚いていたが、
渋々依頼を受けさせてくれた。
だけどその時凄いオークの群れやキメラの事を教えてくれたから
恐らく、死んでほしくないのだろう。
大丈夫だとは思うが。
「気を付けてくださいね。」
「はい。」
受付でのやり取りを聞いていたのかギルドメンバーが
凄い心配してきたが、問題ないと言い、私はゴブリンの森へ入った。
キメラとオークは二つともゴブリンの森の奥地にいるらしく、
私は周囲のモンスターを倒しながら進んでいった。
既にオイルキューブは集まっており、
それでも倒していくのはレベル上げの為だ。
進んでいく最中に気づいたのだが、
レベルが上がるとスキルポイントが貰える。
そうすると新しいスキルガ取得できるため、
レベル上げをしているのだ。
状態が良ければ買い取って貰えるし!
ということで私は周囲のゴブリンやオイルスライム、
他諸々を倒していった。
私のアイテムボックスは今頃討伐部位の分からない
モンスターの死体と討伐部位でいっぱいだろう。
さて、そろそろオーク達の縄張りだろうか。
オークの縄張りはゴブリンの森の奥地の水場らしい。
もう水場が見えてきている。
オークもちらほらいるようだ。
私は20はいるオークを相手取るのはかんべんしてほしいので、
奇襲を仕掛ける。
「ウィンドカッター、ウォーターランス」
風の刃と水の槍が飛ぶ。
オーク達を全て倒すわけではなかったが、10体は倒せただろう。
しかし魔法を打ったことで私の居場所がバレてしまった。
オーク達は一斉に襲いかかってくる。
たが、私が何も持っていないからといって
近距離攻撃ができないわけではないのだ。
「···ファイアーソード。」
自分の手に炎の剣が収まる。
剣を振ったことは無いが、
ほとんど重量の無い剣をオークの首に振るう。
感触は殆ど無く、オークの首が舞った。
···とんでもない切れ味だ。
そこらで剣を買うより良いと思う。
しっかし、魔力消費が多そうだな。
魔力無限スキルがあって良かった。
なんて呑気に考えている間にもオーク達が襲いかかってくる。
それをバッサバサと切り捨てていると、
いつの間にかオークは全て倒しきっていた。
「もう終わりか。」
私はファイアーソードを消して
頬についたかすり傷を治癒魔法で治した。
アイテムボックスに討伐部位を投げ込み、
キメラを探そうと歩き出した。
* * *
「グォギャキィィィィ」
「!?」
それぞれが別々のモンスターのような鳴き声が聞こえた。
間違いない───キメラだ。
キメラ──様々なモンスターを補食することにより
モンスターの特性を手にいれる性質がある。
補食を繰り返すことでキメラは
複数のモンスターが混ざりあったような姿になるという。
様々なモンスターの特性を手にしているため、
初級者には強敵である。
キメラは今までの中でも間違いなく強敵だ。
私は気配を更に薄くして、相手を『鑑定』してみた。
名前 なし
年齢 6歳
レベル 11
HP 537
MP 65
種族 キメラ
称号 なし
スキル 補食
気配感知
炎魔法 中級
風魔法 初級
衝撃波の叫び
いくつか見慣れない物があったが、
気配感知があるのならばと私はキメラの前に出た。
「ギギャグォォォォォ」
「う···!」
衝撃波のある叫びがあがる。
なるほど、これが衝撃波の叫びだろうか。
私は頭の片隅で冷静に分析しながら耐える。
叫びがやむと私は一気に懐へ入り込んだ。
「ウィンドソード」
キメラの首が舞った。
「···呆気ないな。」
レベル11だから警戒こそしたものの、あまりにも弱い。
私はキメラの討伐部位をアイテムボックスに突っ込んで
お昼になるからとギルドへ帰った。
* * *
「わ、またこんなに···!しかもビッグベアーまで!」
「いや、弱かったですよ。ただの大きな熊でした。
買取お願いできますか?」
「勿論です!えっと、依頼の報酬とその他のモンスター···
はい!75000ゼニーになります!」
「ありがとうございます。」
軽く礼を言い、私は露店で昼食を食べたあとまた依頼を受けた。
『ヒトクサバナの採集』と『幻魔草の採集』、
『ヤクヨケソウの採集』だ。全て採集系だが、
そこは私も疲れが出ているためそうさせてもらった。
依頼をパパパッと終わらせ、その日は眠りについた。
それから4日後────。
「E級昇格?」
「はい。ゼロさんはさっきの依頼で丁度30の依頼を達成しました。
素行や態度も問題ありませんから
今日付けでE級冒険者に昇格させていただきます。」
私は受付の人に言われ、とても驚いた。
「こんなに早くて良いんですか?」
「いえ、貴女が異常なだけです。
1日6個の依頼を達成する人なんて滅多に見ませんから。」
こちらが清々しいほどの笑顔で『異常』と言われ、
私は思わずたじろいだ。···が、まさかこんなに早く昇格するとは。
「まぁ、お願いします。」
「はい。ではプレートを出してください。」
「はい。」
自分の名前つきのプレートを首から外し、受付の人に渡すと
受付の人はそのプレートに何かの魔法をかけて
Fの文字がEに変わる。
「はい!これで貴女は今日からE級冒険者です!」
「ありがとうございます。」
銀のプレートを受け取り、首にかけ直す。
私の首には『ゼロ E』と刻まれた銀のプレートがあった。