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ー18ー襲撃

やっと投稿できました。そして長くなってしまいました……すいません。あと視点の書き方を変えました。もしかしたら、前の章もこの視点の書き方に修正するかもしれません……。その時はまたお知らせ致します。


一瞬だった。


シルヴィアを取り込んだ黒い獣は馬車に溶けるように消えてしまった。

意識を失ったマリアだけを残して。


さっきまで一緒にいたのに。

さっきまで笑っていたのに。


シルヴィアがいない。


リカルドはギリッと歯を食い縛ると鋭い視線を男に向けた。


「シルヴィアを……返せ!!」


「あ、もしかして婚約者かなんかだったか?貴族様は婚約者がいるもんだよな~。いや~すまねぇけど次を見つけてくれ。お前なら代わりなんて選り取りみどりだろ?」


男はリカルドの顔をマジマジ見ながらニィッと笑って言った。


その笑みに対しリカルドは一層強く男を睨み付ける。


は?次?代わり?ふざけるな。

シルヴィアの代わりなんていない。


ふつふつと沸き上がる怒りが殺気となっと吹き出す。


「だまれ。早くシルヴィアを返せ。」


リカルドが低く声を絞り出すと男はトンっと後ろへ飛んで距離を取り、またニィッと口角をあげた。


「ははっガキでその殺気か。末恐ろしいとはこういう奴をいうんだな。」

うっすらと額に汗を滲ませた男はそう苦笑い気味に言うと森に向かってピィッと指笛を吹いた。

指笛を吹いた直後森から馬が現れ、男はヒラリとその馬に飛び乗る。


『逃げられる』そう察したリカルドはすばやく魔法を詠唱し男に向けて放った。が、男に当たる寸前のところで黒い獣が飛び込んで来て、魔法は獣にぶつかった瞬間消えてしまった。


「はは、悪いな。こいつらに魔法は効かないんだわ。じゃあ、お姫様は貰っていくぜ。よし、お前ら!引くぞ!」

魔法を消され驚くリカルドに対し、口元しか見えない男はまたニィッと笑うと軽く手を振った。


馬を走らせた男に対し我にかえったリカルドが再度魔法を放つが、またしても黒い獣達に阻まれてしまう。

「くそっ!シルヴィアっ!」

獣達が行く手を阻み追いかける事もできない。

切りつけても再生し、魔法も効かない。

ただただ自分の無力さに腹が立つ。


「リカルド様!!」

自分を呼ぶ声にバッと後ろを振り向くとヴァイエルとラウドが駆け寄ってくる所だった。

どうやら二人と対峙していた者達も馬で逃げたらしい。


「ヴァイエル!ラウド!シルヴィアが連れ去られてしまった!」

「なっ!どうしてシルヴィア様が!」

「狙いは最初からシルヴィアだったんだ。町でお前が感じた視線もあの者達のものだろう。早くこの獣達を突破して追いかけなくては。」


獣達はうなり声をあげ三人を威嚇している。

どうしたらいい。馬も逃がされてしまった。このままだとシルヴィアが……。

打開策が思い付かずただただ焦りと怒りだけ募っていき、最悪のビジョンがリカルドの思考をジャックする。


シルヴィアの笑顔が脳裏に浮かぶ。


こんな時に自分の中のシルヴィアの存在の大きさを実感することになるなんて。


もうこうなれば自分のもてる力をすべて使ってでもどうにかして強行突破するしかない、とリカルドが覚悟を決めたその時、


「やはり間に合わなかったか……。」


突然第三者の声が聞こえ、直ぐ様声の方を向くとそこには2人の人影が立っていた。

さっきの男達同様フードとローブで姿を隠しているが、2人は先程の男達と違い漆黒のローブを身に纏っている。


「何者だ!!」

気配も無く突然現れた二人に対し、ラウドが剣を構え殺気を放ち叫んだ。

しかし当の2人は殺気に動揺する様子も無くスッと立ったまま身動ぎ一つしない。


「とりあえず、君らと戦う気はない。」


フードの為表情は分からないが殺気に動揺している様子も無い上、淡々とした口調で返事が返ってきた事で相手に対する警戒が一層強くなる。



「信じられるものか!」


ヴァイエルが声を張ってそう言うと、男はハァと一息付き隣の仲間の肩をポンっと叩いた。叩かれた方は一切言葉を発する事無くただコクリと頷くとクルッと後ろを向き、森に入っていった。


「少しだけ待ってくれ。」

残った男はそう言うと無言になる。

普通ならこんな状況で待ってくれと言われも待つはずがないのだが、何故か男の発言を無視する事できず沈黙が流れた。

待たなくてはいけない、そんな気がした。


そして約1分後、


「キャインッ」

「!?」


突然森の中で獣の悲痛な叫びが聞こえ、その瞬間囲んでいた獣達が消滅した。

砂が風に舞うようにサラサラと消えて無くなった。


ーーガサガサ

この状況に驚いているリカルド達の前に、先程森に入っていったフードの人物が片手に黒いもの掴んで森から現れた。


そしてその者は手に掴んでいた黒いそれ(・・)を三人の目の前に投げた。地面に転がり動かないそれ(・・)は狼のような姿だが見開いた瞳は血のように赤く、額にも瞳があり、あきらかに普通の動物ではないとわかる。


