第4話 サイガ、決断する
時は少し遡る。
《Side=Saiga》
ピコン。
資本主義の魔法を使って燐を捜していた時、音が鳴り、ウィンドウが勝手に出現した。
「なんだこれ?」
ジャンヌからのメッセージだ。文字が書いてある。
『SOS』
どうやらマズイ状況らしい。
俺は持てるだけの金貨をポケットと袋に詰め込み、ジャンヌの位置を追跡魔法で確認する。
移動手段は・・・馬だな。
馬小屋に行き、一番ガタイのいい奴に飛び乗り、こいつに身体強化をかける。
「行けッ!」
夕方まで休まず馬を走らせる。ジャンヌが居るところまであと少し。
「っ!?」
氷魔法で作られた巨大な氷柱が、馬を貫いた。
「ヒヒィーン!!!!」
慌てて飛び降りる。
「誰だ!」
「フン、避けたか。」
何も無いはずの空間から、ヌルリと黒マントの怪しさ満点な男が出てきた。
「我が名はフォイエルバッハ。悪いが主人の命により、貴様を通すわけにはいかん。」
「そうか。」
ならば、押し通るまでッ!
「資本主義の魔法、地割れ」
そいつの足元を割り、地の底に落とす。
「飛行」
飛んで脱出しやがった。
「砂嵐」
「竜巻」
砂嵐に、逆回転の竜巻をぶつけて相殺された。
「今度はこちらの番だ。」
地面に降り、魔術師は唱える。
「究極論理、唯物論!」
すると、俺の周囲の地面が形を変え、俺に襲い掛かってきた!
「クソがっ、燃焼!」
土に熱を加え、水分を抜いて砂にする。
「まだまだ。絶対物質!」
剣を作成、こちらに向かって斬撃。
「そんなもの!」
貴族としてのポーズで佩いていた剣に強化魔術を掛け、打ち合わせる。
バキン。
あっさり折れたのは、俺の剣。
「ぐっ!」
袈裟懸けに胸を浅く斬られた。
バックステップで距離を取る。
「ハァ・・・ハァ・・・。」
クソ、急がなければ、シャサとジャンヌが・・・!
「私の理論の結晶、絶対物質は、触れたもの全てを破壊する。前途ある若人を殺すのは忍びないが、それも致し方なし。」
「ふぅ・・・。俺を、殺すだって?笑わせんな。」
こんなところで死ねるか。
民を、家族を、あいつらシャサとジャンヌを、幸せにするまでは・・・!
力が欲しい。力だ。敵を討ち、愛するもの全てを、護れる力がッ!!!
『強力な欲求を感知しました。第二深層魔法を解放します。よろしいですか?OK
/NO』
頭に響く、システム音。
何でもいい。寄越せッ!!!
『第二深層魔法、解放。神の見えざる手が使用可能になりました。この魔法は』
「御託は後でいい!フォイエルバッハ、お前を潰すッ!」
「ほぅ、やってみろ。」
「神の見えざる手!」
・・・。何も起こらない。
「ハハハ、なんだそれは!もういい、死ね!」
振り下ろされる剣。
くっ・・・!
手を犠牲にするしか・・・!
剣が俺の腕に当たった瞬間。
それは粉々に砕け散った。
「なッ・・・!?」
『第二深層魔法は、あらゆる魔術を無効化します。』
「そういうことか。成る程、コイツは使える!」
「そんな魔法が、存在するのか・・・!?」
慌てて距離を取り、魔術を連発してくる魔術師。
それら全てを神の見えざる手で消し飛ばす。
文字通りこの手で、勝負を決める!
敵との距離を詰めるため、疾走。
「来るなああああああ!」
滅茶苦茶に魔術を放ってくるが、全て無効化する。
「うおおおおおおおおおおおおおおお!」
その拳はしかし、空を切った。
「飛びやがったな・・・!」
「当たらなければどうということは無い!」
「ふぅぅぅぅぅ。」
どうする。これではどちらも有効打を与えられない。
「重力操作」
道端の岩を浮かせ、こちらに放ってくる。
マズイ、放り投げる直前に魔術を切ってるからこれは無効化出来ない!
ズドン
「・・・死んだか。」
地面に降り、近づいてくる。
岩陰から飛び出し、奇襲を仕掛ける!
