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ーメルの過去④ー

次回はオヤジさん目線のメルの過去だと言ったな?あれは嘘だ。


本当にすいません。しかもなんか最後の方がビミョーなので修正入るかもしれません……。



運命の日、私は朝から体に異変を感じていた。


たびたび意識が遠くなる感覚に襲われ、その度に見たこともない光景が見えた。知らない人、知らない場所……でも、何故か懐かしく感じた。


「今日は一日お休みさせて頂いた方がいいかな……。」


一瞬とはいえ意識が遠くなってしまっては仕事に支障が出てしまうかもしれない為、私は休みを頂く事にした。



「あ!メル見つけた!」


お休みの許可を頂きにフリージアさんを探しているとお嬢様に見つかった。


「え、お嬢様?今は先生とお勉強中のはずでは?」


「先生はさっきお父様が解雇したの。メルを辞めさせた方がいいって言うから、お父様がカンカンに怒って追い出した!」


「そんな……、これで二人目ですよ!?」


そう、これで二人目。しかも雇ったのはほんの数日前だ。




一人目の先生は私を見た瞬間あからさまに嫌な顔をし、次の瞬間には悪態をついてきた。私がそれを華麗にスルーすると、それが気に食わなかったのか今度は何度も足をかけて転ばそうしてきた。まぁ、そんな事で私は転ぶはずも無くそれも華麗にスルーした結果、最後はコーヒーをわざとらしくぶっかけられ罵声を浴びせられた。

