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ブックマーク、本当に、本当にありがとうございます!!もう、がんばんばります!!
「……ガッデムッッ」
「メルちゃん……落ち着きな……。」
私は今、猛烈に絶望している。
私が何をしたっていうの!?
私の何がいけないの?私に何が足りないっていうの?
どんなに汚れたって、どんなに辛くたって、何度も何度も繰り返して頑張っているのに!皆も支えてくれているのに!
どうして……どうして私だけ!!
「膨らまないのですかシフォンケーキさんっ!」
「材料一緒で俺が作ると膨らむのにね。」
「ガッデムッッ!!」
「だから落ち着きなって。」
私の目の前には無数の膨らむはずだったシフォンケーキ達が並んでいる。ここ2日、時間を見つけてはシフォンケーキを焼き続けた。
が、1つも膨らまない。
材料の分量を変えたり、焼き時間や温度を変えたりしたのに全くダメだった。
なのに、ベンさんが作ると綺麗に膨らむ。
「もういっそベンさんが作ったものを私が作ったものとして出すしか……」
「絶対にバレるぞ。」
ですよねー。
「もう、今日の昼過ぎには来るんだろ?次が最後だな。」
「はい。材料も残りわずか……。これがラストマッチです。」
「戦いかよ。」
散々ペチャンコのシフォンケーキを食べ続けた皆さんのためにも最後は成功させなくてはいけない。
今あるこのシフォンケーキ達も食べてもらわなくてはいけないのだ。
ふわふわのシフォンケーキを見せて「皆さんの(胃袋の)おかげでふわっふわのシフォンケーキが出来ました!」って言いたい。。
ここはゲームの世界だ。奇跡が起きる可能性がある!
「全身全霊をかけて、この勝負挑みます。いざ!」
「よし、がんばろう!」
奇跡を起こして見せます!!
ーーーー正午過ぎーーーー
「なるほど、これがメルのシフォンケーキ。シルヴィアの言った通り確かにペチャンコだね。」
起・き・ま・せ・ん・で・し・た。
「はい、これがメルのシフォンケーキです。見た目は厚みの無いベイクドチーズケーキみたいですが味はシフォンケーキです。」
お嬢様、的確なコメントありがとうございます。
最後のシフォンケーキもやはり膨らまず、ギリギリまでベンさんのシフォンケーキを出そうか悩んでいたが、突如調理場に乱入してきたお嬢様により、結局ペチャンコのものを出す事になってしまった。
「確かに味はシフォンケーキだね。僕は嫌いじゃないよ。」
語尾に「好きでもないけど」が隠れている気がしますよリカルド様。
「よかったです。私はメルのシフォンケーキ大好きなんですよ。」
んんん、お嬢様尊い。
「シルヴィアは本当にメルが好きだよね。あ、そうだ、今日はメルのシフォンケーキを食べに来たのもあるんだけど、シルヴィアに話したい事があったんだ。」
「話したいこと?なんでしょうか?」
「うん、その前に聞きたいんだけど、シルヴィアは好きな人はいる?」
「メルですね。」
お嬢様ったら!私も好きです!
「あ、うん知ってる。でもごめんね。恋愛的な意味で。」
まぁ、そうですよね。
「恋愛的に好きな人………いませんね。」
出会い無かったですもんね。
「そっか。じゃあさ、僕と婚約しない?」
え、リカルド様今なんて?
「え?……え?」
お嬢様、分かります。混乱しますよね。私も混乱してます。
「リカルド様、私の聞き間違えでなければ、今お嬢様に婚約の申し込みをされましたか?」
「うん、したよ。」
マジですか…。
リカルド様との婚約ってこんなに早くなかったし、こんなに軽くなかったよね?
ん?あ、いや、待て、申し込み自体は軽かったか。
こんな感じで確かお茶してる時に、婚約しないかと聞かれるんだったな。
なんだ、状況は今と変わらないじゃないか。
ただ、前世の時は中々展開が進まなくて(というか進んでいるのかが分かり難くて)ヤキモキしていた所に突然「婚約しない?」って言われたから嬉しすぎて軽さとか考えてなかったんだなきっと。
でも今回は出会ってまだ一週間も経ってないからなぁ。
この展開の早さ、普通に考えると……
「他のご令嬢避けにお嬢様を使うのですか?」
こう考えちゃうよね。
「まぁ確かに、僕は皇太子だから立場上周りからしつこく婚約者を作れと言われるし令嬢からの申し出も多い。出会って間もないシルヴィアに婚約を申し込んだらそう思われてもしかたないよね。でも……」
リカルド様は困ったように私に笑った後、急に真剣な顔になりお嬢様の手をとった。
「会って間もないけど、シルヴィアならいいかなって思ったんだ。他の令嬢とするくらいなら、シルヴィアと婚約したい。」
まっすぐにお嬢様を見つめる。
あぁ、この人は……。
「好きな人が出来るまででいい……僕と、婚約して?」
お嬢様に惹かれているんだな。
ハッキリとした自覚はまだ無いようだけど、
自覚よりも先に体が動いたのね。
ゲームのリカルド様も非の打ち所のないイケメンだったけど、シルヴィアという少女にはとことん弱かった。
真剣な恋愛をしたことがなかった、というか元々恋愛に興味が無かったのもあると思うが、
彼女が絡むと余裕が三割減で、必死になったり、テレたり、独占欲丸出しになっていた。
まぁ、それはゲームの中で『好き』を自覚した後の話だが。
今世のリカルド様はシルヴィア様に惹かれるのが早いからもう始まるかもしれないな。
私的には嬉しい展開だ。
問題はお嬢様が婚約を受けるかどうかだが、
きっとお嬢様は受けるだろう。
何故わかるかって?
長年のカンですよカン。
「わかりましたわ。リカルド様に好きな人が出来るまで、婚約致します!」
ほらね。
お嬢様は優しくて鈍感で優しいから、勘違いもプラスしてリカルド様に好きな人が出来るまでの繋ぎになろうと思っちゃったんですよね。
「え、いや僕じゃなくて…」
「皇太子殿下ですもの、おモテになるのは至極当然……好きな方を見つけるのも大変ですわ!友人として、尽力致します!」
お嬢様の鈍さはゲーム通りで逆に安心しました。
私、何度も選択肢にはイライラさせられましたよ。
「任せてください!何を言われても負けませんわ!」
でも、
「わたし、こう見えてタフですの!」
いつも自分の事より他人の為に全力なあなたは、
「でも、婚約者としてどう振る舞っていいのかまだ勉強不足なので……。」
眩しくて
「リカルド様にご迷惑をお掛けすることがあるかもしれませんが………。」
眩しくて
「これから友人謙婚約者として宜しくお願い致しますね。」
この笑顔にはどうしても敵わないんですよね。
「……ありがとう、これから宜しくね。シルヴィア。」
だからリカルド様お願いです。今はまだいいです。ゆっくりでいいですから、いつかかならずお嬢様に気持ちを伝えて下さい。
お嬢様はハッキリ言わないと伝わらないからハッキリと伝えて下さい……。
私が全力でサポート致しますから。
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後日、リカルド様がアンドレア様にお嬢様との婚約の許可を頂きにお越しになり、正式にお二人は婚約することになった。
そして私のお嬢様トゥルーエンド計画の実現が確実に近づいた。




