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家政婦の彼女 -ふたりが夫婦になるまで3―  作者: 海來島オーデ
そして僕たちの関係が始まる
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料理(2)


下川さんと高橋さんを見送った後、僕たちは居間で座っている。慌ただしく騒がしい時間が過ぎ去った後の喪失感を感じていた。栞里さんは疲れたのだろう、項垂(うなだ)れている。


「お疲れさま。急に連れてきてごめん。疲れたよね。」

「ううん、由佳ちゃんに会えて、変わってなくて、嬉しかった。」

「そうか。良かった。」


お茶を飲みながら沈黙の時間が流れる。栞里さんは項垂れたままで表情が見えないが、気落ちしているのだと思う。

その理由について心当たりがある。

以前にもここで、今日と同じように料理をした。母さんが指示を出して、衿ちゃんと栞里ちゃんが台所に立っていて、僕はその様子を居間から見ていた。何の料理だったかは思い出せないが、その場面を憶えている。

衿ちゃんがフライパンで炒め物をしている。栞里ちゃんは包丁を握り野菜を切っている。そして僕は詩衿ちゃんを見ていた。

衿ちゃんが「はい、お待たせ。」と言いながら、出来上がった料理を僕の前に置く。

その日の帰り道。僕は衿ちゃんに恋人になってほしいと告白した。栞里ちゃんの好意に気がついていたが、僕は衿ちゃんを選んだ。

あれから3年半が経っている。


気がつくと栞里さんが僕を見ていた。

「なに?」と声を掛ける。


「え?、あ、なんでもないの。」


栞里さんは慌てたように手振りして微笑みを見せる。その表情は無理をしているように思えた。


「夕御飯を作るわね。...少しひとりにさせてもらえる?」

「大丈夫か?」

「うん。」

「わかった。部屋にいるよ。」


自室でベッドに座る。

料理をしている由佳ちゃんを見て、衿ちゃんを重ねて見ていた。料理を運んできた由佳ちゃんの言葉。衿ちゃんと同じ言葉に僕の心は乱された。

栞里さんはそれを見ていたかもしれない。

迂闊だった。自己嫌悪し、右腕を振り上げ強くおろした。ベッドのマットレスに当たり、反動で身体ごと跳ね、ベッドに横倒しとなる。横になったままで「何やってるんだ」とつぶやいた。



「夕食ができたよ。」と声を掛けられ階下に降りる。栞里さんを見ると、いつも通りの笑顔で出迎えてくれた。よかったと内心ほっとする。


「サバの味噌煮よ。前は失敗したけど、今日は出来てると思うの。」

「ん、美味しそうだね。」

「さあ座って。食べましょ。」


一緒に「いただきます」をして箸をつける。


ふと気が付くと、栞里さんが僕を見ていた。食事はあまり進んでいない。


「どうした?」

「ううん、なんでもない。少し思い出しただけ。」

「そうか。」

「美味しい?」

「ん、ああ、美味しいよ。鯖にしっかり味が染みていて、ふわりとしている。」

「良かった。」


僕が微笑むと、栞里さんも微笑みを返した。


「明後日、三人でどこかに出掛けないか。ピクニックだ。」

「いいわよ。明日の夜にお弁当を作って、朝から出かけましょう。候補はあるの?」

「ロープウェイに乗って、山に登らないか?」

「うん、いいわよ。由佳ちゃんにも伝えとくね。」

「ああ、よろしく。」



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