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2 ギルドマスター


真っ白な光に包まれたあと、再び目を開けるとそこは森だった。


「···森だ。」


初めて見た。いつもいつも、

私の周りは薄暗いコンクリートの壁ばかりだったから。

キョロキョロと辺りを見回すと、

自分の足元に手紙が落ちていたことに気がついた。

何だろうか?私は手紙を開けた。


《やぁ。これを見ているということは転生は無事成功したんじゃな。

 君のことだが、赤ちゃんの頃から始めるのは無理があるじゃろう。

 その為、11歳まで育てておいたぞ。

 地球にいたときと同じ体じゃ。

 痩せすぎていたのと怪我を治しただけじゃから、

 体に馴染むじゃろう。

 

 少し歩くと道があるはずじゃ。

 そこを行けば『アラク』という国につく。

 そこは子供が何故か沢山寄り付く国での、

 身元が分からなくても受け入れてくれる。

 あとはそちらの国で聞いた方がよい。


 前言ったような危機には″今は”この世界は瀕していないが···

 出来ることならば破滅の未来を変えてくれ。

 と言っても特別強制させるわけではない。

 出来ることなら、と言う程度だ。儂が最悪なんとかするからな。

 じゃあなんで転生させたのかというところだが、

 まぁ、神のお情けと言うものじゃな。


 では、君の新しい人生に幸あらんことを。》


···なるほど理解した。

つまりこの世界を救えと。

神様は出来ることならと書いてあるが、本当は救って欲しいのだろう。

しかし今はと書いてある。

私が出来ることなんて分からないけれどやってみようか。

出来れば体の成長を待ちたかったが、

私は不老不死だ。だから成長はしないのだろう。

とりあえず、私はアラクへ向かうことにした。



* * *



「大きい···。」


その感想しか出てこなかった。

大きな門の中に大きな町。さらにその奥に大きな城。

本当にそれ以外の感想が出てこなかった。


「おや、どうしたんだい?こんなところで。」


一人の青年が声をかけてくる。

ここは子供が何故か沢山寄り付く国だと聞いた。

なら正直に言っても良いだろう。


「身寄りがない。」

「···そうか。ならこっちに来るといい。

 身分証を発行してくれるぞ。」


たったその一言で察したのか痛々しく青年は目を伏せた。


「···あぁ。」


私は門の近くにある何かの建物へ入った。


「おーい!この子の身分証が欲しいんだがー!」

「はーい!」


建物の中に入ると青年は大声を張り上げた。

しかし周りの人は一枚の大きな服だけ着ている

私を見ても皆慣れているようだった。


「あら、この子ね。貴女、読み書きはできるかしら?」

「うん。」

「そう、ならこの紙に名前と年齢を書いてくれるかしら?」

「うん。」


勢いよく言ったものの、私に名前なんてない。どうしよう···

あ、そうだ。ゼロにしよう。私は何もないから。

私は名前の欄にゼロと書き、年齢の欄に11と書いた。


「うんうん!ゼロちゃんね!じゃあ奥に来てもらっても良いかしら?

 ステータスを確認するわ!

