自覚
…え?今、なんて言った?
僕が、好き…?!
「陽太?…っ!」
気が付いたら、僕はミチヒトのことを押していた。
「ご、ごめん。」
僕は部屋から飛び出した。
頬を伝う涙が乾いていくほど走った。
気づいてしまった。認めてしまった。
僕はミチヒトが好きなんだと。
気づきたくなかった。気づいちゃいけなかった。
だって僕は、人間で、神様にとって、道具でしかないんだから。
どれくらい走ったんだろう。
学校の敷地からも出てしまった。
「はあ、はあ...。も、だめ。」
僕はしゃがみこんでしまった。
まぁ、そうなって当然だろう。
寮から学校までの距離ですら疲れるのに、さらに長い距離を走って来たんだ。
足が動かなくなってもおかしくない。
べ、別に、僕の体力がないってわけじゃないから!多分...。
キキーッ...。
突然、僕の目の前に、黒光りの高そうな車が止まった。
嫌な予感しかしないんだが...。
その車から、2mあるんじゃないかと思う大きな二足歩行の牛が2頭?出てきた。
「佐野陽太殿。大神様の命でお迎えにまいりました。」
マジか。早くね?まだ心の準備が...。
なんて思ってるうちに、僕は車に乗せられていた。
...これって、誘拐なんじゃ(いや、大神様だもんね。大神様がルールだもんね!)
僕は再びあの長い階段やら廊下やらを通り、あの大きな扉の前に立っている。
あの時はミチヒトがいたからだろうか。
前よりも長く感じたし、扉は大きく重く感じる。
僕は息を吐いて進んで行った。