「よくやった。……さて、こいつがさっきの黒い獣達の『核』だ。細かい説明は省くがこいつを殺ったからあいつらが消えた。」

男は黒い獣を指差しながらそう言った。



「お前達は……本当に何者なんだ……。」


ラウドは獣に向けていた視線を目の前のローブの二人に向ける。。

そして突然現れ自分達が苦戦していた相手をいとも簡単に消し去ってしまった二人に対し当然の問いが声となって口から漏れた。



「そう言えば名乗っていなかったな。我々は……フェンリルだ。」

問いに対し、先程から会話を担当している方が三人に一歩近づき答えた。


「フェンリル!?」

「フェンリルだと!?」


その答えに瞬時に反応したのはラウドとヴァイエルだった。

その反応は当然と言えば当然だろう。

謎に包まれた組織と言えど名前だけは裏社会一の知名度を誇る巨大組織だ。国の敵に成りうる可能性がある存在を国を守る国家騎士団が知らないはずがない。

反射的に二人は腰の剣に手を伸ばす。


「待て二人共!僕もフェンリルの名は聞いたことがある。しかし今はこの状況を打開してくれた事に感謝し一刻も早くシルヴィアを助けに行くべきだ!」

リカルドは対峙する二組の間に入りラウドとヴァイエルに言った。

その言葉に、言われた二人はハッと我に帰る。


「申し訳ありませんリカルド様!」

「申し訳ありません!」

二人はリカルドの前に行き膝をつき深く謝罪した。


リカルドは二人の謝罪を受けると今度はフェンリルと名乗った二人の方を向き口を開いた。


「………どうか、手を貸してもらえないだろうか。」


「リカルド様!?」

「フェンリルに依頼するのですか!?」


リカルドの言葉に二人は耳を疑い酷く動揺した。

当たり前だ、王族が裏の組織に力を借りようとしているのだから。


だが二人の声に動じる事無くリカルドはそのまま続ける。


「シルヴィア……連れ去られた婚約者を助けたい。」




「我々に依頼するのか?その身分で。」



全て知られている。リカルドはそう悟った。

しかし自分の今の力ではシルヴィアを助けることはできない。

シルヴィアを助ける為の選択肢はもう1つしか残されていないのだ。


「依頼する。」



「いけませんリカルド様!!」

ラウドが必死に止めようとするが、リカルドの瞳は真っ直ぐとフェンリルと名乗る二人を見つめていた。揺るがない強い意志がそこにあった。


「自分の立場を(おびや)かしてでも助けたいと言うことか。ははは、必死だな。だが嫌いじゃない。……まぁ、安心していい。すでに我々の仲間が逃げた奴等を追っている。もう追い付いているだろう。」


フェンリルの男は愉快そうに笑って言うとリカルドに歩み寄った。


「元々我々は奴等に用があったんだ。だから君の婚約者は奴等の捕縛も兼ねて助けるよ。」



「!!」



「これは依頼ではない。我々が勝手にすることだ。」



「………っ!」



それを聞いたリカルドは張っていた気持ちの糸が緩んだのか力が抜けたようにカクンと両膝を地面つき両目から涙をこぼした。


無理もない。思考や見た目が大人びているとはいえ戦闘慣れもしていない、まだ12歳の少年だ。


「リカルド様!!」

ヴァイエルが素早くリカルドに近づき支える。


男は座り込むリカルドの前に膝をついた。


「……なぁ、簡単に信じていいのか?フェンリルを。」


男の問いにリカルドはゆっくりと視線を男に向けた。



「……あなたは僕達を助けてくれた。……僕は『あなた』を信じる。そう決めた。」


リカルドの言葉に男がピクリと反応した。


ーーだって助けてくれたぢゃないか。それは真実だろ?だからお前を信じるよ。私の勝手だ。


男の脳裏に遠い記憶が甦る。


「………蛙の子は蛙……か。」


聞こえないくらい小さな声でボソリと呟くと、男はスッと立ち上がり片手を上げた。その合図にもう一人のフェンリルが男に駆け寄る。


「お嬢さんの迎えと馬と奴等の回収を頼む。あとアイツが心配だ。やらかすまえに止めろ。」


指示された方はコクリと頷く。


「あとそちらの護衛のどちらか1人、一緒に行ってほしいんだが。」


「それなら俺が行きます!」

リカルドをゆっくり立たせながらヴァイエルが言った。

ヴァイエルの口調からもう彼らを敵と見なしていない事が感じ取れる。


「頼んだぞ、ヴァイエル。」

ラウドがヴァイエルに代わりリカルドを支えながら言った。


「はい。」


「……シルヴィアを頼む。」

相当限界なのだろう、意識を手放しそうになりながらリカルドがヴァイエルの肩に手を置く。


「はい、必ず。」

ヴァイエルがその手に優しく触れ笑顔で言うと、それに安心したのかリカルドはスッと意識を失った。


「よし、ぢゃあ君達は馬車の中にいてくれ。護衛はまかせろ。じゃあ頼んだぞ二人共。」


「……。」

「はい!」


二人は森から呼んだ一頭の馬に相乗りするとすぐに勢い良く駆け出して行った。




それを見送ったラウドがリカルドを抱え馬車に乗り込んだ後、男は護衛の為1人外に残り、


「リト、メルを頼んだぞ……。」


馬が走り去った方を見つめながらポツリと呟いた。

いつになったらメルたんのラブコメ書けるんだろう……。


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