告白 sideミチヒト
気が付いたら、陽太はいなくなっていた。
どれほどの時間がたったのだろうか。
たった数分、もしかしたら、数十秒のわずかな時間だったのかもしれない。
時の流れが感じられなくなるほど、俺は固まり、動くことが出来なかった。
そう、俺は、やってしまった。
やらかしてしまった。
なんで俺って、いつもこうなんだ!
好きだと自覚したのは、今日だぞ?
今日好きだと気づいて、今日告白?
はっ、バカにも程があるだろ、俺。
でも、仕方ないだろ。
止めることが出来なかったんだ。
自分の感情を抑えられなかったんだ。
それに、さっきのあれ。
不意打ちであれはずるい。
あれで自覚無しだもんな〜...。
無防備過ぎる。
だから、あんな危ないヤツ、ほっとけねー、守ってやらねーとって思っちまうんだよな。
って、全部言い訳だ。
俺は、今まで散々言われてきた、「感情のコントロール」が出来なかったんだ。
神として、私情に振り回されるというのは、致命的だ。
...これはまだ公表されてないが、あちこちで噂が絶えない。
──次期大神候補。
俺はこの第1有権者である。
代々、大神は、大神一族の男がなるもの。
現大神様には、娘が1人、マヤしかいない。
つまり、次に継ぐのは、大神様の弟である、俺の父親だ。
だが、俺の父は、拒否をしている。
周りもだ。
なぜなら、父は、控えめに言って暴れ馬だ。
短気で喧嘩っぱやく、政治どころか、勉強も危うい。
まさに根っからの体育会系だ。
そんな父が大神なったら、どうなることか...
そして、父の息子である俺が、今の第1有権者ってわけだ。
なぜ、公表されてないかというと、色々あるんだが、主とされる理由は、俺に流れる血の半分が、一般の、言わば、下級の神の血だということだ。
まぁ、多方、俺が優秀なのが鼻につくんだろうけど。
第2有権者は、父の姉の息子。つまり、俺やマヤの従兄弟にあたる、シノルだ。
シノルは精神年齢が幼い。正直に言うと、バカだ。
だが、俺のように、下級の神の血ではなく、代々受け継がれてきた伝統のある一族の血が流れている。
多分、シノル派の奴らは、裏で自分が実権を握ろうとしているんだろう。
しかし、そんな奴らは数える程しかいない。
つまり俺は、大神になるために育てられた。
だからこそ、致命的なのだ。
「陽太が戻ってきたら、謝ろう。」
そう思い、陽太の帰りを待っていた。
その日、陽太が帰ってくることはなかった。