表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
家政婦の彼女 -ふたりが夫婦になるまで3―  作者: 海來島オーデ
そして僕たちの関係が始まる
13/39

由佳の手料理(2)


栞里さんと由佳ちゃんと三人で近所のスーパーに買い物に来ている。僕はカートを押しながら二人の後を付いて歩く。

栞里さんは食材を見ながらゆっくりと通路を進み、由佳ちゃんはあちこちに動き回っている。カートに次々と食材が入れられていき、3人3食(夕食、朝食、弁当)でこんなに要るのかと疑問に思い始めたころ、栞里さんが説明してくれた。


「多くてごめんね。後で使う分も一緒に買ってるの。大変だけど運ぶのお願いね。」

「わかった。任せてくれ。」

「悠人、これもお願い。」と由佳ちゃん。

「ああ任せろ。」

「なんだか、悠人、お父さんみたいだね。カートを押しながら黙って後ろを付いてくるところ。」

「そうか?」

「どこかに行っちゃったらお母さんから怒られるから。」


由佳ちゃんが楽しそうに笑っている。そういうものなのかと周りを見るが、平日の昼間だから当然だが、お父さんと思われる人の姿が見えない。そういえば父親と一緒に買い物をしたことがないと気が付き、世間一般のお父さんはスーパーでの買い物ではそういうものだと認識した。少なくとも由佳ちゃんのお父さんはそうなのだろう。少し楽しくなり、由佳ちゃんが娘で、お母さんは栞里さんかな?と空想する。


「ほら、こっち来て、お父さん。」


そう言って由佳ちゃんがカートを引っ張り喜んでいる。「おう、ちょっと待て」と言いながら引っ張られるままに付いていき、栞里さんの後を追いかける。


「はい、これで全部揃ったよ。」と栞里さんが牛乳をカートに入れた。

レジでの支払いを終わらせて、袋に入れていく。


「悠くん、はい、これお願いね。」

「えーと、ちょっと多くないか?」

「うん、お願い。お父さん。」と、悪戯っぽく笑う。


その顔を見て、仕方ないなと肩を竦める。


「あ、居た。栞里ちゃん。」


声のしたほうを見ると、由佳ちゃんが小走りで駆けてくる。


「ごめん、お菓子見てたら(はぐ)れちゃった。あ、これ持つのね。あたしはどれ?」

「由佳ちゃんはこれ。重いのは悠くんに頼んだところ。悠くん、お願いね。これ背負えるから。」と、買い物袋の肩掛けを掴む。

「ああ、任せてくれ。」



家に着き、居間で一息ついている。

ふたりは台所で料理の準備を始め、僕は椅子に座って寛ぎながらその様子を見ている。テレビを見ていると邪魔だろうし、勉強をする気にもならない。ただ居るだけというのは暇だなと思っていると、栞里さんから声を掛けられた。


「悠くん、出掛けてきたら?」

「いいのか?」

「うん。由佳ちゃんと仲良くするから大丈夫。」

「では、出掛けてくるよ。少し走ってくる。」

「悠人、美味しいの作っとくから。」

「ああ、楽しみにしてるよ。行ってくる。」


席を立ち、手を軽く上げてふたりに合図する。栞里さんが玄関まで見送りに来て「行ってらっしゃい」と見送ってくれた。



夕方になり帰宅すると、台所からふたりの楽しげな声が聞こえてくる。台所で仲良く料理をしており、揚げ物をバットに上げているところだった。


「ただいま」

「お帰りなさい」

「悠人、お帰り。」

「お土産にアイスを買って来たんだ。夕食後に食べよう。」

「いいわね、ありがと。御飯がもうすぐ出来るから、シャワー終わったら来て。」

「ああ、分かった。」


栞里さんにアイスの入った袋を渡し、シャワーに向かう。


シャワーから出て居間に行くと、由佳ちゃんがテーブルに料理を並べていた。炊き込み御飯、豆腐の味噌汁、唐揚げ、卵焼き、ポテトグラタン、野菜サラダ。


「美味しそうだね。」

「頑張ったよ。栞里ちゃんに教わりながらだけど。卵焼きだけでもいっぱい失敗しちゃった。食べて貰うものを作るって、大変だね。」

「そうだな。...ありがとう。」

「ん、どういたしまして。」


栞里さんが洗い物を終わらせて、こちらに来る。


「いつもよりちょっと早いけど、食べましょうか。」

「そうだな。」


ふたりが椅子に座る。三人揃って「いただきます」をする。


「炊き込み御飯は、由佳ちゃんがひとりで作ったの。」

「へー。うん、香りも良いし。...美味しいな。」

「えへへ、ありがと。簡単なのよ。麺つゆで味付けして、シーチキンとキノコを入れるだけ。あっ、あと油揚げね。」

「今日買ったやつ? 昆布つゆだっけ。」

「そう。うちで使ってるのを買って貰っちゃった。」

「無かったから丁度よかったの。他の料理にも使ってるわよ。」

「卵焼きも食べてみて、美味しいから。あっ、栞里ちゃんの味だから、悠人はいつも食べてるか。」

「うん、美味しいよ。」

「牛乳入れるのは意外だった。ふわりと出来あがって、美味しくて。」

「気に入ってもらえて嬉しいわ。」

「そのチーズ焼きも食べてみて。あたしが失敗したのを、栞里ちゃんがアレンジしてくれたの。」

「うん、これも美味しい。」

「ポテトサラダを作ってたんだけど、茹でるのが足らなくて失敗しちゃったんだ。串を挿して確かめるの忘れてた。」

「ああ、家庭科でやった憶えがあるよ。そんなのあったな。」

「そう、それ。基本って大事だね。そのポテトにベーコンとホワイトソースを掛けて、チーズを掛けて焼いたの。」

「そうか、美味しいな。」


由佳ちゃんが笑顔で栞里さんを見る。栞里さんも笑顔で由佳ちゃんと目を合わせてから頷く。

ふたりの雰囲気がすこし変わったと思う。楽しそうではあったが、どこかつっかえたような関係だった。それが今は無くなっている。

僕はふっと笑う。


「どうしたの?」と栞里さん。

「仲良くていいなと思って。」

「ん。」

「料理はもう終わり?」

「今日は終わり。明日の朝、稲荷ずしの中身を詰めて、おにぎりを作って、弁当箱に詰めれば完成よ。」

「栞里ちゃんが稲荷ずし。あたしがおにぎりを作るから。」

「楽しみだな。」


栞里さんが思い出したのか、話題を変えた。


「悠くんは、どこに行ってきたの?」

「お寺にお参りして、明日の無事故をお願いしてきた。」

「この前、走ったところ?」

「いや、今日は北に向かった。このあたりかな。」


スマホで地図を表示して指し示す。栞里さんと由佳ちゃんが覗きこんだ。


「名前は知ってるけど、行ったことないな。」

「わたしは知らなかったわ。」

「この辺りでは一番古いお寺だそうだ。」

「お寺には、よく行くの?」

「ああ。お寺と神社だな。」

「ふーん、悠人にそんな趣味があるとは、知らなかったな。」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