ep.001 飛騨に行きたい
ちなみに、凜花と楓樺にはイメージモデルがおりまして、凜花は、NMB48の須藤凜々花ちゃん。楓樺は、同じくNMB48の矢倉楓子ちゃんです。
お楽しみ頂けると幸いです。
ご感想等頂けると励みになります。m(__)m
それではよろしくお願いします。
2017/01/06(金) 08:57
凜花は大学のカフェテリアで、フォークにボロネーゼを巻き付け、
「で、今週末空けとけばいいの?楓ちゃん?」
眼の前の細面の同級生に話掛けた。
「そうそう。岐阜の北、飛騨にウチ行きたいねん」
「飛騨?結構遠くない?河内長原からじゃ」
凜花は呆れ気味だ。
楓樺は首をぶんぶんと横に振り、
「それが意外と安いねんかー。まず、外環を富田森までいって水輿峠、で、天理までダダァーっと京奈和道の無料区間。天理から三重の亀山までは名阪国道言うて、無料の高速みたいなもんあんねん。そっからは名四国道走って桑名の辺りから中洲通って、岐阜まで一本」
凜花はちょっと首を傾げ、
「ねぇ、楓ちゃん。てか、ナカスって何?それ、福岡じゃない?」
楓樺は呆れ、
「凜は古代史しか興味あれへんもんね。中洲ってのは、川と川に挟まれた土地の事やんか。習てる筈やで、中学の地理で。九州の歓楽街とは違うで」
凜花はちょっと考え、トートバッグからガサゴソと一冊の雑誌を取り出し楓樺に見せ付ける。
「あのね、楓ちゃん。中学の頃は、私はもうどっぷりコレに夢中でした」
クスっと笑った。
凜花が取り出した雑誌は、《月刊アトランティス》。
創刊20年を越える老舗のミステリー、オカルト雑誌だ。
楓樺はちらっと表紙を見て、
「シュメール文明と日本人の起源。の特集か、アンタ好きそやもんな、その手の話。ウチは《アトランティス》でも心霊特集の方が好きやもん」
元々、二人が仲良くなったきっかけは、河内長原駅前の本屋で、お互い残り一冊の《月刊アトランティス》を巡って争った事に迄遡る。
今では専攻こそ違え、文学部同士で仲良くなったのだが・・・。
お互い母子家庭に育ったのと、更に言えば筋金入りの《アトランティス》読者だった事は非常に大きい。
楓樺は平安期の祟り神に着いて研究しており、片や凜花は古代日本、特に日本神話が研究素材であった。
楓樺は、自身も負けじとシャネルのバッグから和柄の巾着袋を取り出し、
「開けて中身見てみ、凜」
凜花に手渡し、ニヤリと笑った。
凜花は感づいたのか、
「へぇー、又行ってきたんだ?何処のが増えたの?」
凜花は断りも入れずに、中身を取り出した。
出てきたのは一冊の鮮やかなブルーの朱印帳、《全国一の宮御朱印帳》と書いてある。
ページをめくり、
《ふーん、又増えたわね。楓ちゃんが自慢気にしてるって事は、余程凄い所に行ったのかな?》
《へー、北野天満宮に、加茂別雷神社と加茂御祖神社・・・。これって確か上賀茂神社と下鴨神社の事よね。後は、梅宮大社に車折神社。これも、どちらかと言えばレアよね。ん?・・・!!!》
「あっ!」
思わず声に出した。
楓樺はしたり顔で、
「気づいたか、小娘?」
凜花はウンウンと頷き、
「これ、スッゴク効果ありそう。」
右に晴明神社、左に安井金比羅と朱印が押されていた。
「1日でよくもまぁ、六つも。で、何をお願いしたの?言いなさいよ」
返事が解ってるのに、凜花は敢えて聞いた。
楓樺も、それを聞いて欲しかったと言わんばかりに、シャネルのバッグを抱え、
「これくれたオッサンと切れます様にって」
凜花はプッと吹き出し、
「それって、月に1・2度やって来る、東京のリーマン?」
「うん、そやで。その京都は、そのオッサンと行ってん」
実は楓樺は週末に、大阪ミナミに在る《シャ・ブラン》というキャバクラでアルバイトをしており、東京からやって来るサラリーマンは、お店の客なのだ。
「何で?どーして?キモいって言ってたじゃん、楓ちゃん」
楓樺は深いため息を吐き、
「だって、しゃーないやん。“雛もも”ちゃんの京都会館のライブチケット、オッサン持ってる言うんやもん。しかも最前やで、ありえへんて思えへん?」
「“雛もも”って、少し前にヨーロッパから凱旋帰国したシンガーソングライターの女の子よね?向こうでも流行ってて、確か映画の主題歌で使われてて、ヒットしたのが・・・」
『月恋メランコリック!』
二人は同時に叫んだ。