ふよふよのスライム?君
先生が教室に入り、それに僕も続いていく。
「あれが?」「おおっ、こいつがあの!」
教室中の視線が、一気に僕に刺さる。
僕の顔が熱くなる。
「あ、えと、佐野、陽太です。よ、よろしくお願いします....。」
緊張しすぎて視界が潤む。
パチパチ....
誰かが拍手をして、それに続いてもう1人が拍手し始めた。
ミチヒトとマヤだった。
「席は〜、、ミチヒトの後ろな。っても基本的には別の授業を受けてもらうから、あんま関係ないけどな。」
僕はミチヒトの後ろに座った。
けれども、視線は僕に刺さったまま。
「大丈夫だよ。みんな、珍しいだけで、すぐに収まるよ。」
ミチヒトは、なんだか安心できる。
でも、神様なんだ。あのことは知らなくても、僕を利用しようとしている、神様の一人なんだ。
信用は、しすぎちゃダメだ。
それに、いずれわかる時が来る。
どんなに良い奴でも、信用出来ても、僕の秘密を知ったら、離れていくに決まってる。
わかり切っていることだ。
「ほんとに人間なの?」「どこから来たの?」
休み時間に入った途端、僕はクラスの神達に囲まれた。
「あ、えっと、あの、、」
「おいお前ら、よーたが困ってんだろ。順番に言えよ。」
ミチヒトが声をかけてくれたおかげで、周りの人は順番に話しかけてくれた。
僕は日本から来たことや、マヤとミチヒトとの出会いなどを話した。
緊張したけど、ミチヒトのおかげで、何とかやっていけそうな気がする。
それから、皆とは別の授業を受け、お昼休みにはミチヒトと学食(そりゃもう、ご飯も内装も豪華だった。)を食べた。
「ど?まだ1日も経ってないけど、大丈夫そうか?」
昨日のことや、前の学校のことを気にしてるのだろうか。
僕はこくりと頷いた。
午後の授業を受け、ミチヒトは部活、僕は寮へと戻った。
その途中、ふよふよと浮いている、スライムみたいなやつに話しかけられた。
「おう、転校生!今帰り?俺はフヨオ!気軽にフーって呼べよ!ちなみに下級の神だから、気も使わなくていいぜ!」
なんともらしい名前なのだろうか。
下級って言うのが、これまた僕の知っているスライムみたいだ。
僕は思わず笑ってしまった。
「ふふっ。僕もよーたでいいよ。よろしく、フー。」
しばらくフーと歩いていると、
「なぁ、よーたはあんな沢山いる人間から、どうやって選ばれたんだ?」
...。やっぱり、気になるよね。そりゃ。
《他の神にもこの話をしてはいけないよ。》
ぞくりとした。
まるで、いるはずもない大神様が監視していて、僕に話しかけたように、鮮明に思い出された。
「僕にもよくわかんないの。あ、そう言えばミチヒトに伝言があったんだった。またね、フー。」
話題を切り替えて話をすることが出来ない僕は嘘を言って、走り出した。
ごめんなさい。話し上手じゃなくて。
もう少しミチヒトみたいに出来たら、あんな風に逃げ出さなくて済んだのに。
せっかく、話しかけてくれたのに、申し訳ない。