本心
「ただいま〜」
って言っても、誰かが返事する訳でもないんだけどね。
あの後、僕は普通に教室に戻り、普通に家に帰ってきた。
なんだったんだろう。結局。
僕は、母さんと、兄さんと、妹の笑い声がするリビングには入らず、自分の部屋へ向かった。
僕の部屋は、2階の1番奥にあって、玄関から1番遠い。
制服のまま、ベットに倒れ込む。
なんか、疲れたな。さっきからため息が止まらない。
2階で、1番奥なのに、リビングからの笑い声が聞こえる。
僕は手で顔をおおった。
なんで、兄妹なのに、同じ血が流れてるのに、こんなにも違うのだろうか。
いくら出来が悪いからって、どうしてこんな思いをしなきゃいけないんだ。
いじめ慣れ?してるわけない。いくらいじめられたって、慣れるはずがない。
一人が好きなわけじゃない。むしろ、一人は嫌いだ。
本当は、友達だって欲しい。くだらないことで笑い合えるような、友達が。
いらないんじゃない。ただ、諦めていただけ。
本当は僕だって、母さん達と話したい。
笑ってほしい。喜んでほしい。
いつからだろう。いつから、こんなふうになってしまったのだろう。
昔は、こうではなかった気がするのは、心のどこかで、まだ希望を持っているからなのだろうか。
枕が冷たく濡れていく。
惨めだ。惨めで、醜い、恥ずかしい奴。
きっと杉野が見たらからかうだろう。
兄さんと妹が見たら、嘲笑うだろう。
...母さんは、母さんはもう僕の姿は見えていないだろう。
ふと、ミチヒトの笑顔を思い出した。
キラキラと輝いたその笑顔は確かに僕に向けられていた。
誰かの心からの笑顔を見たのは、向けられたのは、いつぶりだろうか。
冷たくなった枕が、暖かくなった気がした。
もしかしたら、これが、神様の力なのかな。
なんて、ね。