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秘密の場所

 寮の部屋を出て、驚いた。

たくさんの人?達が僕らの部屋の前に集まってたんだ。

 「人間だ!」「ほんとに来たんだ!」

と、ジロジロ僕を見てくる。

――怖い。

見られることすら怖いのに、こんなに視線が集まって、しかも囲まれているとなると、足が震えてくる。

 拳をぎゅっと握る。

それに気づいたのか、ミチヒトは僕の腕を引いて走った。

「あ、あり、がと。」

「ごめん。あーゆーの、苦手だよな。あいつらには俺から後で言っておくから。」

腕を握った手が、頼もしいと感じた。

「行こう。案内したい所が、たくさんあるんだ!」

ミチヒトが再びキラッキラの笑顔を見せた。

僕の笑顔とは月とすっぽん以上の差があるな、と思いながら、僕はミチヒトについて行った。

 ミチヒトは僕より全然背が高い。たからその分、足も長い。

同じ速さで歩いていても、距離が出来てしまう。

むぅ。なんだか悔しい。

 「着いたよ。ここが、陽太がこれから通うことになる、神学校だ!」

ミチヒトは大きな大きな建物を指さした。

で、でかい。さすが、神様!!!

学校がでかすぎて、寮から学校まで距離が微妙にある!さすが、神様!!!

僕は、大したことないはずの距離を歩いただけなのに、早くなった呼吸を整える。

そしてミチヒトの方をチラリと見た。

「あ、速かったか?悪い。」

なんだか負けた気分だ。(そもそも勝っている部分もないが、何となく悔しい。)

 「中は、学校来た時に、な。今日は時間がないし、まだまだ案内したいところが沢山あるんだ。」

ミチヒトはそう言うと、さっきよりも少しペースを落として、再び歩き始めた。

(モテるんだろうな。モテてるけど。)

学校につくまでの短い時間の中で、どれほどの視線を浴びたことか...

 そして、よく学校帰りによる場所だとか、寮からも近くて、商品も豊富なショッピングモール的な場所だとか、仲のいい店員さんや店長さんのお店だとかを次々と案内してもらった。

(正直どうでもいい場所もあったりする。)

 そして、人?気のない路地の方へ入っていった。

どこに行くんだろう?

進むに連れて、どんどん周りの音が無くなっていく。


 「ここからは、俺の秘密の場所。」

ミチヒトは、唇に人差し指をあてながら言った。

思わずドキリとしてしまった。

(やっぱりイケメンって、すごいなぁ。)

 路地を抜けると、小さな段がつらなった、大きな階段が立ちはだかっていた。

(一段一段が小さいからか、僕は登りやすいが、ミチヒトは登りにくそうだ。)

 階段を登ると、おとぎ話に出てきそうな、可愛らしい小屋と、この辺りを囲うように木でできた柵があった。

「わぁ!すごい!可愛い!おとぎ話みたい!」

僕は、まるで小さな女の子のように驚いてしまった。

 そして、引き寄せられるかのように、木の柵の方へ駆け足で向かった。

「わっ。家がたくさんある!建物がたくさんある!すごい!展望台?」

僕は振り向き、ミチヒトを見た。

固まってしまった。

ミチヒトは、とても優しい、暖かい笑顔を僕に向けていたのだ。

 「みちひと?」

僕は首を傾げた。

ミチヒトの顔が赤くなった。

「あ、わりぃ。その、なんてゆーか。...お前、可愛いな。」

...。ミチヒトは何を言ってるんだろう?

僕が、可愛い?

もう一度ミチヒトの顔を見た。

ミチヒトにつられて、僕の顔も熱くなる。

...ええ?!

 ミチヒトは固まった僕に近づいてきた。

「いい場所だろ?ここ。俺の秘密の場所なんだ。小さい頃から、何かあると、ここに来てた。誰にも教えたこと無かったけど、お前には、教えたかったんだ。」

 僕は少し顔を上に傾けないといけない、ミチヒトの顔を見た。

「なんで?」

ミチヒトは下に見える街を指さした。

「あっちは、陽太が、人間がいる世界なんだ。もちろん、あっちからは、こっちは見えないけど。面白いだろ?この場所は、二つの世界が見えるんだ。」

今度は振り返って、僕達の来た方を指さした。

(二つの世界....。)

 僕は再び、元いた世界を見た。

思い出があるわけじゃない。

だから、悲しいわけじゃない。

でも、明らかに、あっちとこっちとじゃ、違う世界だ。

(僕、本当に、神様の世界に来たんだ。神様は本当にいたんだ。)

 悲しくないはずなのに、なんだか胸の中がモヤモヤする。

さっきまでは、あんなにキラキラした気持ちだったのに。

でも、モヤモヤするのに、何故か落ち着くんだ。

初めてなのに、来たことがあるような気になる。

きっと、目の前に、見覚えのある景色がひろがってたからだろう。

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