お風呂
この話は、番外編に近いですが、一応本編です。
僕は、ミチヒトの胸の中で、思う存分泣いた後、学校の寮に戻った。
「ああーー!!陽太の制服とか買うの忘れてたーーー!!!」
....あ。そういえば、そうだった。
「ごめん!!!ほんとわりぃ!」
「いいよ、別に。僕も悪いし。でも、下着とか、どうしよう?」
シャツとかは最悪いいとして、さすがにパンツを2日連続で履くのは、気が引ける。
「俺の貸すよ。嫌かもしんねーけど。制服は、明日もそれでもいいか?」
貸してくれるんだ。僕は頷いて、「ミチヒトのなら、嫌じゃないよ。」と言った。
ミチヒトは、そっぽをむいてしまった。
あ、僕じゃなくて、ミチヒトが嫌だったのか。ミチヒトは優しいから、言わなかっただけ。なんで僕、気づかなかったんだろう。
「風呂、部屋と大浴場とあるけど、沸かしてないから、大浴場でいいか?」
すごい、部屋にもあるんだ。
「うん。」
本当は、あまり人、じゃなくて、神様と会いたくないから、部屋が良かったけど、わがまま言えないもんね。
僕は今、夢の世界にいる感覚だ。
ここは寮の大浴場、の、はずだ。
大浴場の脱衣場って、こんなに広いっけ?
ロッカーも色んな大きさや、形がある。
浴場も同じく、色々な大きさや形のシャワーや湯船もある。
そして、様々な形や大きさの神様?達。ミチヒトのような人型や他の動物や、見たことないような形の神様がいた。
さすが、神様の大浴場だ!!
「すっごい!大きい!広い!」
ついはしゃいでしまった。
そのおかげか、さっきまで心配そうに僕を見ていたミチヒトが、今は僕を見て笑ってる。
(あ、僕、馬鹿にされてる?)
僕は頬を膨らませて、そっぽを向いた。
「ごめんって。ほら、空いたぞ。」
僕達のサイズに合うシャワーが混んでいて、やっとあいた。
僕は、なるべく目立たないよう、頭と体と顔を洗って、湯船に浸かった。
「はぁ」
思わず息が漏れてしまった。
「疲れたか?色々連れ回しちゃったな。」本当は、それだけじゃないんだけれど....。
しばらくミチヒトと2人で呆けていると、
「おー!ミチヒト!しばらく見ないと思ってたら、人間んとこに行ってたんだって?!かっわいそーにな!」
2メートル以上ある大男が声をかけてきた。
可哀想....。神様からしたら、人間界って、そういう場所なのかな。
(あれ?でも、人間になりたい神様もいるんだよね?)
「お!ハヤト!おまっ、そういうこと言うんじゃねーよ!」
ミチヒトが僕をチラリと見て言った。
(僕に気を使ったのかな。)
「ハヤト?」
ミチヒトと言い、人みたいな名前だな。
「ああ、神は名前が2つあるんだ。正式な名前は長いから、普段はもう1つの名前でみんな呼んでるんだ。」
なるほど、確かに長いのはめんどくさいし、覚えられないもんね。
いや、そんなことより、大変な状況になってしまった。
せっかく目立たないようにしていたのに、この、ハヤトとかいう神様の声が大きいせいで(大きいのは体だけにしてほしいよね。)、一気に注目を浴びてしまった。
怖すぎる、大浴場。ここは危険だ。
僕は、勢いよく立ち上がった。
「ぼ、僕、先上がるから!」