「なッ!?貴様ァ!重力操作!!!」
「同じ技が二度通用するとは、ナメられたもんだな。」
岩を、資本魔法の衝撃波で粉々に砕く。
呆然とする敵。
「じゃあな、魔術師。俺の本気は、少しばかり痛むぜ?」
ヒュオオと風切り音を立てながら、敵の魔術防壁を突き破り、頬に拳をブチ込む。
「ぐあああああああああ!」
すごい勢いで吹っ飛び、そのまま飛行魔術で逃げ去ろうとする。
「覚えていろ、サイガ。次は必ず、殺す。」
「・・・ふぅ。」
ギリギリの勝利ってとこだな。正直危なかった。
馬は死んでしまった。目を閉じさせて、亡骸に手を合わせる。
「ここまでありがとう、無理させてごめんな。」
立ち上がり、叫ぶ。
「俺が着くまで無事でいてくれ、シャサ、ジャンヌ・・・!」
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森に着いた。
「ジャンヌっ!ジャンヌ!」
荒れ果てた戦場に残っていたのは、二人の男の死体と、意識不明のジャンヌ、彼女を膝枕し、必死に呼びかけているシャサのみだ。
「ジャンヌっ!」
泡を食ってジャンヌの側に走り寄る。
「どうしたんだ!?」
「私の身代わりになって敵の斬撃を首に・・・!」
「っ!?」
首はマズイ・・・。
「ジャンヌっ!ジャンヌっ!」
呼びかけるが答えがない。
「ジャンヌ!ジャンヌ!ジャンヌッ!!!」
目が開いた。意識を取り戻したようだ。
「ジャンヌ!?気が付きましたか!?」
「あぁ、シャリア様。どうしたんですかそんなに慌てて。」
「あああぁぁぁぁ・・・血が・・・。サイガ様、どうかジャンヌを助けて!」
「あぁ、今方法を探しているところだッ・・・!」
必死でウィンドウのページをめくる。
「あぁ、サイガ様も居られたんですね。良かった。
それなら、もう思い残すことは無いかな・・・。」
「ダメ!ダメです!ジャンヌッ!私を置いて行かないでっ・・・!!!」
「あらら、また涙が。シャリア様、そんなに泣かれては干からびてしまいますよ?」
「こんな時に冗談なんて言わないでよっ・・・!」
ジャンヌは、その涙を右手でそっと拭った。
「ジャンヌ・・・本当にごめんなさい、私の護衛なんてしなければ、あなたがこんな目に遭うことも無かったのに・・・。」
「クソオオッ!!!何でだ、何で高位の治癒魔術が無いんだッ!?」
「サイガ様マスター、もういいですよ。」
「良い訳ないだろうがッ!!!!!!」
「いいんです。名前を呼んで下さって、撫でて下さって・・・それだけでもう・・・他には何も。」
「ジャンヌっ!」
「シャリア様、2日間、本当に楽しかったです。最後に、一つだけ。
どうか、幸せになって下さい。それだけです。」
そう言い残して、ジャンヌは静かに目を閉じた。
「まだだ、まだ何か・・・!」
そうだ、治癒じゃない、召喚魔法か契約魔法なら・・!
「あった、これだ!」
禁断の秘術。
関係無い。ジャンヌを救えるなら秘術だって悪魔契約だって何だっていい。
「魂の契約!」
『召喚者の寿命の1割を捧げ、サーバントと魂を連結させることで、記憶を保ったままサーバントの肉体を再構成することが出来、召喚者はサーバント並みの身体能力を得ることが出来ます。しかし、どちらか片方が死亡した場合、もう片方も死にます。契約手続きを続けますか?』
「あぁ、構わない!」
『実行します。』
ジャンヌの肉体が光に包まれ、再構成される。
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《Side=Jannu》
・・・・・・そのまま、次の召喚者に呼ばれるまで、無意識の海を漂う。それが、死んだ後のパターン。
・・・そのはずだったのだけれど。
うっすらと目を開ける。
「ジャンヌ!」
シャリア様が、私に抱き着いてきた。
な、なに・・・?なにが起こったの・・・?
「ふぅ・・・。間に合ったか。」
「ま、マスター。何をされたんですか?」
「ん?あ~、その、えっとだな・・・。」
しどろもどろになるマスター。
「まさか・・・!?」
「まぁ、そのまさかだ。」
「なんてことを・・・!?」
「まぁ、ジャンヌが無事なんだから、いいじゃないか。」
「マスター、貴方という人は・・・。」
いくらなんでも、魂の契約を結ぶなんて・・・!
「貴方の貴重な寿命を私なんかに・・・!それに死も共有されてしまうんですよ!?」
「そんなことはわかってるッ!」
怒鳴り返す、サイガ様。
「・・・。」
無言のまま、抱きしめられた。
「・・・だが、それよりもジャンヌの方が大事だったんだ。
これから先もずっと、ジャンヌと一緒に生きて行きたかったんだよ・・・・!」
「・・・!」
そんなことを言われたら。
涙がまた、溢れてきてしまう。
「マスター、マスター、マスタぁぁぁ・・・。」
ぎゅっと、強く、マスターを抱きしめ返す。
「私もです。私も、貴方と、シャリア様と、ずっと、これから先もずっと一緒に生きて行きたいです・・・!」
涙が、溢れて止まらない。
「私もです。」
さらに横から、シャリア様が抱きしめてきた。
「良かったぁぁぁ、ジャンヌ・・・!!!」
シャリア様も、号泣している。
「大好きです、マスター、シャリア様・・・!」
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「じゃあ、帰るか。」
「「はい。」」
立ち上がる。
「うっ・・・。」
酷く立ちくらみがして、倒れそうになる。
「おっと危ない。」
マスターが、私を支えてくださったかと思いきや、そのままおんぶされてしまった。
「な、何を!?」
「まだ肉体が再構成したばかりだからな、しばらくは大人しくおぶわれてろ。」
「恥ずかしいです。降ろしてください・・・。」
「だーめ。」
「そんなぁ・・・。」
首に手をかけ、密着する。
フニュン。
「うっ・・・。」
「どうされました?」
「い、いやその、胸が・・・。」
「胸?胸が苦しいのですか?」
「いやそうじゃなくて・・・」
後ろからマスターの胸を触ってみる。
ヌルリ。大量の血が手に付いた。
「何ですかこれ!大怪我じゃないですか!どうして黙ってたんですか?」
「いやぁ、忘れてたわ。アドレナリン切れてきて今めっちゃ痛い。」
「当たり前ですっ!マスターのばかっ。」
治癒魔術を掛ける。
「おお、ありがとう。」
「じゃあ、行くかシャサ。」
「はい。」
その後、三人で一番近くの村まで歩いて行き、馬車で屋敷まで戻った。
書類も家紋もシャリア様も、無事帰還することが出来たのだった。
魔術戦、書いてて楽しかったですw