 貴女みたいな子は大体スキルは見つからないけど、

 魔法の属性とかを知って方向性を知った方が良いからね!」

「分かった。」


随分と押しの強い女性に言われ、

神聖な水晶が真ん中にポツンと置かれている部屋に入る。


「この水晶はステータス認証水晶って言って、

 ステータスを確認することが出来るの。

 ステータスと言えば本人は分かるけど、

 他の人は分からないからね!」


こくりと頷いて私は水晶に触れる。

するとヴンッとステータスが開き、

転生する前に見た物と同じものが私の前に現れる。

それを見た女性は顔を青くしてどこかに行ってしまった。

もちろんここから動かないでね!と言いながら。

少し経つとバタバタと沢山の足音が聞こえて

私のいる部屋に飛び込んできた。


「こ···このステータスは···」

「全属性魔法が超級だと···!?」

「しかも不老不死···!?」

「嘘だろ···不老不死なんてこの国で一度も出たことがないぞ!?」

「希少な治癒魔法と空間魔法まで超級ですって···!?」

「しかも称号が『神の愛し子』だって!?」

「これでレベル1だなんて。レベル50でも到達できないわ。」

「あの、なんかありました···?」


何故か大人達が騒いでいるが、全く意味が分からない。

何かあったのだろうか。


「···いいかい、君の力はとても大きいんだ。

 ここにいるのはたまたま集まっていたギルドマスターだったから

 いいけれど、君の力は大きすぎる。

 国に悪いように使われるかもしれない。

 君の力は簡単に言ってはいけない。」

「はい···?」


大人の一人がすごい形相で私に向けて言った。

でも、それは私を心配しているからだと分かった。

むず痒いような、不思議な感覚がした。


「私は、これからどうすれば···」

「あ、そうね。貴女には二つの選択肢があるの。

 一つは普通に就職する。子供でも仕事は出来るから大丈夫よ。

 二つは冒険者になること。私は冒険者の方がおすすめよ。

 命を張り合うこともあるけど、その分報酬も多いわ。

 勿論危なくない依頼もあるから、それでもいいわ。」


なるほど。

冒険者は名前の通り依頼を受けて報酬を貰う職業なのだろう。

そして、命を張り合うというのはモンスター討伐。だろうか?

神様の破滅の未来···。出来ることならば変えてみたいと思う。

何かを感じるわけではないが、私は不老不死だ。

無制限の命を持つのだから少し位頑張ってみようじゃないか。

時間は沢山ある。


「···そうですね。私は冒険者になろうと思います。」

「そう。そう言うと思ったわ!!私のギルドに入って!!」

「ギルド?」

「えぇ。冒険者が依頼を受けるためにはギルドに入る必要があるの。

 そして私はギルドマスターよ。

 是非あなたのような有能な人材が欲しいのよ。」

「おい!待て待て!抜け駆けはなしだ!是非俺のギルドに!!」

「いや僕のところだよ!」

「いや私!」

「俺!」

「私!」

「僕!」

「儂!」


す、凄いな···どうすれば···。

あー、もう!いいや、私が目を瞑って決めよう!

私は目を瞑り、誰かの手を引っ張った。


「この人のギルドに入ります!!!」

「え、俺んとこでいいのか?」

「あー、やっぱりかぁ。」

「まぁ、世界最大のギルドには勝てないわねぇ。」

「ま、しょうがないね。」


どうやらこの人のギルドは凄いらしい。

中々にいい人を選べたのでは?


「まぁ、よろしく。」

「おう!歓迎するぜ!!」

「じゃあ早速ギルドへ···」

「の前に!お前ちょっと着替えてこい!」

「え?」


私はギルドに行こうと思ったのだが···


「服一枚じゃなくて!金は俺が出してやるよ!」

「いえ。そんな訳には···」

「いいんだよ!こういうときは便乗しとけ!」

「はぁ。」


私は何故か服を買ってもらい、着替えさせられた。


「お!中々に決まったじゃねぇか!」

「···どうも。」

「んじゃ俺のギルドに来い!」

「はい。」


私は急いで身分証を発行してもらい、

私のギルドマスター?についていく。

キョロキョロと辺りを見渡すと町はとても栄えていて、

とても活気溢れてみんな楽しそうだと思った。

しばらく歩くと、沢山の人が出入りしている『ドラゴンギルド』という

建物を見つけた。

十中八九ここだろう。

案の定ギルドマスターはそこに入っていき、私も足を踏み入れた。


足を踏み入れた先は沢山の笑顔が溢れていた。

私は心臓がなぜか温かくなった気がした。

なんだろうかと思いつつ、私はギルドマスターに聞く。


「ギルドマスター、冒険者になるにはどうすれば?」

「あぁ、これからその手続きをする。ついてこい。」


そう言われて連れられたのは受付だった。

恐らく、依頼の受付だろうか。


「おい、コイツを冒険者にするからプレート発行してくれ。」


ギルドマスターが言うと受付の人はパタパタと走り、

銀のプレートにFと書かれている物を持ってきた。


「はい、ではお名前は?」

「ゼロです。」

「分かりました。ゼロさんですね。ではこちらをお受け取り下さい。

 こちらのプレートのついた首飾りは冒険者の証です。

 冒険者は依頼を達成していくと

 冒険者ランクというものが上がります。

 初めはF級(ひよっこ)ですが、E級(駆け出し)D級(見習い)C級(一人前)B級(ベテラン)A級(トップ)S級(伝説)

 上がっていきます。

 S級に到達した人は千年のなかで一人のみですが···。

 説明は以上です。

 依頼の説明は受けた際ご説明させていただきます。」

「分かりました。」

「だってよ。ゼロ、お前は今日は宿に泊まれ。」

「え?でもお金···」

「バーカ。こういうときは便乗しとけっていったろ?」

「···ありがとう、ございます。」


ギルドマスターの心が、温かい。

私は心を失くした筈なのに、戻ってきているのだろうか。


ともかく、明日から頑張らなくては。


私は今日は日が落ちるまで魔法を考え、使い、

夜にはギルドマスターに予約されていた宿に泊まった。



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