正直私にとっては屁でもなかったのだが、偶然リアにその光景を目撃されており、旦那様にチクられ、その結果先生は解雇されたのだ。


「もう!メルは大切な家族なんだよ?家族を侮辱されて怒らない訳ないじゃん!」


「お嬢様……。」


先生には申し訳ないが、この優しさがすごく嬉しかった。





でも大事にされればされるほど、ここでの生活を失いたくないという気持ちが募っていった。


フェンリルでいる限り、いつかは必ず終わりが来る。


組織から指令が出れば、必ず従わなければならない。

従わなければ消される。



もし、この家を手にかける指令が出たら……今の私は間違いなく自分が死ぬ方を選ぶだろう。



私にとってグランベール家とシルヴィアはかけがえのない存在になっていたから。



別れる時は自分が死ぬ時。


『メル』はすでに諦めていた。






「メル、大丈夫だからそんな顔しないで!それよりね、これから買い物に行きたいの!一緒に行こう!」


お嬢様は、私の手を取り笑顔で言った。


「買い物ですか?私と二人でですか?」


「そう!大丈夫、お父様にも許可貰ったから!すぐ帰ってくれば良いって!ね、だから行こう?」


いつもは家族の誰かと執事を連れて出掛けているので、私と二人きりなんて初めての事だった。



「……かしこまりました。旦那様の許可があるのでしたらお供致します。」


私は自分の体調の事も気になったが、お嬢様と二人で町に行く機会なんてもしかしたらもう二度と無いかもしれないと考えたら断る事ができなかった。


「やった~!ありがとう、メル!馬車をお願いしたから準備できたら玄関に来て!」


町までは徒歩でも行けるが、馬車なら徒歩より早く安全に目的地まで行けるし、ドアtoドアなら私がこんな状態でもなんとかなるだろう。私は少しホッとした。


「はい、かしこまりました。」


私は自室に戻り地味めなワンピースに着替え支度を整えるとすぐ玄関へ向かった。今思い出すと、昔から私の私服は地味めなワンピース数着しか持ってなかったんだな。


玄関へ行くとすでにお嬢様が待っていた。


「お待たせ致しました。」


「ううん、行こう!」


二人で馬車に乗り込み、目的地に向かい出発した。



「本日はどちらに行かれるのですか?」


「お花屋さん!花束を買いたいの!」


お嬢様の言葉に胸のざわつきを感じた。


「……何故ですか?」


「お父様とお母様にプレゼントしたいの!」

ーー花にしようかな。


急に意識が遠くなる感覚に襲われ、

そして遠くなった意識の中にお嬢様ではない声を聞いた。


「ほら、もうすぐお父様とお母様の結婚記念日だしーー」

ーー結婚記念日、何もしてあげた事無いし最後くらい……。


お嬢様の言葉の後に謎の声が頭に直接響いてくる。



「こないだの誕生日にメルがブローチくれたのすごく嬉しかったから!私も二人に何か買ってあげたいなって!お母様お花好きだし!」

ーーお母さん、お花好きっだったはずだし。


私は言葉を発する事ができず、この感覚にただ身を委ねる事しかできない。冷汗が背中をつたう。




「どんなお花にするかはもう決めてるんだ~!」

ーー何色の花が好きだったっけ。……あ、そうだ。


聞いているうちに、徐々に聞き覚えがある声と内容である事に気が付いた。冷たくなる体とは反対に目頭が熱くなる。




「お母様が幸せが来るみたいで好きって言ってたからね~。」

ーー風水とか気にする人ぢゃないけど、昔よく飾ってあった気がする。




あぁ、これは………。




「黄色い花!」ーー黄色い花。


私の前世だ。


ドクンっ


「あぁっ!!!」



「メル!どうしたの!?」


悟った瞬間激しい頭痛に襲われ、ダムが決壊したかの様に大量の記憶が一気に頭に流れ込んできた。

私はその流れに抗えないまま頭を抱え込んでうずくまり喘ぐしかできなかった。


数分後、次第に記憶の流れがゆっくりになるにつれて頭の痛みは引いていき、完全に痛みが治まる頃には私の顔は涙や鼻水でグチャグチャだった。


そんなグチャグチャの顔のまま、ゆっくりと体を起こすと両目一杯に涙を貯めたお嬢様がこちらを見ていた。



「シルヴィア…お嬢様……?」


「そうよ!シルヴィアよ!だいじょうぶ!?今日はもう帰ろう!御者さん!屋敷に戻って下さい!」


そう言った瞬間、お嬢様は私にギュッと抱きつき泣き出した。

お嬢様は屋敷に着くまでずっと私に抱きついたまま離れなかった。


屋敷に帰るとすぐに医師が呼ばれ、私は診察を受けた。前世の記憶が戻ったんですなんて言える訳もなく、体に異常はなかった為ただの疲労ということで収まった。

結果私は数日の自室療養を言い渡された。




見慣れた自室が他人の部屋のように感じた。

メルの記憶はあるが、どちらかというと前世の自分にメルの記憶が入ったようなそんか感覚だった。


そして、不思議な事に記憶が流れ込んだ瞬間に私は自分の置かれた状況が全て理解出来た。



ここは自分が前世にプレイしていた乙女ゲームの世界。


シルヴィア=グランベールはヒロインで、自分は悪役である。


ゲーム通りであれば、どのシナリオでもメルは死ぬ。



「私はまた、諦めるの……?」



私は前世を諦めていた。


前世の家族との幸せは、なんの前触れも無く崩れてしまった。


だから許せなかった。崩れるのが分かっているのに何もしなかった『メル』が。諦めてしまった『メル』が。『メル』が好きだと思う気持ちと一緒に生まれた負の感情だった。



『私だったら絶対に諦めたりしない』



自分だって諦めたくせに自分を棚に上げて何を言っているんだと誰しもが思うだろう。


でもその感情を抱かずにはいられなかった。


自分は可哀想なのだと、自分は不幸なのだと決めつけたかったから。


あの日、私は両親にプレゼントを渡した後、死ぬつもりだった。


来世なんて信じてなかったけど、もしも来世があるのなら


『諦めたくなったとしても、諦めなくていい人生がいい。』


そう、思った。


そして今、


「まさに、ピッタリの人生……ですね。」


メルが諦めた人生。

『私なら絶対に諦めない』と言った人生に私は存在している。



神様は私にチャンスをくださったんだ。


メルに生きるチャンスを。

私に人生を諦めないチャンスを。


それなら絶対に無駄にしたくない。




「ふふ……手始めに、最初のフラグでもへし折りますか。」



こうして私の前世を思い出した新しい人生を生き抜く戦いが幕を開けた。。


次はオヤジさんです。

次こそはオヤジさんです。

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