1つ目の秘密
寮に戻り、特にやることもなかったので、今日の復習と明日の予習をしていた。
「ふぅ、終わった...。」
ミチヒト、まだかな。
チラリとミチヒトのベットを見た。
(だめ、ダメだよ。ダメだ。)
僕の心が言っても、体が言うことを聞いてくれない。
僕はとうとうミチヒトのベットに倒れ込んでしまった。
「あ、ミチヒトの匂いだ。...僕、変態みたい。」
僕の秘密の1つ。それがこれ。
そう、僕は男の人しか好きになれない。
つまり、ゲイだ。
好きな人が出来たことはないけど、割と小さな頃から、周りと違うんだと理解していた。
僕、ミチヒトのこと、好きなのかな...?
はっ、ダメだ!好きになっちゃダメだ!
優しいのは、僕だけにじゃない。
だめ、勘違いしちゃだめ。
それに、「あの役目」が僕以外の人でも、きっと同じように接してた。
僕は、特別じゃない。
大丈夫、まだ好きじゃない。大丈夫。
そう言い聞かせながらも、僕はミチヒトのベットから動けずにいた。
人は目覚める時、色々な目覚め方をする。
自然と目覚める時もあれば、他の何かに起こしてもらう時もある。
そして、はっと目覚める時。
この時は、誰もが「ヤバっ」と、焦るだろう。
今、まさに僕はその状況にある。
ね、寝てしまった。しかも、自分のベットではなく、人様のベットで...!(あ、神様か。)
...見られている。
人の視線に敏感な僕は、ホラー映画の女優と同じくらい、ゆっくりと振り返った。
「あ、起きたか?お前、寝ぼけてベット間違えてるぞ!」
ミチヒトがケラケラと笑っていた。
嘘?!ほ、本人に見られてた!って、同室なんだから当たり前か。
むしろミチヒトじゃない別の誰かだったら、怖すぎる。
「おーい?まだ寝ぼけてるのか?」
そうか。寝ぼけてたことにしてしまえば、全て納得できるのか。
僕は、ただただ寝ぼけていただけなんだ。
「昨日買えなかったやつ、今日買いに行くぞ。今からだけど大丈夫か?」
窓の外を見ると、空はオレンジに色づいていた。
僕が帰った時にはまだ青かったのに。
「うん、下着、買わないと。」
「そんだけじゃないだろ。制服と、あと、私服と、部屋着は買わないとだろ。」
ミチヒトが冗談だろ、と言わんばかりに笑いながら言った。
...私服と部屋着って、何が違うのかな?
神様にとっては、分けることが当たり前なのか?
僕は自分のクローゼットの中を思い出してみた。
部屋着兼ちょっとその辺のコンビニに行く程度用の、紺色に黄緑のラインが入った、ちょっとオシャレなスポーツマンみたいなジャージ(もちろん兄のお下がりだから、似合わないけど)が1式。
それから、グレーと紺色のパーカーが1着ずつ、黒いズボンが2枚。
これらしか思い出せなかった。
いや、これしかなかったんだっけ?まぁ、今となってはどうでもいい話だ。