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家政婦の彼女 -ふたりが夫婦になるまで3―  作者: はじめ みのる
そして僕たちの関係が始まる
2/39

ふたりで買い物


翌日。

栞里さんとふたりで散歩をしている。

家を出て、小学校の外縁からドラッグストアとコンビニの前を通過し、神社に着き参拝する。少し道を戻り、僕が通う高校、診療所、和菓子屋、食料品店、郵便局を通り、駅に着く。

休憩のため駅前のファミレスに入り、僕は紅茶、彼女はミルクティを注文した。


「一応これで、駅に向かう道の近くを案内したんだけど、役に立ったかな。」

「教えて貰えてよかったわ。お店が少し奥まったところにあるから、知らないと難しいわね。スーパーマーケットやショッピングセンタは無いの?」

「スーパーマーケットは、ここから反対側にある。このあたりかな。」


スマホで地図を表示して指差しながら説明する。


「いま通ってきたのがここで、ここからだとだいぶ遠いから後で案内するよ。ショッピングセンタは電車で2つ先のこの駅に行くとある。」

「よく行くの?」

「自転車で20分くらいだから、時々ね。衣服は近所では売ってないから。」

「行ってみたいわ。案内してもらえる?」

「わかった。」


ファミレスを出て、駅から電車で2駅乗る。駅から出てショッピングセンタに着いた。


「何度かここに来ているけど、大きな建物だなといつも思うんだ。」

「そうね、とても広いわ。今日だけでは見きれないかもね。ではちょっと回らせてもらうわね。」


彼女が前に立ち、フロアを歩く。僕はその後ろをついていった。しばらく歩いた後、彼女は紳士服売り場で足を止める。


「悠くんの服を買いましょ。」

「え?、要らないよ。」

「似合うのがあると思うの。任せて。」


彼女は服をいくつか持ってきて僕に合わせる。まるでデートではないかと思う。30分以上強制的に試着させられ、白のTシャツとライトグレーのジャケットに決まった。


「爽やかな感じね、似合うわ。今度それを着てデートしましょ?」

「・・・わかったよ。」


彼女の笑顔と、慣れない買い物での疲れから、肯定するしかなかった。


洋服を購入後、レストランに入り昼食にする。

僕はチキンステーキ、彼女はハンバーグを注文する。


「料理を勉強してきたのだけれど、悠くんが和食が好きと聞いたから和食を中心に勉強したの。洋食はまだ作ったことがなくて、ちょっと参考にしようかなって。」

「料理を始めて、長いの?」

「きちんと勉強したのは2週間前からなの。3年くらい前から時々お母さんに教えてもらってたけど、お遊び程度だったから。それでね、、」


彼女が料理の失敗談を楽しそうに話す。相槌をしながら聞き、可愛い人だなと思った。


食事の後、彼女の買い物に付き合ってから、ショッピングセンタを出る。

ここからバスが出ており、バス停のほうが家に近いため、バスに乗り最寄りのバス停で降りた。バス停前のスーパーマーケットで食材の買い物をしてから、家までの途中にある公園でひと休みをする。


彼女と並んてベンチに座った。


「ちょっと疲れたわ。だいぶ歩いたものね。」

「ああ、そうだね。」

「この公園、良いところね。落ち着くわ。」


川沿いで遊水地があり、カルガモが泳いでいる。花壇には花の苗が植えられており、咲いたら華やかであろうと推測する。若い男女が手をつないで歩いており、彼女のほうがカルガモを指さして嬉しそうにしている。


「悠くんは、好きな人はいるの?」

「え?」


いきなりの質問に戸惑う。どう答えたものかしばらく迷うが、栞里さんは静かに待っている。仕方ないと、正直に答えることにした。


「いるよ。」

「どんな人?」

「以前から変わらないよ。衿ちゃんだ。」

「そう。」


栞里さんは立ち上がり、川辺にいく。僕はベンチに座ったまま、彼女の後ろ姿を見ていた。


少しして彼女が振り返る。


「帰りましょうか。」

「そうだね。」




衿ちゃんにメールをする。

いつも日曜日の21時ころに送信しており、今日も同じ時間に自室にてメールを書いている。


「昨日、両親が海外に出発して、現地に無事に着いたそうだ。

家政婦さんが来たんだけど、誰だと思う? 来たのは栞里さんだった。

栞里さんが料理を作ってくれて、普通に美味しかったよ。

まだ1日だけだから分からないけど、普段と変わらない生活ができそうだと思った。」


数分後、彼女から返信が来た。今日もリアルタイムでやり取りできそうだ。


「無事に暮らせそうで良かったね。お姉ちゃんは以前と変わらなかった?」


「姿はだいぶ大人っぽくなって、最初誰だか分からなかった。見た目は変わったけど、今日一緒に買い物に出掛けた。穏やかで優しい。以前から変わらないよ。」


「よかったね。」


「だけどね、どうしても思い出してしまうから、仲良く出来るか分からないんだ。」


「お姉ちゃんも辛いと思うよ。どうしたら良いのかな。わたしも考えてみるね。」


「ああ頼む。君は今、どうしてるのか。」


「わたしはアルバイトを始めたんだ。やることが多いから暫く大変だけど、自由が利くから、慣れてくれば余裕ができそう。」


「どんな仕事?」


「料理のレシピを見ながら四苦八苦してる。」


「へー。頑張ってね。」


「うん、ありがと。ちょっと疲れてて、そろそろ終わるね。じゃあね。」


「ああ、またね。」




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