イケメン君
──翌日。
またしても今日は厄日なのだろうか。
いつも通り学校へ来て、一番後ろの窓際の席に座り、本を読もうとしていた。
そこに、奴は来た。
隣のクラスのイケメン君。学校一かっこいいイケメンが隣のクラスにいると、噂で聞いたことがある。(名前は忘れた。)
そんなイケメン君がなぜ僕の目の前にいるのだろうか。
「お前が佐野?昨日マナに会ったって、本当か?」
...マナ?あー、昨日の厨二病の女の子か。マナって名前だったっけ?
「それ、どこ情報、ですか?」
「マナに聞いた。なぁ、何聞いた?」
それよりもここで話すのをやめてほしい。
イケメンと地味な僕が話している様子はとてつもなく異様な光景で、周囲の注目を浴びる。
その状況から耐えられなくて、「覚えてない。」と、早く出て行ってくれと言わんばかりの口調で言った。
「そこをなんとか!」
イケメン君は顔の前で手を合わせた。
周囲がざわつく。
「わかった!そのかわり場所移動して。」
僕は校舎裏へと連れていかれた。
王道シチュすぎる。
これで僕が美少女とかだったらいいんだろうけど、僕は男出し、美しくもない。
そう言えば、このイケメン君は、あの女の子の兄なのだろうか。
「マナは友達だよ。ついでに言うと、この世界の200年分くらいは生きてる。」
...このイケメン君も厨二病なのだろうか。
残念だ。
「あ、信じてないな?!マナから聞いたんだろ?神様だって。」
あー、ね。言ってたな、そんなこと。
「なら話は早い。俺もそうなんだ。お前を探すためにこの世界に来た。なぁ、一緒に来ないか?」
なんなんだ一体。
無性に腹が立ってきた。
「神様なんているわけないだろ!」
「だから、昨日あったやつと、目の前にいるやつだよ!」
「神様なんかいない!どんなに頑張ったって、お願いしたって、何も変わらないじゃないか!」
「……っ」
「もし、もし本当に神様がいるとしたら、そんなやつ、大っ嫌いだ!」
息が荒くなる。
こんなに叫んだのは、話したのはいつぶりだろうか。
イケメン君は黙ってしまった。
「もう行くから。」
僕はその場から逃げ出した。
「おい佐野、あいつと知り合いだったのか?」
戻ってくると、クラスのほぼ全員から注目を浴び、杉野にも声をかけられた。
「あいつ?」
「あぁ?あいつとどっか行っただろ。高山道人。」
高山道人。そうだそうだ。そんな名前だった。
自分と関わることはないと思って忘れてた。
「違うよ。僕もびっくりしたし。」
僕はそう言いながら作り笑いをする。
「まっ、そうだよな〜。お前みたいなやつ、あの高山と知り合いなわけがない。んじゃ帰るか。カバン持てよ。」
「う、うん。」
これが僕の日常であり、普通だ。
さっきみたいな、普通以外のことなんて、あるわけが無い。
神様はいない。
じゃなきゃ、僕のこれは、『日常』になんかなるわけない。